Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E9: …and the Woman Clothed with the Sun それが愛の美しい定義だ

S3後半。このへんほとんど初見時の記憶がなくて、毎日新鮮に驚きながら見てます。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

殺人現場、ハンニバルと月の夜に訪れた庭を1人で探索するウィル、フレディと鉢合わせ。

WILL: You came into my hospital room while I was asleep. You flipped back the sheets and shot a picture of my temporary colostomy bag.
ウィル:君は僕が寝てる病室に侵入して、シーツを捲って一時的ストーマの袋を写真に撮っただろ
FREDDIE: Covered your junk with a black box. A big black box. You're welcome.
フレディ:あなたのガラクタは黒塗りにしてね。大きい黒塗りだったでしょ、お礼はいいわよ
WILL: You called us "murder husbands."
ウィル:しかも君は僕たちを“マーダー・ハズバンズ”と名づけた
FREDDIE: You did run off to Europe together. How does the Tooth Fairy compare to Hannibal Lecter? Haven't seen anything like this since the Massacre at Muskrat Farm. Funny thing about that massacre. Not only did Dr. Bloom survive, she got rich. Lecter's living in the lap under her care. What kind of arrangement you suppose they have?
フレディ:あなたたち、一緒にヨーロッパに逃げたじゃない。ハンニバル・レクターに比べて“歯の妖精”はどう?マスクラットファームの大虐殺からこっち、こんな事件は見たことがないわ。あの大虐殺の愉快なことと言ったら。ブルーム博士は生き残ったばかりか富豪になった。レクターは彼女の管理下にある。あの二人の間にはどんな協定があるの?
WILL: A complicated one.
ウィル:複雑な協定だろうね
FREDDIE: Couldn't be more complicated than your relationship with Hannibal. You paid him a visit? Before you lie, know that I know that you did.
フレディ:ハンニバルとあなたの関係性ほど複雑じゃないはずよ。彼に面会したでしょう?嘘はいらない、私が知ってるのを知っておいて
WILL: Good-bye, Freddie.
ウィル:さよなら、フレディ

字幕は「殺人カップル」だけど、“murder husbands”のしっくりくる訳って何だろ。

次、ウィルとモリーの電話は申し訳ないけど飛ばして、ハンニバルに面会に来たジャック。

HANNIBAL: As I live and breathe. I thought I'd seen the last of you, Jack.
ハンニバル:これは驚いた。もう君に会うことはないと思ってたよ、ジャック
JACK: Dr. Lecter.
ジャック:レクター博士
HANNIBAL: You're dressing younger. Have you taken up some sport you enjoy with a new partner? Tennis, maybe?
ハンニバル:服装が若作りだね。新しいパートナーとスポーツで仲良くなった?テニスかな
JACK: You've taken up your sport with an old partner.
ジャック:あなたも古いパートナーとスポーツで仲良くなってる
HANNIBAL: I wrote Will a note warning him you'd come calling.
ハンニバル:ウィルには君が訪ねてくることを手紙で警告したよ
JACK: I read your note before my office forwarded it to Will.
ジャック:職員がウィルに転送する前に読んだよ
HANNIBAL: To whet his appetite or yours? You've placed him back in the pot and you're letting him cook.
ハンニバル:彼の食欲を刺激するために?君は彼を鍋の中に戻し、料理させてるんだ
JACK: We're all in this stew together.
ジャック:われわれは皆このシチューの中さ
HANNIBAL: It would be more honest if you ate his brain right out of his skull.
ハンニバル:君が彼の頭蓋骨から脳を取り出してすぐに食べていれば、今頃もっと正直だろうに
JACK: And you're nothing if not honest.
ジャック:あなたはまったくもって正直だ
HANNIBAL: I try to be. This shy boy has already seen Will. He already knows his name. Are you chumming the waters, Jack?
ハンニバルそうありたいね。この照れ屋の犯人はすでにウィルを知ってる。名前も。水面に撒き餌をしてるな、ジャック?
JACK: It takes one to catch one.
ジャック:蛇の道は蛇だ
HANNIBAL: It takes two to catch one.
ハンニバル:1匹の蛇を捕まえるのに2匹必要だよ
JACK: Will has never been as effective as he is with you inside his head.
ジャック:頭の中にあなたがいるときほど、ウィルが冴え渡ることはないんだ
HANNIBAL: Oh, I agree. But don't think you can persuade me to play along with appeals to my intellectual vanity.
ハンニバル:ああ、そうだとも。だが私に調子を合わせて知的虚栄心に訴えても私を説得できるとは思わないことだ
JACK: I don't think I'll persuade you. You'll either play or you won't.
ジャック:あなたを説得しようとは思ってない。あなたが乗るか、乗らないかだ
HANNIBAL: Bella used to say your face was all scars, if you knew how to look. There's always room for a few more. How much room does Will have, Jack?
ハンニバル:もし見方がわかるなら、君の顔はすべて傷だとベラはよく言ったものだ。君の顔にはいつも傷をつける余地がある。ジャック、ウィルにはどれくらい傷がつけられる?

