Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E8: The Great Red Dragon ハロー、レクター博士

S3E8、シリーズタイトルも変わって新章です。ここからは基本原作に沿って進むし訳す分量減るかな?と思ったら全然そんなことはなかった。キリキリ巻いていくよ!あとダラハイド側のお話にはあまり触れないと思います(堂々)
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

冒頭、ハンニバルは記憶の宮殿のノルマン宮殿の礼拝堂で栄光の聖歌を聴いていますが、スクリプトではフレスコ画の天井にひびが入り、礼拝堂が崩落し、イタリアの老婆の上に瓦礫が降り注ぐ。そのさまをハンニバルは微笑んで眺めています。ここはカットされてしまった...;;
現実のハンニバルはといえば、悲劇を喜ぶ神の御業によって真っ白な彼専用の独房にいる。

CLOSE ON HANNIBAL'S EYES
CAMERA PULLS OUT to reveal his hair is now shorter, his eyes are duller, he's been incarcerated a long time.
ハンニバルの両目のクローズアップ
カメラが引くと彼の髪は今や短く、彼の両目の光は鈍く、彼が長時間投獄されたままであることが明らかになる

扉が閉まって暗転-3年後。THREE YEARS AGOって書けばたった3単語だけど長い、長いよ...!

アラーナ *1ハンニバル、チルトンとハンニバルの会話は豪快に飛ばして、いきなり本題です。

CLOSE ON HANNIBAL
Some time later, thinking. Composing in his mind as he sits at his table, a sheet of expensive paper before him. Then:
CLOSE ON HANNIBAL'S HAND
He holds a stick of charcoal. With it, he begins to write: "Dear Will..."
ハンニバルのクローズアップ
しばらく考え込む。テーブルに座り、置かれた高価な便箋を前に心の中で文章を組み立てる。そして:
ハンニバルの手のクローズアップ
鉛筆を手に取り、彼は書き始める:”親愛なるウィル...”

止まっていた歯車が回りはじめる感じ、わくわくしますね。
そしてウィルの奥さんと連れ子の登場。“冬着を着た美しい快活な女性と、かわいい少年(A good-looking, vibrant woman and a cute kid in winter clothes.)”って描写されてるんですけど「お、おう...」ってなってる今。愛嬌のある賢そうなお顔立ちとは思いますが、ほかの登場人物の美が天元突破してるので、初見時「ウィルは面食いで痛い目見たから反省したのだなあ」などと思っていましたすみません。

ジャックが帰った後、カットされた夫婦の会話。

- Will chops wood as Molly picks up the pieces.
 ト書き:ウィル、モリーが拾ってきた木材を割る
MOLLY: Jack stopped by to see me at the shop before he came out here. He asked directions to the house.
モリー:ジャックはここに来る前、私に会うために店に立ち寄ったの。彼はこの家の方角を聞いてきた
WILL: He said he got lost.
ウィル:道に迷ったって言ってたな
MOLLY: Good. That was the idea. I tried to call you. You really ought to answer the phone once in a while.
モリー:いいわね、その調子。あなたに電話したのよ、たまには電話に出てくれないと
WILL: What else did he ask you?
ウィル:彼はほかに何を尋ねた?
MOLLY: He asked how you are. I said you're fine. Said, if you missed your other life, you'd talk about it. You never do. You're open and calm and easy now, and I love that. Are you going to help him?
モリー:あなたの調子はどうかって。元気ですって答えておいた。あなたがもしあの世を恋しいと思っていたら、きっとそのことを話すはずよ。あなたは一度もそうしなかった。オープンで穏やかで、優しい今のあなたを愛してる。彼を手伝うつもり?
WILL: Helping Jack is bad for me.
ウィル:ジャックに手を貸すと僕はダメになるんだ

" You're open and calm and easy"ってもうウィルじゃないよね、別人だよね。ウィルはハンニバルに出会う前にはどうやっても戻れないけど、もしS1のいびつなウィル(不安定でプライドが高く、知的で生意気で悪夢ばかり見る)に戻り、彼のいびつさを愛する伴侶が現れてたらハンニバルはどうしたんだろう。

次、ウィルとウォルターが犬と出て行った後、ジャックとモリーの会話。ウィルがこの3年をどう過ごしていたか。

MOLLY: Whatever he says he wants to do, you'll take him anyway, won't you?
モリー:彼が何か望んだところで、やっぱりあなたは彼を連れていくんでしょう?
JACK: I have to. I'll make it as easy on him as I can./ He's changed. It's great you got married.
ジャック:そうするしかないんだ。できるだけ無理はさせないようにするよ。彼は変わった。君と結婚したのは素晴らしいことだ
MOLLY: He's better and better. He doesn't dream so much now. He was really obsessed with the dogs for a while. Now he just takes care of them. He doesn't talk about them all the time. Doesn't worry about them.
モリー:彼は日に日によくなってる。そんなに夢も見なくなったの。彼はしばらく犬たちのことで頭がいっぱいだったけど、今はただ世話してやってる。犬たちについてひっきりなしに話さなくなった。彼らのことは心配しないで
JACK I know what I'm asking. And I wished to God I didn't have to.
ジャック:自分が何を頼んでるかはわかってる。そうしなくていいように、と神に祈ったんだが

