Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S1E3: Potage 知的なサイコパスでサディストだ

S1E3: Potageはアビゲイル-ハンニバルの共犯関係が築かれるターンなので特に取り上げるポイントがないんですが(正直者)、スクリプトさんがいいお仕事してたので載せておこう。ミネソタのモズと模倣犯についてウィルが講義してる教室に、ジャックとハンニバルがこっそり入室して聴講する場面。知的なサイコパスでサディストだ、と説明するウィルの声にハンニバル大映しでカットインしてくるの、いい演出だなー。ぞわっとする。あとウィルの有能さが素直にビジュアルでわかる貴重なシーンでもあります。 

■Brilliant. /ウィルとハンニバル・ジャック

字幕はこちら。

ウィル:この犯人は自分が“モズ”ではないと主張した。“モズ”より優れてると。犯人は賢い変質者でサディストだ。同じ犯行はしない。どう捕まえる?
(※教室の入り口でひそひそ話すハンニバルとジャック)
ハンニバル模倣犯について?
ジャック:いい意見が出るかも
ウィル:この模倣犯はフレディ・ラウンズのサイトの熱心な読者でありホッブズを熟知してた。動機や殺害方法を理解し見事に再現し、不謹慎だがそれを芸術の域に高めた。ホッブズとの関係は?遠くから眺めるファンか?面識があり自分を売り込もうとしたか?ホッブズ模倣犯を同じく知っていたのか?ホッブズが妻を殺し娘を手に掛けようとする前、何者かが電話をしてる。その非通知の電話の相手こそ模倣犯だと確信してる

 

スクリプトと対訳はこちら。

Will: The killer who did wanted us to know he wasn’t the Minnesota Shrike.
ウィル:この殺人犯は「ミネソタのモズではない」とわれわれに知らせたかった
 He was better than that. He is an intelligent psychopath. He is a sadist.
 自分はモズより優れてる、と。彼は知的なサイコパスでサディストだ *1
 He will never kill like this again. So how do we catch him?
 二度と同じ手口で殺さないだろう。われわれは彼をどうやって捕まえる?
HANNIBAL: Giving a lecture on Hobbs’ CopyCat?
ハンニバルホッブズ模倣犯について講義を?
JACK: Well, we need whatever good minds we can get.
ジャック:ああ、得られるならどんな意見も欲しい
WILL: This CopyCat is an avid reader of Freddie Lounds and TattleCrime.com.
ウィル:模倣犯はフレディ・ラウンズとタトル・クライムサイトの熱心な読者だ
 He had intimate knowledge of Garret Jacob Hobbs’ murders, motives, patterns-- enough to recreate them and arguably elevate them to art.
 彼はギャレット・ジェイコブ・ホッブズの一連の殺人、動機、パターンなどを熟知し、再現し、反論はあるだろうが芸術の域に高めてみせた *2
 How intimately did he know Garret Jacob Hobbs? Did he appreciate him from afar, or did he engage him?
 彼はどうやってギャレット・ジェイコブ・ホッブズの心理を知った?遠くから称賛していたか、あるいは雇っていた?
 Did he ingratiate himself into Hobbs’ life? Did Hobbs know his CopyCat as he known?
 ホッブズに取り入ったのか?模倣犯ホッブズを知っていたように、ホッブズは彼の模倣犯を知っていたのか?
 Before Garret Jacob Hobbs murdered his wife and attempted to do the same to his daughter, he received an untraceable call.
 ギャレット・ジェイコブ・ホッブズは妻を殺し、娘も同じく殺そうとする前に発信元不明の電話を受けた
 I believe the as-yet unidentified caller was our CopyCat Killer.
 今のところ、この電話をかけた主が模倣犯だと確信してる *3
---------以下スクリプト---------------------------------------------------
HANNIBAL: Brilliant.
ハンニバル:素晴らしい *4

*1:これはS1E1でネガの殺人現場を見せられたウィルが見抜いていたこと。でもハンニバルの前で口に出したのはこれが初めてですね。もちろんウィルはハンニバル模倣犯とは知らずに言ってるけど、ここでも模倣犯について何ら失礼な表現はしていないし、過剰な感情も差し挟まない。何なら敬意すら感じられる。こういう抑制がきいたところがダメだったんだよなあ多分...。

*2:この表現、わが意を得たハンニバルは大変嬉しそうです。「変わった人間を突っついたらどうなるか、ただ興がって見ている」というハンニバルの姿勢はS1では徹底してるけど、E7-8の友情の可能性が見えてくるのがこのあたり。

*3:プロファイリングをもとに鋭い推理を展開する、ちゃんとかっこいいウィルがいます。ドラマ版は共感能力の描き方がそもそも超能力っぽい(=トランスみたいな特殊能力で知能とは関係なさそうに見える)うえ、特にS1は本人の挙動と容姿と感情の機微がアレすぎて、理知的に犯人に迫る優秀なプロファイラーには見えづらいからな...。

*4:ここは放映ではハンニバルがただ微笑するだけ。あれはあれで大変恐ろしく美しいのですが、ブリリアントとつぶやく博士も見てみたかった気がします。知的なサイコパスが印象操作のためでなく他人を心から称賛する、なかなか得難い。初見ではまったく気づいてなかったけど、E3にして「なんで博士はウィルじゃないとダメだったの?」の答えは少しずつ開示されつつあったんですよね。