Eat the Rude.

NBC版ハンニバルを捏ねくりまわすよ

S3E12: The Number of the Beast is 666 ハンニバルは僕に恋をしてる?

なんでウィルは「ハンニバルは僕を愛してるのか?」ってわざわざ言ったん?っていう話をメインにやります!後半さらっと不穏なこと書いてるけどお気になさらず。

青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

冒頭、ウィルとベデリアさんのセラピー。問題のシーンなんですけど、なんか...なんかごめんなさい...。

WILL: I look at my wife and I see her dead. I see Mrs. Leeds and Mrs. Jacobi lying where Molly should be.
ウィル:妻を見ると彼女が死んでるのがわかったんだ。妻がいるはずの場所にリーズ夫人とジャコビ夫人が見えた
BEDELIA: Do you see yourself killing her?
ベデリア:彼女を殺すあなた自身が見えてる?
WILL: Yes. Over and over.
ウィル:ああ。何度も、繰り返し
BEDELIA: It's hard to predict when brittle materials will break. Hannibal gave you three years to build a family and a life, confident he'd find a way to take them from you.
ベデリア:脆い材質のものが壊れる時期を予測するのは難しい。ハンニバルはあなたが家族と生活を築くために3年の歳月を与えた。あなたから家族と生活を奪う方法が見つかると確信して
WILL: And he has.
ウィル:そして彼は見つけた
BEDELIA: Aggression can be an effective means of maintaining order in a relationship.
ベデリア:攻撃は関係性の順列を維持するのに有効な手段になりうるわ
WILL: What's he going to take from you?
ウィル:彼はあなたから何を奪った?
BEDELIA: Is it important to you that he take something from me?
ベデリア:彼が私から何かを奪うことがあなたにとって重要なの?
WILL: Hannibal has agency in the world.
ウィル:ハンニバルにはこちら側の世界に仲介者がいる
BEDELIA: Hannibal has no intention of seeing me dead by any other hand than his own, and only then if he can eat me. He's in no position to eat me now.
ベデリア:ハンニバルは自分以外の誰かの手によって私が死ぬのを見る気はない。私を食べられるときにだけ彼は私を殺す。彼は今私を食べられる立場にないわ
WILL: If you play, you pay.
ウィル:うかうかしてると痛い目に会うよ
BEDELIA: You've paid dearly. That knowledge will lie against your skin forever. It excites him to see you marked in this particular way.
ベデリア:あなたは多大な犠牲を払ったものね。その交わりは永遠にあなたの皮膚に残されたまま。彼は特殊なやり方で所有印をつけられたあなたを見て興奮してる
WILL: Why?
ウィル:なぜ?
BEDELI: Why do you think?
ベデリア:なぜ?どうして「なぜ」と思うの?
- Will studies her, amused/annoyed by the psychiatric game.
 ト書き:ウィル、彼女を観察する。心理ゲームに楽しまされ、イライラさせられながら
WILL: Bluebeard's wife. Secrets you're not to know, yet sworn to keep.
ウィル:青ひげの妻。あなたが知ろうとしないなら秘密の誓いは守られたままだ
BEDELI: If I'm to be Bluebeard's wife, I would've preferred to be the last.
ベデリア:もし私が青ひげの妻なら、最後の妻になりたかった
WILL: Is Hannibal in love with me?
ウィル:ハンニバルは僕に恋をしてる?
BEDELIA: Could he daily feel a stab of hunger for you and find nourishment in the very sight of you? Yes. But do you ache for him?
ベデリア:彼は毎日あなたへの飢えで突き刺すような痛みを感じ、あなたを目にするだけで満たされるかと聞いてるの?そうよ。でもあなたは彼に心を痛めてる?
- Will doesn't answer, only stares. Finally:
 ト書き:ウィル、ただ見つめるだけで答えない。ついに
BEDELIA: Once you catch the Red Dragon, your wife and son can go home again. Can you?
ベデリア:あなたがレッド・ドラゴンを捕まえれば、奥さんと息子はもう一度家に帰れるわ。できる?

