Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S1E5: Coquiles いま僕の匂いを嗅いだ?

S1E5: Coquilesより、ウィルの匂いを嗅ぐハンニバル。そこに至るまでの犯人の心の平穏うんぬんのやりとりポエミーすぎて正直意味不明ですが、むしろここではそんなものどうでもいい(2人の間では意思疎通できてんのかな)。博士がウィルの匂いを嗅ぐ前後しか力を入れて訳していません。そういえば当初の目的である「ハンニバルがウィルでなくてはならなかった理由は何か」とも全然関係なかったな。まあいい。ウィルの匂いを嗅がずにいられなかったハンニバルの行間を訳したかっただけです。それにしても繰り返すほどに変態度が増す魅惑のフレーズ「ウィルの匂いを嗅ぐハンニバル」。

 

■嗅いでみたくて/ウィルとハンニバル

字幕はこちら。

ウィル:(前略)...脳が彼にイタズラをしてるだけだ
ハンニバル:君と似ているね
ウィル:脳にからかわれてる?
ハンニバル:君も犯人も心の平穏を求めてる。無限の安らぎに身を委ねたいと思ってる
ウィル:彼は失望するね
ハンニバル:君はあきらめるが犯人は追い続けてる。近づくほど求めるんだ
ウィル:彼の行動パターンを読もうとしたけど...
ハンニバル:自分のパターンに気づかないと無理だ。君は選べるんだ
ウィル:何を?
ハンニバル:犯人は思考にむしばまれ自滅するが君は違う
ウィル:僕の匂いを嗅いだ?
ハンニバル:嗅いでみたくて。安物のローションの匂いだ。ボトルに船のマークが
ウィル:クリスマスにもらうんだ
ハンニバル:最近よく頭痛が?
ウィル:するよ
ハンニバル:ローションを変えては?

 

英語字幕と対訳はこちら。

WILL:(略)...He’s just a man whose brain is playing tricks on him.
ウィル:彼はただ脳に騙されているだけの男ですよ
HANNIBAL: You’re not unlike this killer.
ハンニバル:きみはこの殺人犯と違わないね
WILL: My brain is playing tricks on me?
ウィル:僕は脳に騙されてる?
HANNIBAL: You want to feel such sweet and easy peace. The Angel Maker wants that same peace. He hopes to feel his way cautiously inside it and then find it's endless, all around him.
ハンニバル:きみは心地よく安らかな平穏を感じたいと願っている。犯人も同じだ。彼はその平穏の中に慎重に自分の道を感じようとし、無限の安らかな平穏を自分の周りに見出そうとするだろう
WILL: He’s gonna be disappointed.
ウィル:彼は失望するでしょうね
HANNIBAL: You accept the impossibility of such a feeling, whereas the Angel Maker is still chasing it.
ハンニバル:犯人が今もその平穏を追い求めているのに、きみは不可能を受け入れてる
- Hannibal crosses to study him as he studies the stag.
 ト書き:ハンニバル、牡鹿を眺めるウィルを観察するため反対意見を述べる
HANNIBAL: If he got close to it, that’s why he will look for it again.
ハンニバル:もし平穏に近づけば、彼は再び平穏を求めるだろう
WILL: I’ve trid to reconstruct his thinking, find his patterns.
ウィル:彼の考えを再構築し、パターンを見出そうとしてきた
HANNIBAL: Instead you find yourself in a behavior pattern you can’t break. You realize you have a choice.
ハンニバル:きみ自身の行動パターンを発見しなければ解決できない。きみは選択できると理解しなくては
WILL: What is it?
ウィル:どういう意味?
HANNIBAL: Angel Maker will be destroyed by what’s happening inside his head. You don’t have to be.
ハンニバル:犯人はいずれ脳内の腫瘍によって死ぬ。きみまでそうなる必要はない
- Hannibal stands behind Will, his NOSTRILS FLARE as CAMERA SLOWLY PUSHES IN on the back of Will’s neck.
ト書き:ハンニバル、ウィルの背後に立ち鼻腔を広げる。カメラ、ゆっくりウィルの首の後ろへ *1
WILL: Did you just smell me?
ウィル:いま僕の匂いを嗅いだ?
HANNIBAL: Difficult to avoid. I really must introduce you to a finer aftershave.

ハンニバル:嗅がずにはいられなかった。もっといいアフターシェーブローションを紹介しなくてはね *2
 That smells like something with a ship on the bottle.
 ボトルに船の絵がついたローションのような匂いだ
WILL: Well, I keep getting it for Christmas.
ウィル:ああ、クリスマスにもらうんです *3
HANNIBAL: Have your headaches been any worse lately? More frequent?
ハンニバル:頭痛は最近悪化してる?頻度は増した?
WILL: Yes, actually.
ウィル:ええ、実は
HANNIBAL: I’d change the aftershave.
ハンニバル:私ならローションを変えるね

ここで脳炎に気づいたハンニバルですが、ウイルス性・自己抗体性とわず脳炎って匂いでわかるのかなあ。あ、でもハンニバル精神科医だし悪魔憑きの患者を診断した経験があってもおかしくないのか。あと抗NMDA受容体脳炎は自己抗体性なので、高確率で自己抗体産生の原因となる腫瘍、奇形腫がウィルにはあったはず。S1後半のウィルの病態進行はちょっと別立てて考察したいです。

*1:ここカメラがお仕事してないんですよ!ちゃんと首筋にカメラ突っ込めや!(酔っ払いのおっさんの絡み方)

*2:最初吹き替えで見たときは安易に“I would like to try ~”かな...と考えていたのですが、“Difficult to avoid.”ですってよ。甘かったわ。これウィルは「安物のローションの匂いがきつくて嗅がずにはいられなかった」っていう意味でとってるけど、違うからな。多分いろんな意味で違うからな。基本ウィルに対する博士の行動ってこのあとも回避不可能=そうするしかなかった、で成り立ってる気がします。

*3:原作では連れ子に毎年クリスマスプレゼントでもらう船ラベルのローション。家族にも友達にも縁遠いドラマ版のウィルは一体誰にもらうんだろう...。