Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E6: Futamono 私が救いたかったのは君だ

S2E6もすごいボリュームだよ!これはもう43分ドラマの情報量ではない。時系列ではとても整理できないので、人物パートで分けます。1)ギデオン、2)ハンニバル、3)アラーナ。ほんとはどこかにジャックのパートも入れたかったけど無理やな...。
とりあえず今日はギデオンのパート。ギデオンは何を選び、何を選ばずに“ああ”なったのか。ギデオンの台詞がよく削られるのは彼がおしゃべりだからなんですが、今回は訳しながら泣きそうになりました。ギデオン...ギデオン...!(※青字スクリプトにしかないセリフ・ト書きです)

WILL: You should have let him die.
ウィル:彼を殺させるべきだったのに
GIDEON: Woulda. Shoulda. Coulda.
ギデオン:だったかも、すべきだった、できたはず、か
WILL: He's going to kill you, you know.
ウィル:彼はあなたを殺すつもりですよ
GIDEON: Can't get me in here.
ギデオン:ここにいれば殺せないさ
WILL: Here is exactly where he'll get you, Abel. The moment I convinced the chief of staff to put you in a cell next to me, you were stamped with an expiration date. Anyone who gets too close, gets got. Miriam Lass. Abigail Hobbs. Beverly Katz. He's the Devil, remember. Smoke. I'd be very nervous if I were Dr. Chilton. He's getting close, too.
ウィル:エイブル、ここはあなたが彼に捕まる場所だ。僕がスタッフ長に頼んであなたを隣の独房にしてもらった時点で、命の有効期限のスタンプが捺された。近づきすぎた者は殺される。ミリアム・ラス、アビゲイル・ホッブズビバリー・カッツ。思い出してください、彼は悪魔だ。そして煙。もし僕がチルトン博士なら今頃ひどく不安だろうな。彼も死に近づいてる
- CHILTON listens to headphones, reclining on the couch, a shadow falling over his face.
 ト書き:ソファーに座ったチルトン、ヘッドホンで会話を聞きながら表情をくもらせる
GIDEON: Frederick's in mortal danger and you want an apology from me?
ギデオン:フレデリックは死の危機に晒されている。君は私から謝罪が欲しいのか?
WILL: I don't want an apology. I want you to know you made a mistake. Only way you and Frederick are going to get out of this alive is if the Chesapeake Ripper is stopped.
ウィル:謝罪はいらない。あなたは間違った、それを知っておいてほしい。あなたとフレデリックが生き延びる唯一の道は、チェサピークの切り裂き魔を止めることだ
GIDEON: Trying to find your taste for it?
ギデオン:君好みの味を探してる?
WILL: Taste for what? Blood?
ウィル:どんな味?血ですか?
GIDEON: Doesn't sit well on your palette, does it? Like copper on your tongue. Not your flavor.
ギデオン:血は君が本来好きな味じゃないだろう?銅で覆われた舌みたいだ。君自身の味覚じゃない
WILL: Hannibal Lecter deserves to die.
ウィル:ハンニバル・レクターは死に値する
GIDEON: I tried to save a severely-burned patient once with grafts of someone else's skin. That skin seemed to agree with the man. For a few days. And then it withered and died.
ギデオン:私はかつて重症患者に他人の皮膚を移植することで救おうとした。数日間は適合したかに見えたんだ、でも衰弱して死んでしまった
WILL: Wanting to kill Hannibal Lecter is just a phase? Permanent solution to a temporary problem?
ウィル:ハンニバル・レクターを殺したいという欲求は単なる段階に過ぎないと?一過性の問題に対する恒久的な解決策では?
GIDEON: Wearing someone else's skin doesn't always work. Our immune system recognizes it as foreign, kills it. I recognize what is you and what is not you. You didn't bring me here to help you kill Hannibal Lecter.
ギデオン:他人の皮膚を移植しても機能するとは限らない。免疫系は異物と認識して拒絶反応を起こす。私は君自身と君でないものとを見分けられる。君が私をここに連れてきたのは、ハンニバル・レクターの殺害を助けてもらうためではなかっただろう?
WILL: I brought you here to bear witness.
ウィル:証言してもらうために連れてきたんだ
GIDEON: To tell Jack Crawford that I sat in Hannibal Lecter's cobalt blue dining room? An ostentatious herb garden, Leda and the Swan over the fireplace. And you. Having a fit in the corner. That's where I asked him if he was the Chesapeake Ripper. And he avoided the question by suggesting I kill Alana Bloom.
ギデオン:ジャック・クロフォードに言うために?私がハンニバル・レクター邸のコバルトブルーのダイニングに座っていたことを?仰々しいハーブ・ガーデン、暖炉の上のレダと白鳥の絵。私が彼にチェサピークの切り裂き魔か?と聞いた場所だ。彼は私にアラーナ・ブルームの殺害をそそのかし、質問をはぐらかした、と言えばいい?
WILL: Yes. Tell Jack that.
ウィル:そうです。ジャックにそう言って
GIDEON: I'll tell Jack Crawford everything if you tell me why Hannibal did it.
ギデオン:ハンニバルがなぜあんなことをしたか教えてくれたら、ジャックに何でも教えよう
WILL: He wanted to see what would happen. If you did kill Alana. Or if I killed you. He was just curious. And you saved his life.
ウィル:彼は何が起こるか見てみたかった。もしあなたがアラーナを殺したら。あるいは僕があなたを殺したら。彼はただ興味があっただけ。そしてあなたは彼の命を救ってしまった
GIDEON: I wasn't trying to save Hannibal Lecter. I was trying to save you.
ギデオン:ハンニバル・レクターを助けようとしたつもりはないよ。私が救いたかったのは君だ

