Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E7: Digestivo ウィルを残して立ち去れ、自由になれ

とうとうS3E7。ショッキングなシーンが続きますが、改めて見ると前半はそんなに対訳するシーンがなかった。物語の筋を追うのが目的ではないのと、メイスン達が胸糞わるいのとで。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

2人がマスクラットファームに運び込まれて逆さ吊りにされたあと、メイスン&ハンニバル&ウィルの正装食事会。前半・中盤ざっくり削ってウィルがコーデルに噛みつくところから。

MASON: After that, we'll have a pajama party, you and I. You can wear shorties by then. Cordell's going to keep you alive for a long time.
メイスン:ハンニバルを食べた後はわれわれでパジャマパーティをしようじゃないか。そのときには君も着丈の短いパジャマを着られるだろう。コーデルはできるだけ君を長く生かしておくつもりだからな
- As Cordell leans in to apply Will's moisturizer, Will's head jerks up, fast, and he LOCKS HIS TEETH into Cordell's cheek. Cordell growls, pushing a bloody-mawed Will off of him. Will spits a ragged piece of skin onto Mason's empty plate, where it leaves a RED SMEAR and lies like an insult. Cordell clutches a bloody cheek. Hannibal holds Will's gaze, amused.
 ト書き:コーデルがウィルに保湿クリームを塗ろうと屈むと、ウィルは素早く頭を起こしてコーデルの頬を歯で食いちぎる。コーデルは唸り、血まみれの胃と化したウィルを払いのける。ウィルはメイスンの空き皿にぼろきれのような皮膚片を吐き出す。ハンニバルはさも楽しげにウィルを見つめている
MASON: No pajama party for you, Mr. Graham. We'll be feeding you to the pigs as soon as Cordell removes your face. In a much more civilized fashion than you just tried to remove his.
メイスン:君にはパジャマパーティはなしだ、グレアム君。コーデルが顔を剥いだら、すぐに豚に喰わせよう。彼の皮を剥ごうとした君よりずっと洗練されたやり方でね

ハンニバル、この状況下でウィルの行動を楽しんでる。自分が調理される方法も楽しそうに聞いてましたね。ここのウィルのしぬほど憮然とした、うんざりした顔がもうすべてを物語っているような...。

次は晩餐シーンの続き、1人テーブルに残されたウィルのもとにアラーナがやってくるシーン。ここも前半は経緯の確認なので飛ばして、アラーナがやりたかったこととウィルのハンニバル化。

WILL: I never knew the world to be that way within the reach of your arm.
ウィル:君が広げた腕のなかに世界があるとは知らなかった
ALANA: I was trying to get to Hannibal before you. I knew you couldn't stop yourself. So I had to try.
アラーナ:私はあなたより前にハンニバルを捕まえようとした。あなたは自分を止められないってわかってたから。私がやらないと
WILL: By facilitating torture and death.
ウィル:そうやって拷問と死を手助けしたんだ
ALANA: I can abide the thought of Hannibal tortured, not necessarily to death. I'd say he has it coming, wouldn't you? Or maybe you wouldn't. By the time the FBI gets a warrant, you and any evidence of what happened would be burnt or roiling in the bowels of Mason's pigs.
アラーナ:ハンニバルが拷問されるのはやむを得ないわ、死は必ずしも必要ないけど。彼がこうなるのは当然の報いだと思わない?いいえ、あなたは思わないのね。FBIが令状を取るまでにあなたと事件の証拠は全部メイスンの豚の腸に入って、焼かれて吊るされるのに
WILL: Or Mason himself. What did you think would happen?
ウィル:あるいはメイスン自身の腸の中にね。何が起こるか考えて手助けした?
ALANA: I thought Jack Crawford and the FBI would come to the rescue. But the finer details of what I thought would happen have evolved.
アラーナ:ジャック・クロフォードとFBIが救けにくると思ってた。でも細部は私が思っていたとおりには展開しなかった
WILL: Then you have to evolve, Alana. You have to spill blood. By your own hand or someone else's.
ウィル:アラーナ、それなら進化しなくては。君自身の手か、あるいは誰かの手で血を注がなくては
 - Cordell enters, approaching Will in his wheelchair.
 ト書き:コーデルが入室し、車椅子のウィルに近づく
CORDELL: We're ready for you, Mr. Graham. Please keep your teeth to yourself.
コーデル:準備ができたよ、グレアム君。しっかり歯を食いしばっておくんだな

ウィルはS2と比較してはるかにハンニバル本位になってて、ハンニバルの捜索に加担したアラーナを思いっきり責めています。ウィルにとって「ハンニバルがメイスンに殺される」のはどうやら最悪みたいですね。そしてやっぱり「血を注ぐ」ことが大事。あ、そうだここはウィルが(まるでハンニバルのように)アラーナに進化・変容を促してるので、字幕の「即興で進めろ」は意味が違うのでは、と...。