ウィル、めっちゃ犬恋しかったんやな...犬のことばっかり話してたんやな...(遠い目)
モリーはウィルにジャックを手助けするよう勧めます。それに答えるウィル、“If I go... I'll be different when I get back.(もし行ったら、帰ってきたとき違う僕になってる)”って、旦那が訳ありすぎてモリーさん逆に何かに目覚めるのではないか。

そして夜、モリーが寝たあと下着姿でベッドから起き上がり、ダイニングに移動してハンニバルからの手紙を読むウィル。秘め事!

- Will regards the letter and its handwriting: recognizably Hannibal's. As Will reads, we hear HANNIBAL'S VOICE:
 ト書き:ウィル、手紙とその筆跡をみつめる:明らかにハンニバルのものだ
HANNIBAL (V.O.): "Dear Will, we have all found a new life, but our old lives hover in the shadows, like incipient madness. Soon enough, I fear Jack Crawford
will come knocking. I would encourage you, as a friend, not to step back through the door he holds open. It's dark on the other side and madness is waiting..."
ハンニバル(声のみ):「親愛なるウィル、私たちはみな新たな人生を見出したが、古い人生が発症初期の狂気のように暗がりでひっそりと彷徨く。ジャック・クロフォードが間もなくドアをノックしに行くのではないかと懸念しているよ。友人として、彼が開けたドアの先へ足を踏み出さないことをお勧めする。その先は暗闇だ。狂気が待ち受けている...」

筆跡でわかるんだな~。あとハンニバルが「友人」って言った...戻った...;;

ダラハイドによる一家惨殺の現場検証を終え、ジャックに次の殺人を防ぐために意見は必要かと問われたウィル、“僕の回復に必要な、ある思考の方法が。ハンニバルに会わなくては(A mindset I need to recover. I have to see Hannibal.)”と答えます。このウィルの運命の抗えなさ!本当に他に方法はなかったのかと問い糺したい。

そして最後、牢に入れた者と、牢に入れられた者が逆転して対峙します。

- Will moves down the corridors of the BSHCI, behind an ORDERLY, hating being there. The hall begins to darken as Will walks, until CAMERA reveals we are now --
INT. NORMAN CHAPEL - NIGHT
Will walks steadily toward the altar, eyes flat, emotionless, as CAMERA reveals Hannibal Lecter standing in front of the pulpit, behind a wall of glass. Will walks calmly up to the glass as CAMERA MOVES THROUGH IT,
revealing we are now --
INT. BSHCI - HANNIBAL LECTER'S CELL - DAY
Hannibal stands on the other side of the glass, in his cell, facing Will. His surroundings are a converted space in the asylum. The windows and fireplace have been cemented over and the furnishings are minimal, but it's very comfortable.
 ト書き:ウィル、BSHCIの廊下を病棟職員について移動している。その場にいることを嫌悪しながら。ウィルが進むにつれホールは暗くなっていき、カメラは今いる場所を明らかにする-- 
ノルマン宮殿の大聖堂:夜
ウィルは平坦な感情のない目で、祭壇に向かって進んでいく。カメラ、ガラス壁の向こうの説教壇の前に立つハンニバル・レクターを明らかに。ウィルは穏やかにガラス壁まで進んでいき、ガラスを通過したカメラは今いる場所を明らかにする--
BSHCI、ハンニバル・レクターの独房:昼
ハンニバルは独房内でガラス壁の向こう側に立ち、ウィルと対峙する。彼の周囲は精神病院を改造した空間。窓と暖炉はセメントで覆われ、最小限ながら快適な家具
WILL: Hello, Dr. Lecter.
ウィル:ハロー、レクター博士
HANNIBAL: Hello, Will.
ハンニバル:ハロー、ウィル

S1E13と立場が完全に逆転したS3E8のラストシーン。美しい。

 

ハンニバルが匂いでウィルの到着に気づいた時点で、病院の廊下があのパレルモの大聖堂になった。ウィルはどの部屋を、どういうシステムでハンニバルと共有してるのかしら。

*1:ハンニバルが描いてたスケッチ、ボッティチェリの「FORTITUDE」の肖像が顔だけアラーナになってるんだけどどういう意味なんだろ...?