Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E11: Ko No Mono 彼はいつだってこの部屋にいる

これでS2E11はラスト。長かった...。気になったシーン3つ、ハンニバルにアラーナの銃の練習がバレる直前の会話→マーゴに起きた悲劇とハンニバルの感情→ハンニバルへの怒りをメイスンにぶつけるウィルです。未映像化シーン・セリフなし、対訳との大きな違いもなし、くどい考察もなし。今回はほんとに確認作業としてさらっと。

ALANA: I'm feeling pressure to believe something that I don't trust and that pressure's making me paranoid.
アラーナ:自分が信じてないものを信じることにプレッシャーを感じてる。何もかも信じられなくなってる
HANNIBAL: Who is pressuring you?
ハンニバル:誰がプレッシャーになってる?
ALANA: Will.
アラーナ:ウィルよ
- Hannibal reacts, disappointed at the mention of Will's name.
 ト書き:ハンニバル、ウィルの名前が挙がったことに失望の表情を返す
HANNIBAL: We'll never really be alone, will we? He'll always be in the room.
ハンニバル:私たちは決して本当の意味で2人きりになれないんだね。彼はいつだってこの部屋にいる
ALANA: Do you feel like you're helping him? Making progress?
アラーナ:あなたは彼を助けられてると思う?よくなってると?
HANNIBAL: Will's finally finding himself. He's getting better.
ハンニバル:ウィルはようやく自分が誰かを知った。よくなってるよ
- Alana wishes she could believe Hannibal in this moment, but is beginning to realize maybe she can't.
 ト書き:アラーナ、今この瞬間ハンニバルを信じられればと願うが、もう信じられないことを理解しはじめている
ALANA: Doesn't seem to be getting better. Seems to be getting much worse.
アラーナ:よくなっているようには見えないわ。むしろ悪化していってる
HANNIBAL: (good-natured)Are you questioning my therapy?
ハンニバル:(穏やかに)私のセラピーに疑問がある?
ALANA: I'm questioning everything. It's all blurry and subjective. I feel empty. Like I've given blood.
アラーナ:すべてが疑問よ。全部がぼやけていて主観的で。魂が抜けたように感じる。血を抜かれたみたいに
HANNIBAL: You've given more than blood.
ハンニバル:君は血以上のものを与えたんだ

ハンニバル-アラーナ-ウィルの関係は三人婚っていうより性嗜好のトリオリズム/3Pっぽくて、非常に変態くさい...(主にハンニバルが)。それにしても失望してみせるハンニバルの白々しさよ。あ、でも2人きりになれないというのはむしろウィル-ハンニバルの関係性のほうが強い気がしますね。彼らの間にはつねに必ず黒い牡鹿や精霊ウェンディゴやシヴァという第三者の影がある(そういえば第三者が消えてしまうのはS2E13の最後だったっけ?S3以降も出てくるんだっけ?S3は記憶があいまいだ...)。
この後ハンニバルはアラーナの手の薬莢の匂いに気づき、彼の幸せが終わる鐘の音が徐々に近づいてくる。でもまだハンニバルの手には何枚かカードが残ってる。

眠るマーゴを見守る2人のシーンから、ウィルが立ち去った後のハンニバル。あれはどういう感情からくる表情なのかと思ったら、スクリプトに書いてあった。

He remains there, but Hannibal's expression, for once, is not entirely inscrutable. We detect a MINUTE TRACE of emotion. Of his own label of sadness. Or of ire.
ハンニバルはその場にとどまるが、彼の表情は今回ばかりは謎めいていない。ほんの少しのーー悲しみの、あるいは憤りの感情が張り付いているのが読み取れる

誰も見ていないところでわざわざ演技する必要はないので、もしかしてハンニバルにとってもマーゴの悲劇は計算外だった?ウィルの子が失われるだけでなく、相続人を作る機能そのものまで奪われたから?...とも思ったんですが、でもメイスンに手加減する温情がないことなんか、ハンニバルには重々わかってたはずです。やっぱり彼は自分で悲劇を仕組んでおいて、そのカタルシスに酔って珍しく感情をあらわにしている、ということか。サイコパスまじサイコパス
そしてウィルの予想もやっぱり「全部ハンニバルが仕組んだこと」です。

- Will roughly pulls Mason to the edge and dangles him partially over the hungry, SQUEALING pigs below. Mason's eyes are more rage-filled than even Will's.
 ト書き:ウィル、メイスンを荒々しく端まで引きずり、階下でキーキー鳴く空腹の豚の上に上半身をぶら下げる。メイスンの両眼はウィルのものよりもさらに怒りに燃えている
WILL: You think it was Margot's idea to have an heir? Think it was your idea to take it from her? My idea to come here and kill you? ...The only thing that you, your sister, and I all have in common is the same psychiatrist.
ウィル:相続人を孕むことはマーゴの考えだったと思うか?彼女から相続人を奪うのはお前の考えだったと思うか?ここにお前を殺しに来たのは僕の考えか?...お前と妹と僕の共通点はただ1つ、同じ精神科医にかかっていることだ
- Will drops Mason on the metal grating, hard. Mason gathers his wits, debating lunging at Will's back... then Will turns with a gun pointed directly at the prodigal Verger.
 ト書き:ウィル、メイスンを金属フェンスの上に投げ落とす。メイスンは気を落ち着けウィルの背後から突進しようとするが、瞬間ウィルは振り向いてバージャー家の放蕩息子に銃を突き付ける
WILL: If Dr. Lecter had his druthers, you'd be wrapped around a bullet right now.
ウィル:もしレクター博士にこの機会があれば、今お前は銃弾で撃ち抜かれてる
- Will tucks the gun back into his holster, adding:
 ト書き:ウィル、ホルスターに銃を戻して補足する
WILL: Dr. Lector is the one you want to be feeding to your pigs.
ウィル:お前が豚に食わせるべきはレクター博士

ウィルが怒りに我を忘れ、他人にハンニバルを殺させようとしたのはこれで2回目。1回目はビバリー・カッツ殺害時ですが、2回目のマーゴのときのウィルの意図はハンニバル殺害ではなく、返り討ちにしたハンニバルをメイスン殺害犯として捕まえることなんですね。

それにしても身一つでハンニバルと対峙して殻を破り、羽根を広げて飛んでみせても、ゼロ距離までハンニバルに歩み寄っても、異常なまでの共感能力があっても、ウィルはまだハンニバルを理解しきれてはいない。まだハンニバルを愛していないから。

ハンニバルSeason2、たいへんに佳境です。さあそしてS2E12は久々のベデリアさん登場回だ!