Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E12: Tome-wan 僕がくぐるサーカスの輪の1つに過ぎない

S2E12はいきなり未映像化シーンから始まります。メイスンをおだてて彼と手を組むウィル。このくだりはS2E12全体の流れをつかむうえですごく大事な気がする...!
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

- WILL GRAHAM is relaxing in Mason's chair, stroking Verger's SUCKLING PIG swaddled in a blanket on his lap. MASON VERGER, bloody-nosed and annoyed, stares at a confident Will.
 ト書き:夜のマスクラットファーム。ウィル、膝の上の毛布にくるまったバージャーの仔豚を撫でながら、メイソンの椅子でくつろいでいる。鼻血を出しながら苛立つメイスン・バージャー、自信ありげなウィルをにらみつける
MASON: Why would Dr. Lecter wanna kill me?
メイスン:レクター博士がなぜ僕を殺そうとする?
WILL: This isn't about you. This is about me. Killing you would just be a hoop for me to jump through. It's sauce for the goose that you're not particularly likable.
ウィル:君の問題じゃない、僕の問題なんだ。君を殺すことは僕がくぐるサーカスの輪の1つに過ぎない。君がそれほど好まなくても、ある人に当てはまることはほかの人にも当てはまる *1
MASON: I like me.
メイスン:僕は自分を好んでる
WILL: You just stole your sister's womanhood.
ウィル:君はただ妹から女性性を盗んだだけだ
MASON: She weaponized her uterus. Shouldn't have been waving it around like a gun.
メイスン:彼女は子宮を武器にした。銃みたいに振り回すべきじゃなかったのに
WILL: Then it was self-defense.
ウィル:彼女にとっては自己防衛だったんだろう
MASON: Damn right.
メイスン:大当たり
WILL: And butchery.
ウィル:それに屠殺だ
MASON: Are you lecturing me on butchery in my own slaughterhouse?
メイスン:僕の屠殺場で屠殺についてレクチャーするつもりか?
WILL: I wouldn't deign. You could disappear me with a wink. I heard about the "embalmed beef" scandal.
ウィル:そんなつもりはないよ。君はまばたき1つで僕を消せる。「隠蔽された肉」のスキャンダルを聞いたことがある
MASON: What did you hear?
メイスン:何を聞いたって?
WILL: One of the Verger packing plants in Chicago was investigated for dangerous conditions. They found several whistle-blowing employees had been rendered. Inadvertently.
ウィル:シカゴのバージャー加工工場の1つが危機的状況になり、監査が入った。すると内部告発した従業員の数人が肉になって出荷されていたことが判明したと。それも不注意でね
MASON: Canned and sold as Li'l Ivy's Pure Leaf Lard. A favorite of bakers everywhere. We didn't lose a single contract.
メイスン:“Li'l Ivy's Pure Leaf Lard”って缶詰になって売られたんだ。どこのパン屋にも人気の商品だ、われわれは1つの契約も失わなかった
WILL: Blame doesn't stick to the Vergers. If I kill Hannibal Lecter, that's going to stick to me.
ウィル:そう、バージャー家には追及が及ばない。でももし僕がハンニバル・レクターを殺したら、僕は確実に罪に問われる
- Mason studies Will, very curious what game he's playing.
 ト書き:メイスン、ウィルが仕掛けようとしているゲームにひどく好奇心をそそられ、彼を観察する
MASON: It is providence itself when a destiny like yours couples with a man as resourced as I am.
メイスン:君のような運命の人間と、僕のような資本をもつ人間が手を組むのは神の思し召しだな
WILL: I'm just pointing out the snare around your neck. What you do about it is entirely up to you.
ウィル:僕はただ君の首には縄が巻かれてるって指摘してやっただけだ。好きなようにやればいい、ぜんぶ君次第だ

ウィルったらこんなことしてたんですね!チルトンのときと同じ手口やないか。おかげでメイスンはチルトン以上にウィルにハマってしまった。なんという罪深い魔性。しかもメイスンにはチルトンみたいに「ハンニバルにこう言え」みたいな命令はしてなくて、ただ「君次第だ」と示唆するだけ。これは完全にハンニバルのやり方です。
この対話があったんなら、今後の展開で 1)ハンニバルが「きみはメイスンに私が彼を殺したがっていると伝えた」とウィルを責めたこと、2)メイスンがハンニバルを捕らえたうえでウィルを高級車でお迎えして丁重に農場に連れていったこと、が腑に落ちます。あのメイスンがウィルに「豚に食わせるべきはレクター博士だ」って言われて素直に従うはずないし、ハンニバル側についたほうが変態メイスンは楽しめそうだし(原作のメイスンはハンニバルを秘密の性癖部屋に連れ込んで首吊り拘束オナニーを自慢する)、なんでかなって思ってたよね...。S2E12はこれで少しわかりやすくなりそうです。

でもなんでこのシーン削られちゃったんだろう?流れが把握しやすくなるのはもちろんだけど、豚の赤ちゃんなでなでしながら最高にワルい顔で誘惑するウィルが血を吐くくらい見たいんじゃよ。

*1:このことわざ、S1でも出てきた気がするな?あれどの回のどのシーンだったっけ...。