Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E12: Tome-wan レクター博士、何か言うことは?

今回は駆け足で3シーン。早くパトロクロスの話がしたい一心です。まずはベデリアさんとジャックの会話から。次が豚小屋で吊られたハンニバルと対峙するウィル、ラリったメイスンを放置したままいつものように楽しく語らってしまうハンニバルとウィルまで。

青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

JACK: You managed to avoid prosecution.
ジャック:あなたは追訴を免れましたよ
BEDELIA: I've got immunity from the U.S. Attorney. Whatever I say, whatever I've said, I will end the same way everyone else does. Flat on my back, wondering, "Is this all?"
ベデリア:私は連邦地検から免責を受けた。私が何を言おうと、あのとき何を言っていようと、結局同じ結末になっていたはずよ。疑わしそうに「これだけ?」って私を打ちのめす
JACK: You asked for immunity, I asked for the truth. Both got what we wanted.
ジャック:あなたは免責を求めた。私は真実を求めた。私たちは望むものを手に入れた
BEDELIA: The truth didn't help me and it won't help you. Hasn't yet.
ベデリア:真実は私を救わなかったし、あなたを救うこともないでしょうね
JACK: I gave you every opportunity to tell the truth and you ran.
ジャック:真実を話す機会を何度も与えたのに、あなたは逃げた
BEDELIA: How do you think the FBI could've protected me? You couldn't protect Will Graham. You still can't. Nothing makes us more vulnerable than loneliness, Agent Crawford .
ベデリア:FBIが私を守れたと思う?あなたはウィル・グレアムを守れなかった。今もまだ守れていない。クロフォード捜査官、孤独ほど私たちを脆くするものはないわ
JACK: Will's not alone.
ジャック:ウィルは孤独じゃない
BEDELIA: No, he isn't. Hannibal believes Will is a killer. You still believe he's your killer?
ベデリア:ええ、そうね。ハンニバルはウィルを殺人犯だと信じてる。あなたはまだ彼を自分の殺人犯だと信じてる?
JACK: I have to believe.
ジャック:信じなくては
BEDELIA: Hannibal's only crime I was witness to was influence. Influence works best when we're unaware. But Will Graham has been very aware.
ベデリア:私が目にしたハンニバルの唯一の罪は影響力よ。影響力は無意識で最もよく働く。でもウィル・グレアムはずっと意識していた
JACK: Meaning?
ジャック:どういう意味?
BEDELIA: Meaning Mr. Graham may not know himself as well as Hannibal does.
ベデリア:つまり、ミスタ・グレアムはハンニバルほど自分自身を知らないかもしれない
JACK: Will has more reason to see Hannibal caught than any of us.
ジャック:ウィルには誰よりもハンニバルの逮捕を見るべき理由があるさ
BEDELIA: If you think you’re close to catching him, it’s because that's what he wants you to think. Don’t fool yourself into believing he's not in control of what's happening.
ベデリア:もし彼を捕まえられそうと思っているなら、それは彼があなたにそう思わせたいから。彼が今起きていることの主導権を握っていない、なんて思いこまないことね

ベデリアさんの言葉にはいつも見過ごしてはいけない真実が含まれているのですが、今回もとてもわかりにくい。どころかちょっとお手上げです。特に「ウィルはハンニバルほど自分のことを理解していない」という根拠が。ベデリアさんの「私はあなたを信じる」という言葉があれほど深くウィルの心に食い込んだように、ウィルは孤独で脆く、「信じてもらうこと」に飢えてる。ここで彼女は「ハンニバルはウィルを信じているのに、FBIはウィルを信じていない」と示唆することでウィルの寝返りの可能性を警告しているのだと思う。ハンニバルだけがここまで圧倒的なほどウィルを信じてきました。だからここまではわかる。この次の会話がわからないんですよね...。ハンニバルは無意識に対して影響を与える → ウィルはずっと無意識ではなかった(強く意識を持っていた) → だからウィルはハンニバルほど自分を知らない。...んんん?これどういう意味?なにか特殊な心理学の理論がベースにある??

次、マスクラットファームで吊られたハンニバルのもとに連れてこられたウィル。

- Hannibal's eyes lock with Will's. Mason clocks it.
 ト書き:ハンニバルの視線はウィルの視線に固定されている。メイスン、それを確認する
MASON: I wonder what would happen if I locked you two in a cage together?
メイスン:もしお前たち2人を同じ檻に一緒に入れたら何が起きるんだろうな?

