Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S2E3: Hassun きみにここにいてほしくない

裁判シーンに突入したS2E3、この回は掘り下げてもあんまり旨みがないです。ベデリアさんの不在が響いている。そういえば裁判でウィルに関する描写が続くシーン、「彼は直観能力に優れている。驚くべき視覚記憶力があり、他者に対する洞察力が鋭く、この部屋でもっとも頭のよい人間ではないかと思う」と検察がいうところ、前半は原作レッド・ドラゴンのブルーム博士のせりふだわ。あとジャックのウィルに対する初対面の印象「彼は知的で生意気で、自閉症スペクトラムにあるようだった」もですが、しつこいけどS1のウィルが全然そんな風に見えないので「そ、そんなに優秀だったのウィル...」ってなるよね。
そんなウィルに崇拝者が現れて、ウィルとハンニバルは相変わらず鉄格子の内と外で騙し合いを展開しています。1つめはスクリプトから削られた会話を念のためサルベージ。

HANNIBAL: You may not be guilty.
ハンニバル:きみは有罪にならないかもしれない
---ここからスクリプトのみ---------------------------------------
 Tell me about your admirer, Will.
 ウィル、きみの崇拝者について教えて
WILL: He's experienced. A sophisticated killer. He has a wit and a whimsy. Parodied the crimes I investigated so well I didn't know he was there. He's connected to me somehow. He knows me. Or thinks he does. He certainly knew about the cases.
ウィル:彼は殺人に慣れてて洗練されてる。ウィットに富んでいて気まぐれ。僕が調査してきた犯罪のパロディだけど、彼がその犯罪現場にいたかはわからない。何らかの形で僕とつながりがあって、僕を知ってる。あるいは彼がそう思っている。彼は確実に一連の事件について知ってた
HANNIBAL: You could be describing me.
ハンニバル:まるで私を描写してるようだね
WILL: I once thought I was.
ウィル:僕もそう思いました
---ここまで------------------------------------------------------
HANNIBAL: This ear you were sent presents an opportunity, Will. If someone else is responsible for your crimes, perhaps he now wants to be seen.
ハンニバル:ウィル、きみに送られたこの耳は好機だ。もし他の誰かが一連の事件の犯人なら、彼は姿を現したいと思っているはず
WILL: Why would he want to be seen now?
ウィル:なぜ今頃姿を現すんです?
HANNIBAL: He cares what happens to you.
ハンニバル:きみの身に起きてることを心配してるから
- Will holds Hannibal's gaze.
 ト書き:ウィル、ハンニバルから目をそらさない

削られた部分は看護師マシューの描写ですが、ここなんで削ったんだろうな。マシューとハンニバルが似てる、という設定が要らなかったとか?あとここで出てくるwhismy(気まぐれ)がのちのちベデリアさんが挙げる「ハンニバルが捕まる原因=気まぐれ」と同じ単語かどうか要確認です。まだそこまで字幕で見れてないの。。

2つめ。崇拝者と切り裂き魔は同一犯じゃないと見立てたウィルと、息をするように大嘘をつき悪魔の囁きを繰り出すハンニバル

HANNIBAL: Then this is blunt reproduction?
ハンニバル:ではこの殺人は出来の悪い模倣?
WILL: You knew that already.
ウィル:あなたはとっくにわかってたでしょう
HANNIBAL: Would've liked to have been wrong.
ハンニバル:間違っていてほしかった
WILL: Occam's broom. You intentionally ignored facts that refute your argument and hoped nobody noticed.
ウィル:オッカムのほうきだ。あなたは自分の考えに反する事実を故意に無視して、誰も気づかないことを望んだだけ
HANNIBAL: You noticed. I wanted to dispel your doubts once and for all.
ハンニバル:でもきみは気づくんだね。きみの疑惑をこれ限りで晴らしたかったんだ
WILL: My doubts about what?
ウィル:僕の疑惑?何に対して?
HANNIBAL: Me. I want you to believe in the best of me, Will. Just as I believe in the best of you. This crime offered us both reasonable doubt.
ハンニバル:私に対する疑惑だ。ウィル、私の最善を信じてほしい。私がきみの最善を信じるように。この事件はわれわれにとって都合のいい疑惑を提供してくれた
WILL: It offered us a distraction.
ウィル:この事件が提供したのは気晴らし程度でしょう
HANNIBAL: Maybe this acolyte has given you your path to freedom. Even Jack Crawford is ready to believe, Will.
ハンニバル:いや、この信奉者はきみを自由に導く道を与えたのかもしれない。これならジャック・クロフォードもきみを信じる
WILL: It would be a lie.
ウィル:でも嘘ですよ
スクリプトのみ/ HANNIBAL: No greater than the lie that binds you here, that claims you are guilty. That lands on Will. I must admit to selfish motives.
 スクリプトのみ/ ハンニバル:ここにきみが繋がれて罪に問われていること以上の嘘などないよ(※ト書き?その考えはウィルの腑に落ちる)私は自分の身勝手な動機を認めなくてはいけないようだ)
 I don't want you to be here.
 きみにここにいてほしくない
WILL: I don't want me to be here, either.
ウィル:僕もここにはいたくない
HANNIBAL: Then you have a choice. This killer wrote you a poem, Will. Are you going to let his love go to waste?
ハンニバル:それなら選びなさい。この殺人犯はきみに詩を書いた。彼の愛を無駄にするつもりか?
- ON WILL pondering that choice --
 ト書き:ウィル、何を選択すべきか考え込む

うーん、このくだりは字幕だけだとわかりにくいような?ウィルはハンニバルの悪魔の囁きに負けて初の共犯になってしまうのですが、その巧みな誘導がさすがなハンニバル。崇拝者と切り裂き魔が同一犯というウソ説を推して無実を勝ち取りウィルの信頼を得ようとするハンニバルに、「でもそれは嘘だ」とはねつけるウィル。さらに口説きおとすハンニバルの「君がここにいて責められていること以上の嘘はない、私の身勝手だが君にここにいてほしくない」はすばらしい詐欺です。あー怖いサイコパス怖い。ここなんで映像時に切られてしまったのかなあ、惜しいなあ。このシーンがこれから始まるmurder husbandsの歴史のいちばん最初ですよね。
あとオッカムのほうきって知らなかった...かみそりじゃないんだ。このドラマはいろいろと哲学要素をぶっこんできよる。