待って待って、このシーンは字幕の解釈がまるっきり違う...!とくに下線部。ここの「博士が興奮してる」云々はすごく大事で、字幕では「ウィルが(犯人に)目をつけられた」から。でもここは「博士自身がウィルのお腹にニコちゃんマークの傷=所有印をつけた」から、所有印をつけたウィルを見ると博士は興奮する、と言ってるんですよ。つまりベデリアさんによるハンニバルの性癖大暴露なんですよここは!クッソえろい話してるのにダラハイドの話に持っていこうとするのいくない。だってベデリアさんとウィルはカットされた最後の一文まで、ひとこともレッド・ドラゴンの話はしてないのよ(最後のカットされたセリフの意図は別項でやります)。
一体なぜ字幕がこんな訳になったかというと、たぶんmarkの意味を取り違えてるから。たとえば“mark sheep”は「羊に所有印をつける」という意味。このS3E12のタイトルは“The Number of the Beast is 666”で、黙示録になぞらえてウィルは神の子羊に位置付けられてる。ので、ここはおそらく「(犯人に)目を付けられた」ではなく「(ハンニバルに)所有印をつけられた」です。ウィルは「なんでお腹の傷が所有印になる?なんで自分が傷をつけた僕を見てハンニバルは興奮する?」ってベデリアさんに聞いてて、ベデリアさんは「なんでじゃねえよこのカマトトが!」ってなってるわけです。ここのベデリアさん珍しくめっちゃイラついてるでしょ。彼女は最後の妻になれるものならなりたかった。そこまで言われてやっとウィルは「ハンニバル愛の種類は今まで自分が思ってた友愛や親愛のレベルじゃない、これは性愛の対象に向ける恋と欲だ」って気づいたんですよこのにぶちん!!!!あーちゃぶ台ひっくり返したい。

あ、そうだそうだ、“in love with~”の意味はこの記事で書いてました。

次、ジャックとハンニバルのたいへん思わせぶりな対話。

HANNIBAL: Will's thoughts are no more bound by fear or kindness than Milton's were by physics. He is both free and damned to imagine anything.
ハンニバル:ウィルの思考は恐怖や優しさに縛られない。ミルトンの思考が物理学によって左右されなかったようにね。彼は何かを想像する際に自由であり、同時に呪われている
JACK: Now that he's imagined the worst.
ジャック:今彼が想像してるのは最悪のことだ
HANNIBAL: Like ducklings, we imprint on those ideas that grab our attention.
ハンニバル:私たちはアヒルのように注意を引くイデアを刷り込んできた
JACK: What's got your attention? God, the Devil and the Great Red Dragon?
ジャック:あなたは何に注意を引かれてる?神か?悪魔?それとも偉大なるレッド・ドラゴン
HANNIBAL: Lest we forget the Lamb.
ハンニバル:子羊を忘れてはいけないよ
JACK: Will is the Lamb of God?
ジャック:ウィルは神の子羊か?
HANNIBAL: Hide us from the wrath of the Lamb.
ハンニバル:子羊の怒りからわれわれを隠せ
JACK: Who's "us"?
ジャック:“われわれ”とは?
HANNIBAL: You, me and the Great Red Dragon. The Lamb's wrath touches everyone who errs. His retribution is even more deadly than the Dragon's.
ハンニバル:君と私、そして偉大なるレッド・ドラゴンだ。すべての罪人が子羊の怒りに触れる。彼のもたらす報復はドラゴンの報復よりも致命的だ
JACK: It is for you.
ジャック:君にとってはね
HANNIBAL: The seals are being opened, Jack. The lamb is becoming a lion. "For the great day of his wrath is come; and who shall be able to stand?"
ハンニバル:ジャック、封印は解かれつつある。子羊は獅子になろうとしている。“神と子羊の怒りの大いなる日が来たからである。誰がそれに耐えられるであろうか”
JACK: I'll still be standing.
ジャック:私はまだ立ち迎えるよ
HANNIBAL: Is your conscience clear?
ハンニバル:やましいところはない?
JACK: As clear as yours.
ジャック:あなたと同じくらいにね
HANNIBAL: Righteousness is what you and Will have in common. "In righteousness the Lamb doth judge and make war." War against the Great Red Dragon.
ハンニバル:正義は君とウィルが共通して持つものだ。“子羊は義によって裁き、また戦う方である”。偉大なるレッド・ドラゴンとの戦いだ
JACK: He's not the Dragon, you are. The Devil himself bound in the pit.
ジャック:彼はドラゴンじゃない、君がドラゴンだ。地獄で縛られた悪魔だ
HANNIBAL: Then that makes you God, Jack.
ハンニバル:それなら君は神になるね、ジャック
JACK: Yes, it does.
ジャック:ああ、そうなるな
HANNIBAL: All gods demand sacrifices.
ハンニバル:すべての神は生贄を求めるものだ