ギデオンはもちろん全然いい人なんかではないですが、ウィルを闇から救おうとしていた。チルトンへの復讐は彼の第一命題で果たさなくてはならない、それでもウィルがハンニバルによって致命的に変えられてしまわないように願ってはいたんですね。だから次の記事で取り上げるハンニバルとウィルの会話で、ハンニバルが「そのせいでどれだけの人が傷つくか(※字幕)」というのは、詭弁ではないはず。真に傷つく人はおそらくベデリアとギデオンです。わかっていて手を差し伸べても助けられず、自分がハンニバルに食われる人たち。どうやらこのドラマ世界は差別化がとてもはっきりしている。何もわかっていない愚者の層(=ジャック、アラーナたち)と彼ら2人の線引きはなかなか酷いな...。

そしてギデオンはジャックに証言せず、チルトンを陥れる(=ハンニバルの脅威からチルトンを救わない)かわりに、恨みを持った病院のスタッフによって不随となる。深夜の病院に忍び込んだハンニバルにギデオンは何も言いませんが、スクリプトではこう言います。「君が来ることはわかってたよ(I knew you'd come.)」。ギデオンは何もかもわかっていてこの道を選んだのか...。そして最後の晩餐、えぐいのでト書きは省こうね。

HANNIBAL: Your legs are no good to you anymore. You've got a T-4 fracture of the vertebra, this is a far more practical use for those limbs.
ハンニバル:君の足はもう良くならない。T4椎体骨折だ、君の手足にとってはるかに実用的な使い道だよ
GIDEON: Hard to have anything, isn't it, Dr. Lecter? Rare to get it. Hard to keep it. A damn slippery life.
ギデオン:レクター博士、何かを得ることは難しいな。得られるのはまれで、維持することも難しい。命はこの手をすり抜ける
HANNIBAL: We can only learn so much and live. Irony is, life is full of lessons.
ハンニバル:我々が学べることには限りがある。皮肉や命には学びが溢れてるよ
GIDEON: So is death, apparently. 
ギデオン:そうだな、死にも
HANNIBAL: You were determined to know the Chesapeake Ripper, Dr. Gideon. To wear that skin before you die. Now is your opportunity.
ハンニバル:君はチェサピークの切り裂き魔を理解しようと一生懸命だったね、ギデオン博士。死ぬ前にその皮をかぶってやろうと必死だった。今がそのチャンスだよ
GIDEON: Intend me to be my own last meal?
ギデオン:私に自身の最後の晩餐になれと?
HANNIBAL: Yes.
ハンニバル:そうだ
GIDEON: How does one politely refuse a dish in these circumstances?
ギデオン:この状況で晩餐を無礼でなく断る方法はあるかな?
HANNIBAL: One doesn't.The tragedy is not to die, Abel, but to be wasted.
ハンニバル:1つもないね。エイブル、悲劇は死ぬことではなく無駄になることだよ
GIDEON: Three words. Creutzfeldt Jakob disease. My compliments to the chef.
ギデオン:3つの単語。クロイツフェルトヤコブ病だ。シェフによろしく

ギデオン...!(言葉にならない)ハンニバルの「悲劇は死ぬことではなく無駄になること」はメモっとかないといけないですね。はー、今回は精神的に疲れた。。