Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E13: The Wrath of the Lamb 私と同じ道を行く?

実はここからセリフが激減し、状況説明と感情描写がメインになります。これはもうト書きのレベルじゃない、小説!セリフだけだと1回の記事で終わるのですが、それだと落ちる情報が多すぎるので、スクリプトの状況描写を日本語で要約、セリフと一部ト書きはこれまで通り対訳することにします。

青字スクリプトにしかないセリフ・状況、赤字は映像にしかないセリフ・状況です

国道を走る囚人移送車のなか、檻の中に閉じ込められたハンニバル。向かいにはウィルと銃を持ったFBI捜査官。車外では1台のクルーザーがサイレンを鳴らし、青いランプを点滅させながら接近し護送車を追い抜く。そして追い抜きざまにクルーザー車内からダラハイドが先頭の護送車の運転手を撃ち、護送車は後続の移送車と激突。車内のウィルとFBI捜査官は前後・左右に揺さぶられ、ウィルは窓ガラスで側頭部を強打する。一方のハンニバルも檻の両サイドにぶつかるが、彼自身は囲われているおかげで強い衝撃を免れる。

ぼんやりした視界のなか後部ドアが開き、ダラハイドが移送車の運転手とFBI達を射殺、FBIから鍵を奪い、ハンニバルの檻を開錠し、ハンニバルの膝に鍵を放り投げ、最後にウィルを一瞥して立ち去る。ハンニバル、すぐに拘束を解く。
移送車から降りて現場を検証するハンニバル。ダラハイドはすでに盗難車で遠ざかり、停車している後続護送車の警官は2人ともこと切れている。ウィルも降りてきてダメージを確認する

ここ、車内の2人が見つめ愛してるのト書きで指示されてなかったの驚きでした。あと映像ではあんまりわからなかったけど、ダラハイドが鍵を奪って外していってくれたんですね。

HANNIBAL: He's not going to kill us here. What he wants to do requires something a little more private.
ハンニバル:彼はここでわれわれを殺す気はないようだね。彼が目的を果たすにはもう少しプライバシーが守られる場所が必要だ
- He crosses to the police car. He opens the door and pulls the dead driver from the vehicle.
 ト書き:彼は警察車両に近づき、ドアをあけて死んだ運転手を引きずり出す
WILL: What are you doing?
ウィル:何してる?
HANNIBAL: You know, Will, you worry too much. You'd be so much more comfortable if you relaxed with yourself.
ハンニバル:ウィル、いいかい、きみは心配しすぎなんだ。緊張を緩めればずっと楽になる

ウィルの横に車を横づけし、助手席のドアを開けて死んだ警官を乱暴に押し出したハンニバル、ウィルをピックアップしようとします。おお神よ。

- He leans across the seat:
 ト書き:ハンニバル、座席に身を乗り出す
HANNIBAL: Going my way? Are you coming? He's not going to kill us here. What he wants to do requires something a little more private.
ハンニバル私と同じ道を行く? きみは来る?彼はここでわれわれを殺す気はないようだね。彼が目的を果たすにはもう少しプライバシーが守られる場所が必要だ
- Will takes the gun off the dead cop, then holds Hannibal's gaze -- should he kill Hannibal right now himself? Will glances at the chaos and carnage around them and then tucks the gun into the back of his pants and climbs into the car.
Hannibal puts the car in drive and pulls away.
 ト書き:ウィル、死んだ警官から銃を取り上げ、ハンニバルから目をそらさず-- 今すぐ自分がハンニバルを殺すべきではないか?と考える。ウィル、周囲の混乱と虐殺を眺め、ボトムの後ろに銃を入れ、車に乗り込む。ハンニバルは車を発進する。車は破損車両から遠ざかり、地平線を目指す

“Are you coming?”から“Going my way?”にセリフを変えたの誰だーーー!最高オブ最高。あとは下線部ですね...。ダラハイドを殺し、ハンニバルを殺そうと言ったのはジャックで、ウィルは肯定していませんでした。ウィルは一貫して「ハンニバルを変える」と言っていて、殺そうとはしていない。でも一瞬だけ「殺してしまうべきではないか」と考える。このあと崖の上の家でハンニバルも同じことを一瞬だけ考えます。相互応報的行動原理だ。

シーンは切り替わって、国道の事件現場に現れたジャック。

国道、ウィルとハンニバルを乗せていた囚人移送車は溝に落ちたまま。警察車は道路の真ん中に停車し、FBI捜査官と警官の複数の死体が運ばれ、犯罪現場の証拠収集、写真撮影が進められている。ジャック・クロフォードは慌ただしい犯行現場で怒りと懸念の表情を浮かべている

ジャックのあの表情は怒りと心配だったんですね。

そして崖の上の家へ。

海の上に切り立った目がくらむような絶壁、地層が露出した岩の先端に平屋がぽつんと建っている。全面ガラス張りの壁は暗く沈んだ海を望んでいる。ウィルとハンニバルは崖の上の家に近づき、ウィルはその絶景に惹かれる。

HANNIBAL: The bluff is eroding. There was more land when I was here with Abigail. More land still when I was here with Miriam Lass.
ハンニバル:この崖は常に侵食されている。ここにアビゲイルといたとき、もっと土地があった。ミリアム・ラスといたときはもっとね
WILL: Now you're here with me.
ウィル:今は僕といる
HANNIBAL: And the bluff is still eroding. You and I are suspended over the roiling Atlantic. Soon all of this will be lost to the sea.
ハンニバル:そしてこの崖も侵食され続けている。きみと私は荒れ狂う大西洋の上に浮かんでるんだ。まもなくこの崖も家もすべて海に沈むだろう
- Will lingers as Hannibal locates the spare key under a stone, opens the front door and disappears into the house.
 ト書き:ハンニバル、石の下のスペアキーを探し出し、正面玄関を開いて家の中に消えていく。ウィルはその場に残って立ち竦む

キエエエエエ!(奇声)ここの海洋と断崖と時間の概念が好きすぎて本当につらい。いずれ削れて海に飲まれる断崖の上、男2人が「今は僕といる」つって「きみと私は荒れ狂う大西洋の上に浮かんでる」って言い合うんですよ。これは夢か。いつかこの場所に行くのが今の私の夢です。

今日はとりあえずここまで。次は室内の会話と、ダラハイド襲撃のあたりまで。