Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S1E1: Aperitif ティーカップとマングース

S1E1:Aperitifから、ハンニバルがウィルをどう見ているか。ハンニバルが出したヒント(=ネガとしての模倣殺人)をウィルがうまく解けたか答え合わせする場面であり、ウィルが初めて人肉ソーセージを食わせられる場面でもあります。さすがハンニバルえげつないさすが。

早朝に車で1時間かけてお弁当もって「来ちゃった☆」をかます時点で博士の執着度合いは相当おかしいんですけど、ここでのウィルの対応(朝ご飯のお礼/ギフトラッピングの読解/不意打ち笑顔の3連コンボ)が致命的に博士の好みだったんだと思うな~罪やな~。

 

□ウルフトラップの朝食/ハンニバルとウィル
字幕はこちら。

ハンニバル:おはよう、ウィル。入っても?
ウィル:クロフォードは?
ハンニバル:裁判所だ。今日は2人で冒険だ。入っても?
 食事には気を使ってる、だから大抵自分で作る。朝の始まりはタンパク質。卵とソーセージだ
ウィル:おいしいよ。どうも
ハンニバル:よかった。この前は分析して悪かった。だが今後もやると思うので控えめに謝るよ
ウィル:プロらしくしよう
ハンニバル:大人の付き合いを。友達にはなれない
ウィル:興味はない
ハンニバル:今はね。君は怪物を見分けるそうだな
ウィル:草原の殺しは“モズ”じゃない
ハンニバル:詳しく聞こう。モズと模倣犯は何が違う?
ウィル:何もかもだ。対照的な手口を見せられ犯人像が浮かんだ。あの犯行現場はまるで贈り物だ
ハンニバル:人の行動というのは複雑なものだ。モズの行動も不可解だ。彼の犯行を再現できた?彼には問題が?
ウィル:いくつかある
ハンニバル:君にもあるか?
ウィル:いや
ハンニバル:だろうね。我々に問題はない。後ろめたいこともない。ジャックは君を壊れやすいカップだと思ってる。特別な客用の陶磁器だ
ウィル:君の意見は?
ハンニバル:君はヘビ退治に必要なマングースだ。さあ食べて

 

スクリプトと対訳はこちら。

HANNIBAL: Good morning, Will. May I come in?
ハンニバル:おはようウィル。入っていいかな?
WILL: Where’s Crawford?
ウィル:クロフォードはどこに?
HANNIBAL: Deposed in court. The adventure will be yours and mine today. May I come in?
ハンニバル:裁判所で証言だそうだ。今日はきみと私で冒険だよ。入っても?
 I’m very careful about what I put into my body. Which means I end up preparing most meals myself. A little protein scramble to start the day. Some eggs, some sausage.
 自分の身体に入る食事には気をつけていてね、ほとんど自分で用意する。1日の始まりには少しのタンパク質だ。卵、ソーセージ
- Hannibal watches Will take a bite of his breakfast scramble.
 ト書き:ハンニバル、ウィルが朝食をひと口食べるのを観察する
WILL: It’s delicious. Thank you.
ウィル:とても美味しい。ありがとう
HANNIBAL: My pleasure.
ハンニバル:どういたしまして
- He is genuinely amused and successfully hides it.
 ト書き:ハンニバル、内心楽しんでいるのをうまく隠している *1
HANNIBAL: I would apologize for my analytical ambush but I know I will soon be apologizing again and you’ll tire of that eventually so I have to consider using apologies sparingly.
ハンニバル:不意打ちで分析したことを謝罪したいが、すぐまた謝る事態になってきみは結局うんざりするだろうね。謝罪の言葉は節約しなくては
WILL: Just keep it professional.
ウィル:職業意識に徹しましょう
HANNIBAL: Or we could socialize like adults, god forbid we become friendly.
ハンニバル:もしくは大人の付き合いを、神はわれわれが親しくなるのを禁じてるから
WILL: I don’t find you that interesting.
ウィル:あなたに興味は持てないな
HANNIBAL: You will. (”changing the subject”) Agent Crawford tells me you have a knack for the monsters.
ハンニバル:いずれ持つようになる。(話題を変えて)クロフォード捜査官がきみはモンスターに通じてると言ってた *2

 

 -----スクリプトのみで放送時になかったセリフ ------------------------

 WILL: That’s a superstition.
 ウィル:そんなのは盲信です
 HANNIBAL: I called your good friend Dr. Bloom about you. She wouldn’t gossip, not a word. She’s very protective of you.
 ハンニバル:きみのよき友、ブルーム博士に電話したよ。彼女はきみについて噂話どころか一言も話さない。守護神だね
 Smitten, I would say. She asked me to keep an eye on you.
 おそらく後悔してるんだろう。彼女は私にきみから目を離さないでと頼んだ
 - Will studies Hannibal, then decides to keep it to business.
  ト書き:ウィル、ハンニバルを観察し、ビジネスに徹しようとする

