Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E12: The Number of the Beast is 666 彼はあなたを飼ってる

E12はチルトンの山場を飛ばすと実はそんなに分量がなかった!びっくり。チルトン大好きなんだけど、唇かじられて焼かれるシーンを飛ばすことには何のためらいもなかったよ。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

チルトンのビデオメッセージを見て不安定さに拍車がかかるウィル、引き続きベデリアさんとのセラピーに通っています。

WILL: Damn if I'll feel.
ウィル:僕は絶対に感じないぞ *1
BEDELIA: Would you like to talk about what happened to Frederick Chilton?
ベデリア:フレデリック・チルトンに起きたことを話したいと思う?
WILL: The divine punishment of the sinner mirrors the sin being punished.
ウィル:神が罪人に与える罰は罰せられた罪を正確に映し出す
BEDELIA: Contrapasso. If you play, you pay.
ベデリア:因果応報。「うかうかしてると痛い目を見る」ね
WILL: Chilton languished unrecognized until Hannibal the Cannibal. He wanted the world to know his face.
ウィル:「人食いハンニバル」までのチルトンは認められず萎れてた。彼は全世界に顔を知られたかったんだ
BEDELIA: Now he doesn't have one.
ベデリア:今彼はその顔を持ってない
WILL: Only for radio. Damned if I'll feel.
ウィル:ラジオ向きだな。僕は絶対に感じないぞ
BEDELIA: We're all making our way through the Inferno. Dante's pilgrims.
ベデリア:私たちはみんな地獄へ向かって進んでる。ダンテの巡礼者ね
WILL: We're pets, not pilgrims. And the Great Red Dragon kills pets first.
ウィル:僕らは巡礼者じゃない、ペットだ。レッド・ドラゴンは最初にペットを殺す
BEDELIA: You put a hand on Dr. Chilton's shoulder for the picture. Touch gives the world an emotional context. The touch of others makes us who we are. It builds trust.
ベデリア:あなたは写真に映るときチルトン博士の肩に手を置いた。接触は世界に感情的状況を伝える。他者への接触は自分自身が誰かを知覚させ、信頼を築く
WILL: I put my hand on his shoulder for authenticity.
ウィル:僕が彼の肩に手を置いたのは信憑性を高めるためだ
BEDELIA: To establish he really told you those insults about the Dragon? Or had you wanted to put Dr. Chilton at risk? Just a little?
ベデリア:彼がドラゴンについての侮辱を語ったのが本当だと証明するために?あるいはチルトン博士を危険に晒したいと思った?ほんの少しでも?
WILL: I wonder.
ウィル:どうだろう
BEDELIA: Do you really have to wonder?
ベデリア:本当に「どうだろう」と思ってる?
WILL: No.
ウィル:いや、思ってない
BEDELIA: Did you know what the Great Red Dragon would do? You were curious what would happen, that's apparent. Is this what you expected?
ベデリア:偉大なるレッド・ドラゴンが何をするか知っていたのね?あなたは何が起こるか興味があった、それは明らかよ。この事態はあなたが期待していた通り?
WILL: I can't say I'm surprised.
ウィル:自分が今驚いてるとは言えない
BEDELIA: Then you may as well have struck the match. That's participation. Hannibal Lecter does indeed have agency in the world. He has you.
ベデリア:それならあなたがマッチを擦ったも同然。それが加担ということ。ハンニバル・レクターは確かにこちらの世界に代理人を持ってる。彼はあなたを飼ってる

うーん、このシークエンスは何が言いたいのかちょっと迷っていますが、下線部はかつてのハンニバルの発言や考え方です。ベデリアさんはハンニバルの代弁者ではあるけど、代理執行人ではないんだな...。

あと最後の“He has you.”はペットの話の流れを受けてるから、飼う、使役する、が妥当じゃないかなと思う。ハンニバルはウィルをペットとして飼っていて、レッド・ドラゴンは最初にペットを殺しに来る、ということでは?まず(ウィルがペットのように肩に手を置いた)チルトンが、次にハンニバルのペットであるウィルが。ウィルの自宅の犬を先に殺そうとしたように。

そしてここでよくわからないのが代理人とペットの概念です。
ベデリアさんが言う代理人=ウィルは"agency"。でもジャックとアラーナがハンニバルを責めるシーンでは、アラーナはウィル(ダラハイド?)を"proxy"と言ってた。

ALANA: By refuting him, you orchestrated his end by proxy.
アラーナ:彼を否定することで、代理人を使って彼の最期を画策した

エージェントは秘密裡に、プロキシは公的に、というイメージですけどわざと変えてるのかな。ちなみにS2でウィルの代理人になってハンニバルを殺そうとしたマシューは"proxy"だった。ペットは原作にも出てくるし特に意味はないのか...?いや、でもこのドラマで意味がないセリフはまずないんですよ。保留しよ。

次はちょっと前後しますが、燃やされる前のチルトンとハンニバルの会話。ここは燃やされてから聞いたほうが皮肉度がぐっと上がります。

HANNIBAL: "Wood burns because it has the proper stuff in it; and a man becomes famous because he has the proper stuff in him." You don't have the proper stuff, Frederick.
ハンニバル:“薪が燃えるのは、その中に燃える要素を持っているからだ。人間が名を顕すのは、その人に有名になる素質が備わっているからだよ。”フレデリック、君には有名になる素質がなかったんだ
CHILTON: I'm a best-selling author.
チルトン:私はベストセラー作家だぞ

ちなみにハンニバルが言ってる“薪は~”は「ゲーテとの対話」からの引用で、後半はこう続く。「名声は求めて得られるものではない。それをどんなに追いまわしたところで無駄さ。利口に立ちまわって、いろいろと策を弄し、まあ一種の名声を挙げることはできるかもしれないが、心の中に宝石がなければそれは空しいもので、長続きするはずもないよ。」...これもまたゲーテですね。なんとなくS3E13の終幕に向けていろんな目くばせが配置されてる気がしてきた。でもまだ形にならない!

*1:※これ何を感じないぞって言ってるのかわからなかったんですが、チルトンのビデオメッセージでダラハイドが言った命令、“ウィル・グレアム、背中に手を伸ばせ、そしておまえの骨盤の頂点にある小さな隆起を感じろ。その間にある背骨を感じろ。その背骨がまさにドラゴンが打ち砕こうとする場所だ(Reach behind you, Will Graham, and feel for the small knobs on the top of your pelvis. Feel your spine between them; that is the precise spot where the Dragon will snap your spine.)”からの「感じる」なんですね。チルトンに共感しないぞってことかと思ったわ。