次、マーゴとハンニバルが話してる豚小屋にやってきたアラーナ。ボディガードを撃ち、ポケットナイフを拾う。(マーゴとハンニバルの会話は削りましたが、マーゴに「兄を殺してやるから解放しろ」とは言わず、「治療のために自分で兄を殺さなくては」というハンニバルが実にハンニバル。さきのシーンを総合すると、ウィルがアラーナに「メイスンを殺せ」といい、ハンニバルがマーゴに「メイスンを殺せ」といい、彼女たちは従ったことになる。つまりハンニバルのセラピーはここで完了してる。)

MARGOT: Are you out of your mind?
マーゴ:気は確か?
ALANA: Yes. (to Hannibal) I thought I could/was trying to save Will from you, but right now, you're the only one who can save him. Promise me you'll save him. Please.
アラーナ:ええ。ハンニバルに向かって)私はあなたからウィルを救えると思ってた/救おうとしていた。でも今彼を救えるのはあなただけ。彼を救うと約束して。お願い
HANNIBAL: I promise, Alana. And I always keep my promises. Just cut the ropes on one arm, give me the knife and leave. I can do the rest.
ハンニバル:約束しよう、アラーナ。私はいつだって約束を守る。片側のロープを切るだけでいい、ナイフを渡したら立ち去れ。残りは自分でできる
- Alana gets uncomfortably close to Hannibal, their faces very close to each other. Alana puts the blade on the rope.
 ト書き:アラーナ、不愉快そうにハンニバルに近寄り、互いの顔が接近する。刃をロープに押し付ける
ALANA: Are you going to kill Mason?
アラーナ:メイスンを殺すつもり?
HANNIBAL: Margot is. Snatch some of my hair, back from the hairline, if you don't mind; get some skin. Put it in Mason's hand after he's dead.
ハンニバル:マーゴがやるさ。私の髪を生え際から毟れ。できれば頭皮ごと。それをメイスンの死体の手に持たせるんだ
- They are close enough to kiss. Alana looks into his eyes.
 ト書き:彼らはキスできるくらい近づく。アラーナ、彼の目を見る
ALANA: Could I have ever understood you?
アラーナ:私はあなたを理解できてた?
HANNIBAL: No.
ハンニバル:いいや
- Her hand slides into his hair -- and then pulls his head VICIOUSLY to one side. CLOSE -- as hair tears from Hannibal's scalp. In the same moment, Alana slashes a knife at the cable ties used to bind him.
 ト書き:彼女の手が彼の髪に滑り、彼の頭が乱暴に片側へ引っ張られる。ハンニバルの頭皮から髪が引き抜かれる。同時にアラーナは彼を拘束していた縄の結び目をナイフで掻き切る
 - He rises out of the pigpen -- the Kraken awoken.
 ト書き:彼は豚小屋から立ち上がる ―― 覚醒したクラーケンのように

クラーケンの!覚醒!!ですってよ!!!深海巨大生物クラスタのわたし歓喜ハンニバルの怪物性をクラーケンと表現してくれて本当にありがとうございます!!

この後のハンニバルの華麗な逆襲はほぼカットされてますが(Deleted Sceneには入ってるのかな)、オペラが流れるなかスローモーションでナイフ・釘抜きハンマー・銃などを駆使してボディガードを計13人?血の海に沈めるVシネも真っ青の大立ち回りを演じたのち、彼はウィルを助けに行く。
この倒した後のシーンもほぼほぼカットされてて、血まみれのハンニバルは一瞬しか映らないけどあまりに美しいから残しとくね;;

- An open doorway filled with DARKNESS. A blood-splattered Hannibal looms from within to fill it. The open fields and woodland of Muskrat Farm beyond. The huge moon hanging above and a myriad of stars. Freedom. He could run and no one would catch him. Leave Will and be free. The thought crosses his mind. He takes a deep breath of night air. And then he turns back into the house, and the shadows within envelope him once more...
 ト書き:暗闇に沈む出入り口が開く。血まみれのハンニバルが館の内側から現れる。マスクラットファームの向こうに広がる平原と森林。上空には大きな月、数えきれないほどの星。自由だ。彼は逃げられる。きっと誰も彼を捕まえない。ウィルを残して立ち去れ、自由になれ。その考えが彼の心に去来する。彼は深く深く夜の空気を吸い込む。そして身をひるがえして館へと戻る。闇が彼をふたたび覆い隠す

ハンニバルはどうやってもウィルを残していけない。彼は一度もウィルを置いていかなかった。私ここ読んで頭いたくなるほど泣きました。