Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E5: Mukozuke 彼は生まれ変わったんだ

S2E5後半はギデオンのターン。ウィルのことはかたくなに名前で呼ばないギデオン先生、フレデリックを好きすぎてちょっとびっくりします。

GIDEON: Mr. Graham. You always did look like the boy next door. Is it true that you ate that poor Hobbs girl?
ギデオン:ミスタ・グレアム。君は控えめな好青年に見えていた。あの哀れなホッブズの娘を食べたというのは本当か?
WILL: You can call me Will now that we're of equal social standing.
ウィル:僕たちの社会的立場は対等だ。ウィルと呼んでください
GIDEON: Is this Frederick's idea of punishment? Group therapy with the man who tried to kill me.
ギデオン:この懲罰はフレデリックのアイデアかな?自分を殺そうとした男とのグループセラピーとは
WILL: No, I'd like to talk to you about the Chesapeake Ripper.
ウィル:いや、チェサピークの切り裂き魔についてあなたと話したかった
GIDEON: Thought I was the Ripper.
ギデオン:私は自分が切り裂き魔だと思っていた
WILL: You're the pretender to the throne.
ウィル:あなたは継承権のない“王座を狙う者”だ
スクリプトのみ/ GIDEON: Are you my new therapist? Somewhat radical approach. Then, Frederick always did like that sort of thing.
ギデオン:君は新しいセラピストか?やや乱暴なアプローチだな。あの時はフレデリックもそんなことばかりしていた。)
 What did you offer him to bring me back? I'm the last person he wants to see. I give him a visceral chill in his guts. What's left of them.
 私を呼び戻すために彼に何を差し出した?私は彼が最も会いたくない人間のはず。彼ははらわたの肝を冷やすぞ、残った内臓だけだが
WILL: You know who the Chesapeake Ripper is. You've met him.
ウィル:あなたはチェサピークの切り裂き魔が誰か知ってる。彼に会ったでしょう
GIDEON: So Frederick gets to catch the Ripper after all. What do you get?
ギデオン:つまりフレデリックは切り裂き魔を捕まえようとしてるのか。君は何を得る?
WILL: I want to stop the man who murdered my friend.
ウィル:僕は友人を殺した男を止めたい
スクリプトのみ/ GIDEON: The Ripper's playing out a mannerly dance, getting close, but not too close, offering tokens of goodwill, but not giving away too much.
ギデオン:切り裂き魔は礼儀正しいダンスを踊ってる。つかず離れず善意を態度で示しながら、でも多くは与えない
WILL: He gave you away.
ウィル:彼はあなたを贈り物にした)
 I remember the night in Lecter's house. The night I took you there.
 僕はレクター邸の夜を思い出した。あなたをあの場所へ連れて行った夜
GIDEON: The night you tried to kill me.
ギデオン:君が私を殺そうとした夜だ
WILL: How do you think I found you? He sent me to kill you, Abel.
ウィル:僕がどうやってあなたを見つけたと思う?彼が僕を送り込んだんだ。エイブル、あなたを殺すために
GIDEON: Am I your evidence? Oh, you're in trouble, Mr. Graham.
ギデオン:私が証拠というわけか。だがミスタ・グレアム、君は裁判中の身だ
WILL: Why would you protect him?
ウィル:なぜ彼を守ろうとする?
GIDEON: (スクリプトのみ/ He's done nothing to me.) You were happy enough to try and kill me yourself. You have it "in you," as they say. (スクリプトのみ/ I'm intrigued to see what you try when I say no.) He's the Devil, Mr. Graham. He's smoke. You'll never "catch" the Ripper. He won't be caught. If you want him, you'll have to kill him.
ギデオン:(彼は私には何もしていない。)私を殺そうとしているとき君は喜んでいた。よく言われるように殺意は「君のなか」にある。(スクリプトのみ/ 私がノーと言ったときに君が何をするか興味をそそられる。)彼は悪魔だよ、ミスタ・グレアム。そして煙だ、捕まえることはできない。君が捕まるだろう。もし彼を望むなら彼を殺さねば
WILL: Fair enough.
ウィル:あなたの言う通りだ

まずは"boy next door"をどう訳すかでわくわくしますね!字幕では「おとなしそう」。英Wikiによれば西洋的ストーリーテリングのプロトタイプで、主役の女の子にとって愛の対象となる可能性がある存在。親しみやすく控えめ、派手な恋愛対象にならない異性の友達、恋愛対象として改めて考えると理想的だけど友達関係を壊したくない相手、みたいな肯定的ニュアンスだそうです。ほーう。絶世の&浮世離れした美形のことはboy next doorとは言わないので、それならヒュー・ダンシーは違うのでは?(真顔)

この回のギデオンはまるでベデリアさんのように預言的セリフを吐きたおします。アラーナとギデオンの会話、芯喰ったところから。

ALANA: I've been wondering about that night. How'd you know where I live?
アラーナ:私はあの夜のことがずっと不思議だった。私の住所をどうやって知ったの?
GIDEON: A little birdie tweeted in my ear.
ギデオン:小鳥が私の耳に囀ったのさ
ALANA: Why would a birdie tweet that?
アラーナ:なぜ小鳥は囀ったの?
GIDEON: I imagine said birdie wanted me to kill you. Or wanted Will Graham to have reason to kill me. Either way, you and I are equally expendable.
ギデオン:小鳥は君を殺したかったんじゃないかな。あるいはウィル・グレアムに私を殺す理由を与えたかった。いずれにしろ君と私は捨て駒
ALANA: You were trying to find the Ripper that night. Did you?
アラーナ:あなたはあの夜、切り裂き魔を探してた。そうよね?
GIDEON: I found Will Graham.
ギデオン:私がみつけたのはウィル・グレアムだった
ALANA: Will's not the Chesapeake Ripper.
アラーナ:ウィルはチェサピークの切り裂き魔じゃないわ
GIDEON: No, he isn't. Not yet. All the things that make us who we are. What has to happen to change those things? So much has happened to Will Graham. He's a changed man.
ギデオン:そう、今はまだ違う。自分を自分たらしめるすべてのもの。それらを変えるためには何が起こればいいんだろうね?ウィル・グレアムにはあまりにも多くのことが起きた。彼は生まれ変わったんだ
ALANA: Maybe he's looking for redemption.
アラーナ:彼は贖罪を求めているのかも
GIDEON: Mr. Graham isn't interested in redemption. But revenge, now there's a trinket he'd value.
ギデオン:ミスタ・グレアムは贖罪に興味などないよ。彼にとって価値あるガラクタは復讐だ

長いのでここまで。おそろしいことにギデオンはハンニバルがウィルに何をしようとしているか、これから彼らに何が起こるのか、この段階でほぼ把握しています。ベデリアさんと比べて圧倒的に情報量が少ないのになぜそんなことができるのだろう。チェサピークの切り裂き魔になりきってたから?ちなみにハンニバルの基本原則「無礼者を喰らう」には例外があって、真相(=ハンニバルがウィルに何をしようとしているか)を知った者は無礼でなくても生きたまま喰らい、自分自身を喰らわせる(つまりギデオンとベデリアさん)。この行動の動機がよくわからなくてずっと悩んでいる...。
S2E5のボリュームがたいそうなことになってきたけど、ハンニバルとマシューの会話を読んでたら見過ごせないト書きに出くわしたのでまとめて次に。