Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E13: Mizumono ただ彼を理解してるだけ

ラストシーンの前にアラーナのシーンがいくつかあったのでした(※逃避)。アラーナは台詞が削られがちで誤解されやすいので、ここで紐付けしておきます。いい子なんだよー。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

- Will listens as Alana confesses:
 ト書き:ウィル、アラーナの告白を聞く
ALANA: I feel poisoned.
アラーナ:毒されたように感じる
WILL: We've all been poisoned.
ウィル:僕らはみんな毒されてるよ
ALANA: Even my memories are suspect. I keep compulsively poring over every moment I've spent with him, struggling to separate the man I know from the man you know.
アラーナ:自分の記憶さえ疑わしいの。彼と過ごしたすべての瞬間を1つずつ思い出して吟味し続けてる。あなたが知ってる彼から、私が知ってる彼を分離しようと足掻いてる
WILL: I don't pretend to know him. I just understand him.
ウィル:僕は彼を知ってるふりなんかしない。ただ彼を理解してるだけ
ALANA: You saw what no one else could.
アラーナ:あなただけ、他の誰も見えてなかったものを見てた
WILL: All it took was the traumatic.
ウィル:見たものは全部トラウマになった
ALANA: Most of the literature on coping with the traumatic focuses on how people deal with the aftermath. We're still in the thick of it.
アラーナ:トラウマ治療に関する文献の多くは、後遺症にどう対処するかに焦点化してる。私たちはまだその真っ只中にいるわ
WILL: Almost through the worst of it.
ウィル:しかも一番悪いところにね
ALANA: How will you get through the rest?
アラーナ:どうやって切り抜けるつもり?
- Will considers that, then averts his eyes.
 ト書き:ウィル、考えて眼を背ける
WILL: You'll have to ask Jack.
ウィル:ジャックに尋ねるべきだ
ALANA: I'm asking you. You've set some sort of trap and you're goading Hannibal into it.
アラーナ:あなたに聞いてるの。あなたは罠を張って、ハンニバルを追い込もうとしてる
- Will looks at Alana, his silence an admission. Her eyes begin to well with tears, sad about being left outside to watch some horrible unraveling of events like a bystander.
 ト書き:ウィル、アラーナを見る。沈黙は肯定だ。彼女の目には涙と、明らかになった恐ろしい事態の外側に傍観者のように取り残される悲しみがあふれる
ALANA: How can you be sure he's not goading you?
アラーナ:彼があなたを追い込んでないって言い切れる?
WILL: I can't.
ウィル:言い切れない
- Alana sighs, fearing the worst.
 ト書き:アラーナ、ため息をつき最悪の事態を恐れる

ほんとはこの後に最後の晩餐シーンが続きます。ウィルは自分のほうが魚になって追い込まれて釣られるかもしれないと思いながらあの晩餐に臨んでたんですね。

そして晩餐後、SATCのミランダ(※名前覚えてない)に糾弾されたアラーナからウィルへの電話。すでにジャックはハンニバルのもとへ単独で向かってしまっている。

WILL: Hello.
ウィル:もしもし
ALANA: It's Alana. Is Jack with you?
アラーナ:アラーナよ。ジャックといる?
WILL: No. Why?
ウィル:いいや。なぜ?
ALANA: I... I wanted to find some middle ground between believing the world is perfectly safe and terribly dangerous. I was trying to...
アラーナ:私...私は世界が完全に安全だと信じられる地平と、ひどく危険だと感じる地平の真ん中を探したかった。探そうとしてた...
- Her voice trails off, overwhelmed with emotion.
 ト書き:彼女の声は徐々に小さくなり、感情に押し流される
WILL: What did you do?
ウィル:何をした?
ALANA: They've issued a warrant for your arrest, Will. For acting as an accessory to entrapment. And for the murder of Randall Tier. They're going to arrest Jack as well.
アラーナ:あなたの逮捕状が出たわ、ウィル。罠のための従犯容疑と、ランドール殺害容疑で。彼らはジャックも逮捕しようとしてる

ここでFBIの車2台がウルフトラップにやってくるんですが、この車はウィルを逮捕しに来た車なんですよね?銃と上着を持って外へ出たウィルはFBIの車2台を巻いたのかしら。そしてハンニバルに電話をかけ、S1でホッブズアビゲイルの首を掻ききったシーンに巻き戻る。

