Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S1E13: Savoureux ハロー、ウィル

ウィルが撃たれて拘束された後。相変わらずウィルのことは逐一ベデリアに垂れ流すマン・ハンニバルが「子牛の頭の煮込み 緑のソースがけ」を携えて押し掛けてくるシーン。お前はいつでもそうなのか。

BEDELIA: What’s on your mind, Hannibal?
ベデリア:何を考えているの、ハンニバル
HANNIBAL: I’m going to see Will tomorrow.
ハンニバル:明日ウィルに会いに行くよ
BEDELIA: As a patient or as a friend?
ベデリア:患者として、それとも友人として?
HANNIBAL: As a farewell. Of sorts.
ハンニバル:別れの挨拶かな、ある意味での
----ここからスクリプトのみ-----------------------------------------------
 Who I knew Will to be was an illusion.
 私が知っているウィルは幻だった
BEDELIA: He’s created his own version of reality to help him make sense of what he saw and heard and felt.
ベデリア:彼は現実世界で別の人格を作ったのよ。見るもの、聞くもの、感じるものをより理解するために
HANNIBAL: And did.
ハンニバル:そして殺人を犯した
----ここまで-------------------------------------------------------------
BEDELIA: Thought Mr. Graham would finally be the patient who cost you your life.
ベデリア:ミスター・グレアムはついにあなたの人生をかけた患者になるかと思っていたのに
HANNIBAL: He didn’t cost me my life. He cost Abigail Hobbs her’s. Your veal is getting cold.
ハンニバル:彼が犠牲にしたのは私の人生ではなく、アビゲイル・ホッブズの命だ。子牛が冷めるよ
BEDELIA: It’s a controversial dish. Veal. Mmmm.
ベデリア:物議を醸す料理ね、子牛は。おいしい
HANNIBAL: Those who denounce veal often cite the young age at which veal are killed, when they are in fact older than many pigs going to slaughter.
ハンニバル:子牛の料理を非難する人は幼くして殺すことを理由に挙げるが、子牛が殺されるのは豚が屠殺場に行くよりずっと年をとってからだ
- Bedelia considers that, then brings the subject back.
 ト書き:ベデリア、考えて話題を元に戻す
BEDELIA: You have to be careful, Hannibal. They started to see your pattern.
ベデリア:気をつけて、ハンニバル。彼らはパターンに気づきはじめてる
HANNIBAL: What pattern would that be?
ハンニバル:どんなパターン?
BEDELIA: You form relationships with patients that are conducive to violence. That pattern.
ベデリア:あなたは暴力につながる患者と関係性を築く。そのパターンよ
- Hannibal goes still.
 ト書き:ハンニバル、沈黙する
BEDELIA: Under scrutiny, Jack Crawford’s beliefs about you could unravel.
ベデリア:捜査が入ればジャック・クロフォードの信頼は崩れる
HANNIBAL: Tell me, Dr. Du Maurier, have your beliefs about me begun to unravel?
ハンニバルデュ・モーリア博士、教えてくれ。君の私への信頼は崩れはじめている?
- Hannibal takes a bite of his veal and waits for her answer.
- OFF Bedelia not sure how to respond...
 ト書き:ハンニバル、子牛をひと口食べて彼女の返事を待つ。どう返事するか不明なベデリアで暗転

映像では後半切られちゃってもったいないんですが、スクリプトの「ある意味では別れの挨拶をしに行く。私がよく知っていたウィルは幻だった」の流れはとてもいいなあと思うの。やたら陰鬱で神経症的で悪夢ばかり見る、かわいそうでかわいいあの子は幻になってしまった。新しく生まれ直したウィルと本当のハンニバルが対峙して、さようならと初めましてを言うのが明日の面会、シーズン1のラストシーンなんですね。あとベデリアさんの「ミスター・グレアムはついにあなたの人生をかけた患者になるかと思っていたのに」も預言すぎてつらい。

そしてラストシーン、終わりの始まり。
スクリプトが最後の最後まで暴走してて、この脚本家さんは本当に仕事ができるなと思った。

The cave-like cell on the high security block. The security gate opens and Hannibal Lecter steps inside. He stops and takes in the surroundings. The smells. Straightens his tie. Hannibal walks down the block, aware of the inmates. CAMERA continues down the corridor until it finds the last cell on the block REVEALING WILL GRAHAM INSIDE. He wears a B.S.H.C.I. jumpsuit. His cell bare except for bed and table.
ト書き:高セキュリティ区画の洞窟のような独房。セキュリティゲートが開き、ハンニバル・レクターが内部に足を踏み入れる。彼は立ち止まり、すぐ何かに気づく。あの匂いだ。ハンニバルはネクタイをまっすぐに直し、受刑者に意識を配りながら区画を進む。カメラはウィル・グレアムが内部にいる区画内最後の独房まで廊下を進む。ウィルはBSHCIのジャンプスーツを着ている。彼の独房にはベッドと机以外なにもない。

ON HANNIBAL AND WILL. They appraise each other through the safety barrier.

ト書き:ハンニバルとウィル。彼らは防護柵越しに互いを値踏みする
HANNIBAL: Hello, Will.
ハンニバル:ハロー、ウィル
WILL: Hello, Dr. Lecter.
ウィル:ハロー、レクター博士

何はともあれ「彼は立ち止まり、すぐ何かに気づく。あの匂いだ」で審議入りますね。このときウィルの脳炎はもう治っているはず。船のロゴのアフターシェーブローションは私物だし持ち込めないはず。えっじゃあ体臭で...?わかったの...?ざわつく脳内会議。でもこれガチで台本に書いてますからね。映像では入ってすぐウィルの独房がありましたが、スクリプトでは廊下のいちばん奥。ハンニバルの嗅覚は相変わらずえげつない変態的精度です。あと映像ではネクタイ直さなかったのが少し残念かな。

最後の挨拶、スクリプトだとウィルは"Dr. Lecter."しか言わないのですが、ここは両者ともHelloと言いあうのがとても大事だと思う。ので、映像さんがいい仕事してくれてありがとうございますと言いたい。このHelloはちょっと日本語にできなかった...。ただの挨拶ではなく、憎悪をはらんで万感こもった「はじめまして、これからよろしく」のニュアンスではないかなと思います。

あ、あとスクリプトに最後のハンニバルの微笑の指示がないのは意外でした。映像のハンニバルは本当に本当にうれしそうに笑うのに。初見時はウィル側に立って見てたので、邪悪に笑いやがってチクショーと思っていた気がする。でもその見方は全然違っていた。このドラマはハンニバル側に立って話の筋を追うほうがずっとわかりやすいんですよ。彼はこれから始まるウィルとの新しい関係を本当に楽しみにしている。

これでシーズン1終了!長かった~。S3E12までぼちぼちやるつもりですが、全文対訳なんかに挑まず美味しいとこだけに限定しといて本当によかった...。