Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E11: Ko No Mono 元通りに戻せたらいいのに

ラウンズの焼死体検証→シヴァ神は次にまわして、先にみんな大好きティーカップの夜の語らいです。ウィル酔ってるしもう全然セラピーじゃない。
(※青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです)

- Will observes the amber light trapped in a tumbler of Scotch.
 ト書き:ウィル、スコッチのタンブラーに閉じ込められた琥珀の光を眺めている
WILL: I've been so preoccupied with taking a life, I'm having trouble wrapping my head around making one.
ウィル:僕は命を奪うことにばかり気を取られてきたけど、新しい命を生み出すことで頭がいっぱいになって困る
HANNIBAL: When men become fathers, they undergo biochemical changes that affect the way they think.
ハンニバル:男は父親になると、考え方に影響を及ぼす生化学的変化を経験するものだ
WILL: You said the same thing happens when men become killers.
ウィル:あなた殺人犯になるときにも同じことを言いましたよね
HANNIBAL: Fatherhood is not always a nurturing role. Fathers can be killers. In protecting a child, things trapped inside a man for years fly free, ready to explode in pain. And dangerous behavior. What sort of father would you be?
ハンニバル父親は必ずしも養育の役割だけを果たす存在ではないよ。父親は殺しもする。子どもを守るとき何年も閉じ込めてきたものを解き放ち、苦痛の中で感情を迸らせ、危険な行動をとる準備ができている。きみはどんな父親になる?
- Will reflects on that, imagining a different life.
 ト書き:ウィル、その言葉を反芻する。別の人生を想像しながら
WILL: I would be a good father.
ウィル:いい父親になると思いますよ
- Hannibal smiles warmly. He imagines Will would.
 ト書き:ハンニバル、温かく微笑む。彼はウィルがいい父親になる姿を想像している
HANNIBAL: Do you see a life flashing before your eyes that's not your own?
ハンニバル:視界にきみのものではない人生がよぎるのが見える?
WILL: Yes.
ウィル:ええ
HANNIBAL: How quickly we form attachments to something that does not yet exist.
ハンニバル:私たちはまだ存在しないものへの愛情をなんて早く形成するんだろうね
WILL: I'm not attached. I'm only anticipating attachment.
ウィル:まだ愛情はないけど、愛情を持てればいいなと思うだけ
HANNIBAL: We have a deep-seated need to interact with our children. It helps us discover who we are.
ハンニバル:私たちはわが子と触れ合う必要がある。そうすることで自分が何者かを発見していく
WILL: Have you ever been a father?
ウィル:父親だったことがある?
HANNIBAL: I was to my sister. She wasn't my child, but she was my charge. She taught me so much about myself. Her name was... Mischa.
ハンニバル:いや、妹に。私の子どもではなかったが、親代わりだった。彼女は私自身について多くを教えてくれた。名前は...ミーシャといった
Will: "Was"?
ウィル:“いった”?
HANNIBAL: She's dead. Abigail reminded me so much of her.
ハンニバル死んでしまった。アビゲイルは彼女を思い出させるよ
- That derails Will's train of thought, almost sobering.
 ト書き:その言葉でウィルの思考は逸れ、酔いが醒める
WILL: Then why did you kill her?
ウィル:ならなぜ彼女を殺したんです?
HANNIBAL: What happened to Abigail had to happen. There was no other way.
ハンニバル:アビゲイルに起きたことは起こるべくして起こった。ほかに方法はなかった
WILL: There was. But there isn't now.
ウィル:ありましたよ。でも今はもうない
HANNIBAL: Would you protect this child in the way you couldn't protect Abigail?
ハンニバル:きみはアビゲイルを守れなかったのと同じ方法で自分の子も守るつもり?
WILL: I still dream about Abigail. I dream I'm teaching her how to fish.
ウィル:僕はまだアビゲイルの夢を見る。魚釣りを教えている夢だ
HANNIBAL: I'm sorry... I took that from you. Wish I could give it back.
ハンニバル:すまない、きみから彼女を奪って。元通りに戻せたらいいのに
WILL: So do I.
ウィル:僕もそう思う
HANNIBAL: Occasionally, I drop a teacup to shatter on the floor. On purpose. I'm not satisfied when it doesn't gather itself up again. Extra parts were harvested on-site. Someday perhaps a cup will come together.
ハンニバル:時折、私は床にティーカップを落として粉々に割る。わざとね。それがひとりでに集まって元通りにならないのが納得いかない。余ったパーツは現場で拾われた。でもいつの日か元通りになる

このシーンのハンニバルも剥き出しで、晩餐とは違った意味で満たされていてつらいです(※もう全部つらい)。ウィルが想像する父親としての自分は結局「別の人生」だし、ハンニバルも「きみのものではない人生」「アビゲイルと同じ方法では守れない」と言い切ってる時点で、2人の間でマーゴの子は結局失われるしかないものだったんだろうなあ。その未来をすべて自分で仕組んだうえで、父親になったウィルを想像して微笑できるハンニバル。まぎれもなくサイコパスなんだけど、かわいそうで悲しい怪物をもう怖いとか憎いとか思えないんだよ!涙
ひるがえって、ウィルがなんで泣くほどまでにアビゲイルに執着してるのかがまだ腑に落ちていない私です。理屈で考えたらダメなのかな...。あと映像ではカットされてるんですけど、「何年も閉じ込めてきたものを解き放ち、苦痛の中で感情を迸らせ、危険な行動をとる」って、S3のダラハイドとの死闘を予言してるみたいな表現だなあと思う。

ティーカップの話はもっとずっと後でまとめてやらないとですが、このくだりで「余ったパーツは現場で拾われた(Extra parts were harvested on-site. )」って付け加えられてるの、これ次のシヴァ神のシーンでゼラーが言う台詞そのまんまです。ここでシヴァ神を作ったのがハンニバルだとわかるようになってるんですね。