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WILL: I don’t think the Shrike killed that girl in the field.
ウィル:野原で少女を殺したのはモズじゃない
HANNIBAL: The devil is in the details. What didn’t your Copy Cat do to the girl in the field? What gave it away?
ハンニバル:悪魔は細部に宿る。模倣犯が野原の少女に「しなかった」ことは何?何が正体を明かした?
WILL: Everything. It’s like he had to show me a negative so I could see the positive. That crime scene was practically gift-wrapped.
ウィル:何もかもが。ポジが見えるように、僕にわざわざネガを見せたようなんです。あの犯罪現場はギフトみたいにラッピングされてた
HANNIBAL: The mathematics of human behavior. All those ugly variables. Some bad math with this shrike fellow.
ハンニバル:人の行動は緻密な数学で、異常犯罪はすべて醜い変数だ。このモズ男にはエラーが起きてる 
 Are you reconstructing his fantasies? What kind of problems does he have?
 きみは彼の妄想を再現している?彼にはどんな問題が?
WILL: He has a few.
ウィル:いくつか
- Almost with a wink:
 ト書き:目配せして
HANNIBAL: Ever have any problems, Will?
ハンニバル:ウィル、きみには何か問題が?
WILL: No.
ウィル:いいえ
HANNIBAL: Of course you don’t. You and I are just alike. Problem free. Nothing about us to feel horrible about.
ハンニバル:だろうね。きみと私はそっくりだ。問題などない、私たちが自己嫌悪に陥るようなことは何も *4
 You know, Will. I think Uncle Jack sees you as a fragile little tea-cup, the finest china used for only special guests.
 ウィル、ジャックおじさんはきみを壊れやすくて少ししか入らないティーカップだと考えてる。特別な客だけにお出しする最高の陶磁器だ *5
WILL: How do you see me?
ウィル:あなたは僕をどう見る?
HANNIBAL: The mongoose I want under the house when the snakes slither by.
ハンニバル:蛇が這い寄ってくるとき家の床下に飼っておきたいマングース *6
Finish your breakfast.
 朝食を済ませてしまいなさい

*1:ここのト書きとてもいい...!知らずに人肉ソーセージ食べてるウィルに内心ニヤニヤし、一般会話でまず使わない改まった表現で美味しいと言われて内心素直に喜んでるハンニバル。礼儀を知らない人間が大嫌い=食べちゃえ、なのは原作と同じレクター像なので、たぶんウィルはここらへんですでに食べる対象から外れてるのではないか。

*2:ここ最初Agent=仲人って訳してしまってたわ...。特別捜査官(special agent)ですね。でもS3見てるとキューピッドで何も間違ってないから公式怖い。

*3:アラーナについての会話はばっさり切られていました。なんでだろう?この会話があったほうがウィル-アラーナ-ハンニバルの関係性はわかりやすいけど、説明的すぎて無粋になるからかな。このドラマ、けっこうハイコンテクストなんですよね...。

*4:このあたりの質問攻めとがぶり寄りはウィルを試して騙すためとはいえ、ものすごいものがありますね。ちょっと落ち着け。あと字幕では割愛されてたけど、こんな序盤で原作の「きみと私は似ている」が出てくるのすごくない?ハンニバル早漏すぎない?

*5:そしてもう割れてしまうティーカップの話が出てきたぞ。「ジャックがそう考えてる」っていうテイだけどこれはハンニバルがそう思ってるんですよね。で、なんで字幕さんはlittleの訳を割愛したのかなー?私の理性は無難に「キャパが小さい」を推していますが、煩悩は「かわいいティーカップって意味だろクソが」って叫んでいます。だってa fragile littleって続いたら普通そうだろ!そしてここまでなかなかの塩対応を続けてきたウィルの笑顔が可憐すぎてアアアアってなる。かわいいおっさんが初回のラストで引き笑いして主役のソシオパスを篭絡する展開、すごくデジャブだ...。

*6:笑顔をかき消す謎の隠喩。特にマングースな!ティーカップと違ってこのあとマングースは本編で(たぶん)一度も出てこないので、よけいに「マングース?」ってなるよね。マングースで画像検索するよね。複数形の蛇は異常殺人犯たちのことで、マングースを床下に飼っておきたいハンニバルは蛇に含まれていないのかな。ちなみに原作ではウィルの元同僚が彼をキング・スネークに喩えています。家の床下にキング・スネークがいれば毒蛇を喰らってくれる=退職してもFBIはウィルを近くに置きたい、異常殺人犯を捕まえてほしい、という意味。