あれ、ここよく読むと意味深だね…?ジャックはどこまでわかってる?少なくともここでハンニバルとジャックは共犯で、ウィルは泳がされてる。でもハンニバルとジャックの最終的な意図、目指すものは全然違って、ハンニバルはジャックの先を行く。これ見てるとジャックは懲りないというか、やっぱりちょっと愚かなんじゃないのと思わなくもないなあ。まあ普通に油断してるんでしょうけど。

次、ハンニバルアビゲイルの回想シーン1。順番的にはアラーナとハンニバルの会話の直後です。すごいバラバラの抜粋だけど、ハンニバルの家族観がウィルに対する愛の形そのままだったので驚いてる。

HANNIBAL: We have a basic affinity for our family. We can detect each other from smell alone.
ハンニバル:私たちは自分の家族に結びついている。私たちは匂いだけでお互いを見つけることができる
HANNIBAL: Every family loves differently. Every love is unique.
ハンニバル:どの家族もそれぞれ異なった愛し方をする。どの愛も唯一だ
ABIGAIL: He was as good to me as he knew how to be. Hunting with him was the best time I ever had.
アビゲイル:父は彼なりのやり方で私に良くしてくれたわ。彼との狩りは今までで最高の時間だった
HANNIBAL: Yes. A fine definition of love. You have to allow yourself to love him the way he loved you.
ハンニバル:そう。それが愛の美しい定義だ。彼が君を愛したやり方で、君も彼を愛することを自分に許さなくては

下線部!だいじ!ここ字幕でけっこう端折られてて初見時気づいてなかったけど、S3E13ラストのことを予言してたんですね...?つまりハンニバルがウィルに求めることの究極を。うまく言えないけどハンニバルアビゲイルを習作というか、ウィルのための練習台にしてるように思える。つまりハンニバルにとって最も美しい愛の定義は、“彼との狩りは今までで最高の時間だった(Hunting with him was the best time I ever had.)”。そしてウィルに対して求めるのは、ハンニバルがウィルを愛するのと同じやり方でハンニバルを愛し返してしまう自分を許すこと。S3E7もそうだけど、ハンニバルはいつもこういう表現をする。本来のウィル自身と、その本性を押さえつけようとする倫理に縛られたウィル。ウィルは常に2つに引き裂かれていて、ハンニバルはその融合を願い続けてる。振られる前は倫理側のウィルを全否定してたけど、今は「許せ」って言ってて、えっこれ凄いことでは。

...と驚きつつS2E13のラストシーン、ハンニバルアビゲイルの別アングルの回想シーン2。ハンニバルがウィルからの電話を受けたところから。

HANNIBAL Hello?
ハンニバル:もしもし
WILL(V.O.): They know...
ウィル(声のみ):バレてる
- Hannibal hangs up the phone and CAMERA PULLS BACK to reveal Abigail Hobbs is on the other side of the island.
 ト書き:ハンニバル、電話を切ってカメラを引くとアビゲイルホッブズがアイランドキッチンの向こう側にいるのが明らかに
HANNIBAL: They're coming.
ハンニバル:彼らが来るよ
- Hannibal doesn't move, just considers.
 ト書き:ハンニバルは動かず、ただ考えている
ABIGAIL: Are we going?
アビゲイル:じゃあ出発するの?
HANNIBAL: We're waiting for Will. It's important that he sees you. I want you two to be together.
ハンニバル:私たちはウィルを待ってる。彼が君に会うのが重要なんだ。君たち2人には一緒にいてほしい
ABIGAIL: They'll catch us if we stay.
アビゲイル:ここにいたら捕まってしまう
- He places reassuring hands on her shoulders.
 ト書き:彼は落ち着かせるように彼女の肩に手を置く
HANNIBAL: I'm on my honor to look after you, Abigail. You have to look after me, too. We have to protect each other in these new lives we create. I want you to go upstairs and wait.
ハンニバルアビゲイル、君の面倒は必ず見ると誓う。君も私の面倒を見なくては。私が創造する新たな人生では、私たちは互いに守り合うんだ。2階に上がって待っていなさい
ABIGAIL: For what?
アビゲイル:何を?
HANNIBAL: Hunting with your father was the best time you've ever had. But now you're going to hunt with me.
ハンニバル父親との狩りが君にとって最高の時間だった。でも今から君は私と狩りをする

この後ダラハイドからハンニバルに電話がかかってきてS3E9は終了ですが、ト書きには“ハンニバル、新しい患者を受け入れる(Hannibal taking in his new patient...)”とあります。ダラハイドはハンニバルの「危険な患者」の生け簀に入った。