Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S1E1: Aperitif 僕は誰にでも共感できる

最初はS1E1から、ウィルの自己分析による共感能力について。

いきなりハンニバルとの対話で始めると過呼吸なりそうだったので、ジャックが講義後の教室でウィルをナンパするとこから。

□ 協力要請/ ウィルとジャック

字幕

ジャック:自分を分析すると?
ウィル:僕の状態は言ってみれば自閉症に近いだろうが、反社会的ではない
ジャック:だがそういう奴らに君は共感できる
ウィル:僕は誰にでも共感できる。想像力の問題だ
ジャック:その想像力を貸してくれ

 

スクリプトの対訳がこちら。


JACK: Where do you fall on the spectrum?
ジャック:君はどの[精神障害発達障害]スペクトラムの範囲にいる?
- Will picks up the rhythm and syntax of Jack’s voice:
 ト書き:ウィル、ジャックの声のリズム・構文を取り込む *1
WILL: My horse is hitched to a post closer to Aspergers and Autistics than narcissists and sociopaths.
ウィル:僕の馬は自己愛[性パーソナリティ障害]者やソシオパスよりはアスペルガー自閉症寄りの柱に繋がれてる *2
JACK: But you can empathize with narcissists and sociopaths.
ジャック:でも君は己愛性[パーソナリティ障害]者やソシオパスに共感できる
WILL: I can empathize with anybody. Less to do with personality disorders than an active imagination.
ウィル:僕は誰にでも共感できる。パーソナリティ障害とはあまり関係ない、むしろactive imaginationだ *3
- Jack smiles at that, leans in, then:
 ト書き:ジャック、笑って身を乗り出す
JACK: Can I borrow your imagination?
ジャック:君の想像力を借りたい

... [ ]は勝手に捕捉した単語。原文ではけっこう専門的につっこんだ話をしていたようです。

*1:対話者のリズムや構文を身のうちに取りこんじゃうウィルの特性は原作「レッド・ドラゴン」とリンクしてるんですね。原作では会話に熱中すると話し相手とそっくり同じ話し方になるウィルに気づいて、ジャックははじめ駆け引きのためにわざと模倣してるのかと思う。でもウィルは無意識のうちに相手を模倣してしまっていて、止めようとしてもウィル自身では止められないのだとジャックもわかってくる。ウィルのこの「止めようとしても止められない」はのちのち効いてくるキー概念です(S2E1のハンニバル-べデリアの対話とか)。ヒュー・ダンシーはこれちゃんと演じ分けてるのかな。私のポンコツなヒアリングではスプリクト読むまで「習得した感」はまっっったくわからなかった。

*2:なんで急に「ぼくのお馬さん」が出てくるん?と謎だったんですが、さすがに下ネタじゃないよね。ね。競走馬の血統でスペクトラムっていう有名な馬がいるけど、ジャックの話法を取り入れたウィルが言葉遊びで、精神障害発達障害の連続体としてのスペクトラムと引っ掛けたのかしら。このへん誰かわかる方教えてほしいいいいい

*3:能動的連想法(active imagination)はユング心理学派の臨床技法ですね。能動的に自分の意識水準を低下させて、覚醒しながら夢を見ているかのような状態にもっていく。そして識閾下に下りていって深層心理を探る方法。「見立て」のやり方や映像表現はこれを再現してるっぽいので、いわゆる一般的な意味での想像力とはちょっと違うのかもしれない。ウィルの無意識の領域には異常犯罪者のための庭があるのだろうか。