Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E13: The Wrath of the Lamb 美しい

S3E13の最後まで。

青字スクリプトにしかないセリフ・状況、赤字は映像にしかないセリフ・状況です

 ダラハイド、ウィルを抱え上げて割れた窓から室外の中庭へ放り投げる。ウィル、地面に落ちて石畳の上を転がる。石畳の上にウィルの血が飛び散る。ダラハイドがウィルに襲い掛かり、上から押さえつける
ウィル、銃を取り出すがダラハイドはすぐにそれを取り上げ、断崖に投げる。ウィルは頬からナイフを引き抜き、ダラハイドの脚に突き刺す。ダラハイド、ナイフを脚から抜きウィルの貝殻骨に突き刺し、そこを起点に両肩を引き上げ、ウィルの背中がしなる
 ダラハイドが背中をへし折ろうとするその時、ジャケットを脱ぎ捨てたハンニバルがダラハイドの背中に飛び乗り、ウィルを解放させる
ハンニバル、得意技でダラハイドの首を捻ろうとするが彼の首は頑健すぎる。ダラハイドはハンニバルを背中から振り落とし、中庭を横切って転がるハンニバルを追い詰める。その背中からは羽が伸びている。ハンニバルは石畳から材木の山に向かって転がり、片手斧を見つけ出す
 ウィル、自身の血まみれの肩からナイフを引き抜き、駆け寄ってダラハイドの背にナイフを突き刺す。ダラハイドは痛みと怒りに咆哮し、再びウィルに向き直る。ハンニバル、片手斧を自分のほうに引き寄せ、ダラハイドの背後にまわり彼のアキレス腱と膝に斧を叩きつける。裂ける肉と腱、獣じみた不気味な動き。ダラハイドは牡牛であり、傷を負ってもまだ闘志が漲っている。ウィルが与えた刺し傷を無視し、ウィルを叩きのめそうとするが、ダラハイドの片足が耐えられず膝をつく。ウィルとハンニバルは彼を注視する。この衝動に突き動かされた男、彼らの敵、そして彼らと等しい存在は、数多の傷口から出血し脚を破壊されながらも、何とか立ち上がる
 しかし背中に飛びかかってきたハンニバルの重みでダラハイドの脚が屈曲し、体勢がぐらつく。彼がウィルの動きを止めるにはすでに遅く、ダラハイドはウィルが自分の腹部に突き立てたナイフを見下ろす。ウィルがナイフを下に引き下ろすと血が噴水のように噴き出し、ダラハイドはウィルを蹴り飛ばしてナイフを内臓から引き抜く
ハンニバルは上体を反り返らせたダラハイドの咽喉に噛みつき、引きちぎる。ダラハイドの咽喉と腹から血液が噴き出し、背が弓なりにしなる。ウィルはハンニバルがダラハイドの背から落ちるのを見る。ダラハイドは咽喉から噴き出した血溜まりでふらつき、月を見ながら膝をつき、ついに仰向きに倒れ込む
 ダラハイドが息を吐くと咽喉から血の泡があふれ、ゆっくりと両目から命の火が消えていく。頭を傾け、ウィル・グレアムをじっと見たまま。彼を中心に両側に広がっていく赤い血は、レッド・ドラゴンが広げた赤い翼のよう
 ひどい傷を負ったウィルとハンニバルは脚を引きずり、死んだダラハイドの上で互いに視線を交わす。2人の男達の血、彼らの傷口から落ちる血は月明かりに黒々と光って見える

ちょっとここで止めて、ダラハイドとレッド・ドラゴンについて。ウィルやハンニバルと同種の存在であるダラハイド。ハンニバルはダラハイドの中にいたレッド・ドラゴンを「ウィルに受け渡せ」と唆し、ウィルの家族を殺させようとした(S3E11)。ウィルはダラハイドに「ハンニバル・レクターは君が変えなくてはならない」と焚きつけ、ハンニバルをドラゴンと融合させようとした(S3E13)。ダラハイドにとっての殺人は殺すための殺人ではなく、変化させるための殺人です(S3E11)。ダラハイドはハンニバルをドラゴンに変化させるために殺そうとしている。ではこの死闘を経て、結局ドラゴンは誰と同一化したのか?と謎だったのですが、下線部を読むとダラハイドが死んでいく過程でドラゴンの力と融合し、死ぬことで偉大なるレッド・ドラゴンになった、と考えるべきなのかなと思います。ウィルもハンニバルもドラゴンにはならなかった。そしておそらくはじめから、ドラゴンはダラハイドの中にしか存在しないのだとハンニバルもウィルも知っていた。

WILL: It really does look black in the moonlight.
ウィル:月明かりだと本当に黒く見える
- Hannibal staggers toward the edge of the bluffs and regards the ocean a moment before turning back to face Will.
 ト書き:ハンニバル、崖のほうへよろめいて進み、ウィルに向き直る前に一瞬海へ視線を向ける
HANNIBAL: See. This is all I ever wanted for you, Will. For both of us.
ハンニバル:見て。これがずっときみのために願ってきたものだよ、ウィル。私たち2人のために
WILL: It's beautiful.
ウィル:美しい
- A moment as Will considers the brutal pack hunting he shared with Hannibal Lecter. He genuinely feels it is beautiful.
 ト書き:ウィルがハンニバル・レクターと共有した残忍な、群れで行う狩りに思いを巡らす一瞬。彼は紛れもなくそれが美しいと感じている