あーめんどくさい、黙示録はめんどくさい。とにかくそっち寄りの定義は面倒なので極力触れずにおきつつ、ハンニバルによればウィルが神の子羊イエス・キリストであること、獅子(黙示録では「ユダ族から出た獅子、ダビデのひこばえ」)=イエス・キリストになろうとしていること、だけ押さえておきますね(もうほとんど言ってる)。

S3E11: ……and the Beast from the Sea 坊や、私が間違ってたわ

ハンニバルとウィルの対話以外から、大事なところを抜粋。メインの襲撃シーンは飛ばしてます。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

冒頭のジャックとウィルが事件について話してるシーンが全カットされてたけど、訳はいいかな...いいよね...。今日はウィルと家族に焦点化したいのです。まずはウォルターとウィルの会話から。

WILL: She's in surgery now.
ウィル:彼女は今手術中だよ
WALTER: Is there anything else I need to know to see about Mom?
ウォルター:ママについて僕が知っておくべきことはある?
WILL: You're both safe here.
ウィル:2人ともここなら安全だ
WALTER: This crazy guy wants to kill you?
ウォルター:この狂った犯人はあなたを殺したいの?
WILL: We don't know what he wants.
ウィル:彼が何をしたいのかはわからないんだ
WALTER: You gonna kill him?
ウォルター:彼を殺すの?
- Will closes his eyes for a moment, then:
 ト書き:ウィル、しばらく目を閉じる。そして:
WILL: No. I'm going to catch him. They'll put him in a mental hospital so they can treat him and keep him from hurting anybody else.
ウィル:いいや、彼を逮捕するつもりだよ。警察は彼を精神病院に入院させて治療を施し、もう誰も傷つけないようにするんだ
- Walter stares at Will, wanting to call bullshit, but doesn't.
 ト書き:ウォルター、ウィルをじっと見る。大ウソつき、と言いたいのを堪える
WALTER: Tommy's mom had this little newspaper. Said you killed a guy and you were in a mental hospital. I never knew that. Is it true?
ウォルター:トミーのママがこんな小さい新聞を持ってた。あなたが人を殺して、精神病院に入ってたって書いてあった。僕はそんなの知らなかった。本当なの?
WILL: Yes. It bothers you, finding that out. Because I married your mom.
ウィル:ああ。その記事を見て嫌だったろ。僕は君のママの結婚相手だから
WALTER: I told my dad I'd take care of her.
ウォルター:僕はパパに言ったんだ、僕がママの面倒をみるんだって
WILL: I'll take care of her, too. I'll take better care of her than I did.
ウィル:僕もママの面倒をみるよ。これまでよりもずっと
WALTER: Then you shouldn't put this guy in a mental hospital, you should kill him. I want to watch baseball.
ウォルター:それなら犯人を精神病院に入れちゃダメだ。殺さないと

ウォルターくん...;;義理の息子もベデリアさんも、口を揃えてウィルに「助けるのではなく殺せ」という。これまでのやり方で守るべきものを守れると思うのか?と。この言葉はかつてハンニバルがウィルに言った言葉でもあります。あらゆるものが今彼に覚醒を促してる。

