Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E1: Antipasto もし私が青ひげの妻なら、最後の妻になりたい

S3は「初めて観る現在進行形のシーン」と「既出シーンのカットバック」、そして「これまでのシーンの別アングル/背景/空白補足」が行きつ戻りつ混在するので、S1~S2までの流れと映像が頭に入ってないと時系列もおぼつかない鬼仕様です。これS3から新規参入できる視聴者いる...?しかもS3E1から早速ベデリアさんの行動がわかりません。とりあえずベデリア-ディモンドの軸をよりよく理解するために、カットされたシーンから。

ヴェラ・ダルに買い物に来たベデリアさん、ローマン・フェルの助手だったディモンドに声をかけられていました。ちなみにハンニバルがディモンドをディナーに招き、殺さずに帰した後になります。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

DIMMOND: Florentines say Vera dal, with its wealth of cheeses and truffles, smells like the feet of God.
ディモンド:フィレンツェの人間はチーズとトリュフで溢れたヴェラ・ダルを神の足みたいな匂いがする、と言うんだ
BEDELIA: Hello, Mr. Dimmond.
ベデリア:こんにちは、ディモンドさん
DIMMOND: I don't know if it's you, me or God, but there's something in the air.
ディモンド:それがあなたか僕か、あるいは神かはわからないけど、何かが起こりそうな予感がする
- The clerk hands Bedelia her bag.
 ト書き:店員、ベデリアに紙袋を手渡す
BEDELIA: Grazie.
ベデリア:ありがとう
DIMMOND: Dinner was lovely. I must confess to a certain abstract curiosity about your husband... Mrs. Fell.
ディモンド:ディナーはすばらしかった。フェル夫人、実はあなたの夫について好奇心をそそられてるんだ
BEDELIA: Good-bye, Mr. Dimmond.
ベデリア:さよなら、ディモンドさん
- Bedelia takes the bag and exits. Dimmond follows.
 ト書き:ベデリア、紙袋を持って店から出る。ディモンド、ついていく
DIMMOND: I asked one of the scholars at the Palazzo to point me in the direction of Dr. Fell. He raised one craggy old finger and pointed it directly at your husband. I thought the old codger made a
mistake, but there was no mistake.
ディモンド:僕はパラッツォで学者の1人にフェル博士はどこかと尋ねたんだ。彼は年老いた指を持ち上げ、あなたの夫を指さした。偏屈爺が間違ったのかと思ったけど、そうじゃなかった
- Bedelia keeps walking. Dimmond quickens his pace to catch up.
 ト書き:ベデリア、歩き続ける。ディモンド、追いつくためにペースを速める
DIMMOND: Even in the teeth of evidence, you're just going to walk away.
ディモンド:証拠があるのに、あなたは逆らってただ逃げようとするんですね
BEDELIA: Those aren't the teeth you should be concerned about.
ベデリア:あなたが興味を持つべき証拠はないわ
- Bedelia tries to control the tremble building inside her.
 ト書き:ベデリア、自分のなかで崩壊していくものを抑えようとする
DIMMOND: Where are Roman and Lydia?
ディモンド:ローマンとリディアはどこに?
BEDELIA: I don't know.
ベデリア:私は知らない
DIMMOND: Does your husband know?
ディモンド:あなたの夫なら知ってる?
BEDELIA: He's not my husband. He is something entirely Other.
ベデリア:彼は夫じゃない。まったく別の何かよ
DIMMOND: The man is curating an exposition of Atrocious Torture Instruments.
ディモンド:そんな人物が残虐な拷問器具の展示をキュレートしてる
BEDELIA: The essence of the worst of the human spirit is not found in the iron maiden or the whetted edge. Elemental ugliness, Mr. Dimmond, is found in the faces of the crowd. However you think you're going to manipulate this situation to your advantage, think again.
ベデリア:人の精神において最低最悪の本質は鉄の処女や磨かれた刃には現れない。根源的な醜悪さは拷問器具に見とれる観客の顔にこそ見い出せるものよ。でもあなたはこの状況を自分の利益のために操作しようとしてる
DIMMOND: Bluebeard's wife. Secrets you're not to know, yet sworn to keep.
ディモンド:青ひげの妻。あなたが知ろうとしないなら秘密の誓いは守られたままだ
BEDELIA: If I'm to be Bluebeard's wife, I would prefer to be the last one. Unless you believe you are beyond harm, go to the police.
ベデリア:もし私が青ひげの妻なら、最後の妻になりたい。警察に行って。あなたに危害が及ばないと信じてるなら別だけど
DIMMOND: You want to be caught.
ディモンド:あなたは逮捕を望んでるんだね
BEDELIA: Will you help me?
ベデリア:私を助けてくれる?

青ひげの妻が出てきた!このシーンなんでカットされたんでしょうね?ディモンド殺害前後を理解するのにすごく大事な気がするぞ。ベデリアさんが「裏切り」という言葉にあそこまで怯えたのは、このやりとりでユダとなって第三者にハンニバル逮捕を唆したから。でもディモンドは結局警察には行かず、逃亡に失敗した彼女の目の前で殴られ殺される。同じような行為、同じような帰結であってもベデリアとウィルは全然違いますね。基本的に彼女の怯えや恐怖はとても真っ当なんだけど、一方のS1-S2でウィルがことごとく真っ当でない反応をしたので(彼はギデオンやマシュー、メイスンの末路にまったくといっていいほど動じない)、ハンニバルにとっては「違う」という感覚ばかり募っていく。ハンニバルは「予測通りになった?なら加担してる。足を踏み入れたな」って言うけど、ベデリアさんはハンニバルがディモンドを殺すかどうか知りたくて「私を助けて」と言ったわけではないはずです。彼女はウィルやハンニバルの同類じゃない。

...あ、そうだダンテの神曲とのリンクは絶望的に長くなるし専門じゃないしそもそも古典苦手だしで全身全霊ですっ飛ばしたいんですけど、きっともうどなたかが考察されてます?よね?(あるなら知りたい...!)