HANNIBAL: Hello.
ハンニバル:もしもし
WILL: They know...
ウィル:バレてる

もう言葉もないです。ウィルはこのときハンニバルに逃げてほしくて連絡した。これ以前に、ウィルがハンニバルにわざわざ電話する機会ってあったんだろうか。そんなことばかり考えてる。

そしてハンニバルとジャックの格闘シーンを経て、パントリーに体当たりしてるハンニバルのもとにアラーナが現れます(格闘シーンはウィル-ハンニバルの関係性にあんまり影響ないから...というより動きのあるシーンの描写が苦手すぎて訳せないの...)。

ALANA: Hannibal... Hannibal.
アラーナ:ハンニバル...ハンニバル
- Hannibal stops, turns to see Alana.
 ト書き:ハンニバルは静止し、向き直ってアラーナを見る
HANNIBAL: Hello, Alana.
ハンニバル:やあ、アラーナ
- She looks around the broken, bloody room, mounting horror. Hannibal sighs, truly disappointed to see her here.
 ト書き:彼女は乱雑で血まみれになった部屋を見回し、恐怖を覚える。ハンニバル、彼女がここにいることに心底失望してため息をつく
HANNIBAL: What a terrible and wonderful thing it is to see you.
ハンニバル:ここで君に会うなんて、何て最低で最高なんだろうね
ALANA: Where's Jack?
アラーナ:ジャックはどこ?
HANNIBAL: In the pantry.
ハンニバル:パントリーの中だよ
- The moment of truth.
 ト書き:真実の瞬間
HANNIBAL: I was hoping you and I wouldn't have to say good-bye. I imagined a farewell less sorrowful, less present, an echo. Nothing seen nor said. You may've found that rude.
ハンニバル:君にはさよならを言わずにすませたかった。悲しみもなく、会うこともない、余韻だけの別れを想定していた。何も見せず、何も言わず。きみは無礼だと感じたかもしれないが
- He takes a step toward her, her finger tensing on the gun.
 ト書き:彼は彼女に一歩近づく。銃を押さえる彼女の指に緊張が走る
ALANA: Stop! I was so blind.
アラーナ:止まって!私は何も見えてなかった
HANNIBAL: In your defense, I worked very hard to blind you. You can stay blind. You can hide from this. Walk away. I'll make no plans to call on you. But if you stay, I will kill you. Be blind, Alana. Don't be brave.
ハンニバル:君を擁護するなら、私が苦労して何とか見せないようにしてたんだ。見えないままでいい。この事態に目をつぶって、立ち去りなさい。今後君のもとを訪れるつもりはない。だがもしここに留まるなら君を殺す。アラーナ、盲目になれ。勇気など奮うな
- She pulls the trigger. And the gun CLICKS. She pulls it again and another CLICK.
 ト書き:彼女はトリガーを引く。空砲の音。彼女は再度トリガーを引くが、空撃ちになる
HANNIBAL: I took your bullets.
ハンニバル:弾は抜いておいたよ

いやー、真実ひどい男たちです。ウィルも、ハンニバルも。ウィルはアラーナに向かって「僕はハンニバルを知ってるんじゃなくて理解してるだけ」と言います。アラーナと違ってウィルには「ハンニバルの見えていない部分、見せなかった顔」というものが存在しない。たとえ存在してもウィルは想像し、共感して理解しきってしまう。彼がハンニバルとアラーナの寝室にまで現れたのはこの根拠があったからかと思います。
一方のハンニバルはアラーナに「余韻だけの別れを望んでいた」という。本気の相手との間に、悲しみがない美しい別れなんかありえないことをハンニバルこそ一番知っているはず。ハンニバルなりの人間愛ではあっても、彼にとって人類は自分とウィルとそれ以外で構成されているのだなあとつくづく思う。アラーナは2人のひどい男の巻き添えをくらった被害者でもあります。
...というところで次、ウィル登場のラストシーンです。うおええええ(吐き気)たった10分なのにこんなにつらい。だって2人のひどい男が好きなんだから仕方ない。