そしてウォルターくんはテレビで野球が見たいと離れて行ってしまいますが、なんで野球なのかがわかるととても切ない...。

JACK: His team playing?
ジャック:彼のひいきのチームが試合を?
WILL: He doesn't care who's playing. His father was a baseball player, a good one, died when he was six. Walter watches baseball whenever he can. Molly watches it when she's upset. He read about me in a Freddie Lounds article. I had to justify myself to an eleven year old.
ウィル:誰がプレイしてるかは関係ないんだ。彼の父親はいい野球選手だったけど、6歳の時に死んでしまった。ウォルターはできるだけ野球を見るようにしてる。いつもね。モリーは動揺した時だけ野球を見るんだ。彼はフレディ・ラウンズの記事で僕について知った。11歳の子を相手に自己を正当化せざるをえなかったんだ
JACK: Resentment's raising a blister in you, Will.
ジャック:怒りが膨れ上がってるな、ウィル
WILL: You think you might lose me after this, Jack? You think I might go back to my family?
ウィル:ジャック、あなたこの後僕を失うかもと考えてるでしょう。家族のもとへ戻ってしまうかも、と
- Jack stares at Will -- is this a challenge?
 ト書き:ジャック、ウィルをじっと見つめる―これは挑発か?
JACK: For a minute, I did.
ジャック:一瞬そう思った
WILL: Then you realized what I realized: I can't go home, and neither can Molly and Walter, never, until the Red Dragon is out of the way.
ウィル:それならあなたは気づいたんだ。僕は帰れない、モリーとウォルターも帰れない、レッド・ドラゴンが死ぬそのときまで
JACK: As soon as Molly can be moved, we'll put her and Walter at my brother's house on the Chesapeake. Nobody in the world will know where they are but you and me.
ジャック:モリーが動かせるようになったらすぐ、ウォルターと一緒にチェサピークの私の兄弟の家に行かせよう。君と私以外、世界のだれにもあの2人の居場所はわからない
WILL: Molly's not going to want anything from you, Jack. She'd be glad to see you in hell with your back broken.
ウィル:モリーはあなたから何も欲しがらないだろう。彼女は背中の割れたあなたと地獄で会えば喜ぶさ

だからモリーが目覚めるとき、イメージ映像で野球のボールとそれを打つバットが出てくるのか!死別した夫を思い出して落ち着こうとしてるんだ。この家族はもうダメなんじゃないか...。

MOLLY: You put on baseball. Why did you put on baseball?
モリー:あなたは野球を敬遠してた。なぜ野球を嫌がったの?
WILL: I wanted you to feel safe. Wally's safe. The dogs are safe. We're picking them up, bringing them in.
ウィル:君に安全だと感じてほしかった。ウォリーは無事だよ。犬たちも。集められて安全な場所にいる
MOLLY: You look different. You said you would be. You said you wouldn't be the same when you came home.
モリー:あなた別人みたいに見える。そうなるって言ってたわね。家に帰ってきたときは同じ人間じゃなくなってるって
WILL: You said you would.
ウィル:君は「私は変わらない」って言った
MOLLY: Boy, was I wrong about that. I wanted you to go, I told you to go. No one to blame but myself. And Jack Crawford. I do blame Jack Crawford.
モリー:坊や、私が間違ってたわ。あなたに行ってほしかったしそう言った。私とジャック・クロフォード以外はだれも責められない。私はジャックを責めるわ
WILL: Jack knew what he was doing. And so did I. I thought he would never see me or know my name.
ウィル:ジャックは何をしたかよくわかってた。僕もだ。犯人が僕を見たことがあって、名前を知ってるとは思わなかったんだ
MOLLY: Is he after you now? Is that why he came after us?
モリー:彼は今あなたを狙ってるの?だから私たちを襲いに来た?
WILL: He came after you because Hannibal suggested it, urged him to do it.
ウィル:彼が君たちを襲ったのはハンニバルがそう指示したからだ。そうするよう促した
MOLLY: It's a clammy, sick feeling.
モリー:そんなの気味が悪い、病的よ
WILL: I know it is.
ウィル:わかるよ
MOLLY: Wally almost died. My son almost died. I almost died. I knew it was him. I knew it was him. I saw your picture in that paper and I knew it was him.
モリー:ウォリーは死ぬところだった。私の息子が。私も死ぬところだった。彼のせいだって知ってた。彼のせいだって。私、あなたの写真を新聞で見たの。彼だって知ってた
- She takes a deep breath and when she lets it out, the anger seems to go with it, leaving her tired and calm.
 ト書き:彼女は深く息を吐き、その息と一緒に怒りも外へ出ていき、疲労と穏やかさだけが残る
MOLLY: Hell, I got mad there for a second.
モリー:ああもう、ちょっと怒っちゃった
WILL: I hate this, Molly. I'm sorry.
ウィル:こんなのはもう嫌だ、モリー。ごめん
MOLLY: This could take awhile.
モリー:この事件はしばらくかかるはずよ
WILL: It might.
ウィル:かもね
MOLLY: We'll be back home, won't we?
モリー:私たち、家に帰るんでしょう?
WILL: Yes.
ウィル:ああ
- She studies him, can sense he's still very haunted.
 ト書き:彼女は彼を観察し、彼が深く憑かれたままであることを感じとる
MOLLY: Tough to hold onto anything good. It's all so slippery.
モリー:大事なものを握っておくのは難しい、すごく滑りやすいから
WILL: Slick as hell.
ウィル:すごく滑りやすいからね *1