国道沿いの襲撃からこの崖の家までウィルを連れてきたのがハンニバルなら、中庭から崖へ、そして海に落ちるまでをリードしてたのもハンニバルだったんだ...。

ハンニバルはS2E12で「狩りは野生の喜びだ。私たちはその喜びのために生まれてきた」と言い、S3E9で「彼との狩りは今までで最高の時間だった」といったアビゲイルに「それが最も美しい愛の定義だ。彼が君を愛したやり方で、君も彼を愛することを自分に許さなくては」と教えました。ウィルは今はじめて残忍な狩りの喜びをハンニバルと分かち合い、その景色を「美しい」と言った。そしてハンニバルがS1からS2でウィルを愛してきたやり方は「ウィルを変える」ことで、ウィルはS2からS3、特にダラハイドとの駆け引きと死闘においてついに「ハンニバルを変えた」。つまり「ハンニバルがウィルを愛したやり方で、ウィルもハンニバルを愛することを自分に許した」。愛を求め続けてきたハンニバルの望みは、ここで完璧な形で叶えられたんだと、思います。

あとS1でウィルが殺したギャレット・ホッブスが繰り返し言ってた“See, See?”の意味が実はずっとよくわかってなかったんだけど、ここにつながるんですね...。「この景色を見て。見える?」と暗示してたんだ。S1の頃のウィルにとって残忍な狩りの血塗れの景色は悪夢でしかなく、まだ「見えなかった」。でも今この血塗れの景色を見て、ウィルは紛れもなく「美しい」と感じている。

 ウィルの血塗れの顔のクローズアップ。ひと筋の涙が血を横切っていく
 そしてウィルはぶつかるようにハンニバルに抱き着き、彼の身体ごと崖のほうへ引き倒す。衝撃的な、空っぽのフレーム。彼らは確かにそこにいたのに、今はもう誰もいない。崖を越えてカメラが海を見下ろすと、ウィルとハンニバルが今まさに海へと堕ちていくところ...

はーーーーーーーー(脱魂)もう何もいうことはない...。 

あとはラストシーン、2人を待つ人たち。特に考察はなし。

INT. NORMAN CHAPEL - DAY
ノルマン礼拝堂:昼
CAMERA cruises the aisle as various TOURISTS explore and other PARISHIONERS pray.
CAMERA continues to prowl until it finds a man sitting by himself. As CAMERA PUSHES IN, we reveal the man is Jack Crawford, lying in wait.
カメラは礼拝堂内を散策している観光客と、祈りを捧げる教区民を映す。さらにカメラは移動し、1人ぽつんと座っている男を映し出す。その男とはジャック・クロフォードであり、彼は隠れて誰かを待っている様子

POST CREDITS
FADE IN: CLOSE ON BEDELIA DU MAURIER
クレジット後
フェードイン:ベデリア・デュ・モーリアにクローズアップ
Elegant. In a striking evening dress. As exquisitely coiffed as we've ever seen her. PULL BACK SLOWLY to reveal...
Bedelia sits at a long dining table. We are --
優雅に、印象的なイブニングドレスに身を包んでいる。これまで見てきたのと同じ、彼女はきわめて美しく髪をセットアップしている。ゆっくりとカメラを引いていくと...

INT. DINING ROOM - NIGHT
Warm candlelight fills the room, music is playing. We have the sense that Bedelia is the honored guest at some exceptionally-aristocratic dinner party. CAMERA PULLS BACK to reveal a platter of oysters on the table in front of Bedelia; next to the platter, an oyster fork. CAMERA CONTINUES PULLING BACK to reveal...
室内、ダイニングルーム:夜
暖かい蝋燭の灯りが部屋を満たし、音楽が流れている。ベデリアは特別かつ貴族的な晩餐会の名誉あるゲストとして座っている。カメラを引くとベデリアの前には牡蠣の盛り合わせが配膳され、その横には牡蠣用フォークが添えられている。カメラをさらに引くと...

A WOMAN'S LEG
Pit-roasted on smoldering-hot lava rocks, on a bed of cane strips, surrounded by fresh fruits. Wrapped in crisp ti leaves. Bedelia steadies herself.
焼石式の燻製器で串を打ってローストされ、棕櫚の皮の上に寝かされ、新鮮なフルーツで囲まれた ― 女性の脚部。新鮮なティーリーフで包まれている。ベデリア、気を静めるために深呼吸している

NEW ANGLE ON BEDELIA
We now see Bedelia in profile and, slowly, we PAN DOWN
Bedelia's body to reveal... One of her LEGS IS MISSING. The stump freshly, surgically bandaged. She covertly grabs the oyster fork and slips it under the table and waits for her host to return.
CUT TO BLACK.
END OF SEASON THREE!
ベデリアの別アングル
彼女の横顔からゆっくりとパン・ダウンしていくと... ベデリアの片脚が失われていることが明らかに。切断部は新しく、包帯が巻かれている。彼女は密かに牡蠣用フォークをつかみ、テーブルの下に潜ませ、晩餐の招待者が帰ってくるのを待っている
暗転
シーズン3終了!

 ...以上、S1E1からS3E13まで。ありがとうございました!