Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E7: Yakimono 僕は変わってしまった。あなたが変えたんだ

やっと...やっとここまで来た...。長かった...(※まだ半分です)
時間的にも内容的にもこのシーンが3シーズンの折り返し地点。ここはト書きが多くを語ってくれてます。

CLASSICAL MUSIC PLAYS
AN ORNATE CLOCK shows 7:30. MOVE ACROSS IT to find an appointment book. A beautifully-handwritten entry at 7:30-8:30 -- "Will Graham." We are --
INT. HANNIBAL LECTER'S OFFICE - NIGHT
クラシック音楽が流れるなか、凝った装飾の時計が7:30を表示する。カメラは時計を通り過ぎ予約手帳へ。美しい手書きの文字で7:30-8:30の欄に「ウィル・グレアム」と書かれている。
ハンニバル・レクターのオフィス:夜
Hannibal Lecter sits in one of the two armchairs. A glass of red wine in hand. Enjoying the music. A KNOCK at the door disturbs his reverie. He places his glass down and goes to the door. Opens it to find Will Graham. Will has cut his hair --shorter, neater. Everything about him seems focused.
 ト書き:ハンニバル・レクター、2つあるアームチェアの1つに座っている。手には赤ワインのグラス、音楽を楽しんでいる。ドアのノックによって彼の物思いは破られ、グラスを置いてドアへ向かう。開けるとそこにウィル・グレアムを見出す。ウィルの髪は短く、こざっぱりとカットされている。彼の姿はすべて焦点が合っているように見える
HANNIBAL: Hello, Will.
ハンニバル:やあ、ウィル
WILL: May I come in?
ウィル:入っていいですか?
HANNIBAL: Do you intend to point a gun at me?
ハンニバル:私に銃口を向けるつもりかな?
WILL: Not tonight.
ウィル:そんなつもりはない、今夜は
- He lets Will into the room.
 ト書き:ウィルを室内に招き入れる
WILL: Are you expecting someone?
ウィル:誰かが来るのを待ってた?
HANNIBAL: Only you.
ハンニバル:きみだけだ
WILL: Kept my standing appointment open.
ウィル:僕のいつもの予約時間を空けたままにしてくれてたんですね
HANNIBAL: And you're right on time.
ハンニバル:時間通りに来たね
WILL: I have to deal with you. And my feelings about you. I think it's best if I do that directly.
ウィル:あなたに向き合わないといけない。あなたに対する自分の気持ちとも。それなら直接向き合うのが一番いいと思って
HANNIBAL: First you have to grieve for what is lost and what has changed.
ハンニバル:まずは失われたものと変化したものを悲しむことだ
WILL: I've changed. You changed me.
ウィル:僕は変わってしまった。あなたが変えたんだ
HANNIBAL: The friendship that we had is over. The Chesapeake Ripper is over.
ハンニバル:かつて私たちの間にあった友情は終わった。チェサピーク・リッパーは死んだ
WILL: It had to be Miriam, didn't it? She was compelled to take his life so she could take her own back.
ウィル:ミリアムにとってはそうでしょうね。彼女は彼の命を奪うことで人生を取り戻すことができた
HANNIBAL: How will you take your life back?
ハンニバル:きみはどうやって人生を取り戻す?
WILL: I'd like to resume my therapy.
ウィル:セラピーを再開したい
- Hannibal stares as Will sits in his familiar chair. After a long moment, Hannibal follows suit and sits opposite him.
 ト書き:ハンニバル、ウィルがなじみの椅子に座るのをじっと見る。しばらくしてウィルにならい、彼の対面に座る
- CUT TO A PROFILE SHOT of the two of them silhouetted in their chairs, regarding each other.
 ト書き:お互いに向き合って椅子に座っているシルエットの2人、横からのショット
HANNIBAL: Where shall we begin?
ハンニバル:ではどこから始めようか?
- As the corners of Will's mouth threat to curl...
 ト書き:ウィルの口角が脅すように歪む

こうして身一つでハンニバルと対峙することを選んだウィル。最初吹き替えで見てたとき、ここで壮絶な騙し合いが始まったと思ったんですよね...。ウィルはハンニバルを罠に嵌めるためにすべてを偽ってる、と(だから道筋を見失った)。でもそうじゃなくて、ウィルはただ抑制の箍をはずした。ここから先の展開ではウィル本来の本音と罠の嘘が入り混じってくる。あとハンニバルの本心はわりとあからさまにわかりやすくなる。
それにしてもハンニバルが持ち出してきた「私たちの間にかつてあった友情」に1ミリも触れないウィルの塩対応が素でいい感じです。ああウィルだなーと思う。この言葉の裏には「かつてあった友情が終わり、新しい友情が始まる」というハンニバルの希望が含意されています。ハンニバル目線でみるとこのドラマ、S2E12まではほんっとにお花畑ですよね。。