(中略)
CARLO: Padrone. He killed Matteo.
カルロ:御主人、こいつはマッテーオを殺した
MASON: We can give Matteo's family the Dottoroni's cojones for comfort. Capisce?
メイスン:マッテーオの家族には慰めに博士の睾丸でも送ろう。わかったか?
CARLO: He likes to cut low.
カルロ:彼は深く切るのがお好みだ
MASON: Weren't testing the depth of his fat, were you, Dr. Lecter? You are an odd psychiatrist. We could've had some good, funny times together. It's a damn shame!
メイスン:奴の脂肪の厚さを測ったんだろう、レクター博士あんたは奇妙な精神科医だ。一緒に楽しく愉快な時間を過ごせただろうに。まったく残念だよ
- Mason hands Will the knife, but Will hesitates.
 ト書き:メイスン、ウィルにナイフを手渡すがウィルは躊躇する
MASON: I've done my part. I've muzzled the dog, now you need to put it down.
メイスン:僕の役割は終わりだ。犬に口輪をはめてやったんだ、次はお前が片付けろ
- Mason holds out the Harpy and Will takes it from him.
 ト書き:ウィル、メイスンが差し出したハーピーナイフを受け取る
WILL: Anything to say, Dr. Lecter?
ウィル:レクター博士、何か言うことは?
- Will stands before Hannibal, replicating the image that began the episode. Hannibal regards him without a word.
ト書き:ウィル、ハンニバルの前に立ち、エピソードの冒頭の映像を再現する。ハンニバルは何も言わず彼をじっと見る

ここは映像とスクリプトが大幅に違ってたので訳しましたが(あと「博士の睾丸」が訳したかったんだけど、ウィルはスペイン語理解してるのかな)、メイスンが2人を執拗にコンビ推ししてくるので憎みきれない感じになってきた。

次、ラリって犬に顔の皮を食べさせているメイスン。わざわざマスクラットファームからウルフトラップまで連れてくるハンニバルの執念よ。メイスンは後から入室してきたウィルに「やはりお前とレクター博士を1つの檻に入れるべきだった。何が起きてしまうか興味があるよ("I should have put you in a cage with Dr. Lecter. I'm curious what would've happened.")」って声をかけるんですけど、これS3でウィルをハンサムだと気づいた、ってシーンだよね。メイスンは映像化されていない台詞を含めてすでに2回「ハンニバルとウィルを同じ檻に入れたい」って言ってて、私にはこのドクズと同じ血が流れているのだなあと思う。
ここはラリってるメイスンのセリフは飛ばして、ウィルとハンニバルの会話だけ。

HANNIBAL: He broadened their palates as I have broadened yours. Murder or mercy?
ハンニバル:私がきみたちに新しい味覚を教えたように、彼は犬の味覚を開発してるんだ。殺すか、それとも慈悲を?
WILL: There is no mercy. We make mercy, manufacture it in parts that have overgrown our basic reptile brain.
ウィル:慈悲はない。僕たちは脳幹の爬虫類脳が過剰に発達した領域(※注=人間脳/大脳新皮質)で慈悲という感情を創り出す
HANNIBAL: Then there is no murder. We make murder, too. It matters only to us. You know too well that you possess all the elements to make murder. Perhaps mercy, too, but murder you understand uncomfortably well.
ハンニバル:それなら殺意もないね。私たちは同じように殺意も創り出す。殺意は人間においてのみ意味をもつ。きみは嫌というほど知っているはずだ、自分が殺意を生み出すために必要な全要素を持っていると。おそらく慈悲も。だがきみは殺意というものを不快なほどに理解している
(中略※M「腹が減った」→H「鼻を食べろ」のくだり※)
WILL: I'm not gonna kill him.
ウィル:僕は彼を殺すつもりはない
HANNIBAL: He was going to feed you to his pigs after he fed them me. Weren't you, Mason?
ハンニバル:彼は私を豚に食わせた後、君も食わせる気だった。そうだろう、メイスン?
WILL: He's your patient, Dr. Lecter. You do what you think is best for him.
ウィル:彼はあなたの患者だ、レクター博士。彼にとって最善だと思うことをしたらどうです
- Hannibal considers Will a moment, then moves behind Mason and SNAPS his neck. Mason goes limp. Hannibal then calmly checks his pulse. Satisfied that it remains, we...
 ト書き:ハンニバル、しばらくウィルをじっと見、メイスンの後ろに回って首をコキっと捻る。メイスンはだらりと脱力する。ハンニバル、穏やかに脈を探り、脈があることを確認して満足する

ここ初見で見たとき私ドン引きだったんですけど、ハンニバルはともかく動じてないウィルが本格的に理解できなくなったのこのシーンだった気がする。全員頭おかしいよシュールコントかよって思ってた。今は丸呑みにしてますけど。基本このドラマには正常で凡庸なツッコミが不在だと思うの。早く戻ってきてチルトン!