ウィル、奥さんにボーイって言われてるのか...!姐さん女房が年下の捨て犬を拾ってきて保護してやってた感じなのかな。これはこれでとても切ない。激昂する彼女は、本当に憎むべきものがわかってる。そして年下の美しい夫が新聞でみた年上の男に憑りつかれたままであることも。そして賢い彼女は助けることを諦めてしまうのですね。実際、この直後にウィルはハンニバルに「きみは変化を熱望していないか?」って言われて結局絆されちゃうんだよね...。

あー、今日も長くなったのでファウストは次以降に。次はS3E12、謎のままだったベデリアさんのターンと、われらがチルトン!

*1:Slickはなめらかでつるつる滑る、の意味のほかに巧妙で口がうまい、ずる賢い、みたいな意味もあります。ウィルはこれたぶんハンニバルについて言ってるよね...。

S3E11: ……and the Beast from the Sea きみは変化を熱望していないか?

E11は時系列で把握しにくいので、まずハンニバルとウィルの対話だけ全部抜き出して繋げてます。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

ハンニバルとウィルの対話の前に、S3E10の取りこぼしを。女を知って愛の喜びに目覚め、レッド・ドラゴンになるのをやめたいダラハイド。なかなか勝手な言い分ではないか。「彼女を竜に渡したくない」という彼に、ウィルの家族を殺して彼にドラゴンを譲り渡せとそそのかすハンニバルのターンです。

HANNIBAL: You have the Dragon in your belly now. You could choose to have her alive. You don't have to worry about feeling love for her. You can always toss the Dragon someone else.
ハンニバル:君はいま腹の中にドラゴンを抱えている。彼女が生きられる道を選ぶこともできる。彼女を愛する感情を気に病む必要はない。君はほかの誰かにドラゴンを放り投げていいんだ
DOLARHYDE: Will Graham interests me. Oddlooking for an investigator. Not very handsome, but purposeful.
ダラハイド:ウィル・グレアムに興味を引かれます。捜査官にしては風変わりな見た目をしてる。それほどハンサムではないが、意志が固そうだ
- Hannibal leans forward, now face to face with Dolarhyde, as if to whisper a thrilling secret:
 ト書き:ハンニバル、屈みこんでダラハイドに顔を近づけ、まるで隠された秘密を囁くように:
HANNIBAL: He has a family.
ハンニバル:彼には家族がいる
- Dolarhyde takes a breath, grasping the enormity of the information. Hannibal leans back comfortably in his chair.
 ト書き:ダラハイド、その重大な情報を把握し息を飲む。ハンニバル、彼の椅子にゆったりと凭れる
HANNIBAL: Save yourself. Kill them all.
ハンニバル:自分自身を守れ。皆殺しにしろ

ハンサムってどう訳せばいいのかなあ。紳士的で男らしいとか凛々しいとか、とにかく整ってるニュアンスですよね。あとクラシカル。ウィルはそっちの造形じゃないってことかな。

次はBSHCIのハンニバルの独房、窓から見える月明かりに手をかざすハンニバルとウィルの対話。途中で挟まる別シーンは次の記事に回します。

WILL: I'm not fortune's fool. I'm yours. "Behold the Great Red Dragon."
ウィル:僕は幸運の愚者じゃない、あなたの愚者だ。“偉大なるレッド・ドラゴンを見よ”ですか
HANNIBAL: And did you?
ハンニバル:見ただろう?
WILL: I had a random encounter.
ウィル:偶然鉢合わせたんだ
HANNIBAL: Randomness is nothing intrinsic. Simply a lack of information.
ハンニバル:偶然性はシステムに内在するものではないよ。単なる情報の欠如だ
WILL: The Brooklyn Museum is closed to the public on Tuesdays, but researchers are admitted. You knew that's when we'd both be going.
ウィル:ブルックリン美術館は火曜日は一般公開されてないけど、研究者は入館できる。あなたはその日に僕らが行くことを知ってた
HANNIBAL: A sophisticated intelligence can forecast many things. I suppose mine is sophisticated enough. You're so close to him now. You and the Dragon are doing the same things at various times of the day.
ハンニバル:洗練された知性は多くの物事を予測できる。私の知性は十分に洗練されているわけだね。今やきみは彼のすぐそばにいる。きみとドラゴンは1日のなかで同じことをしてるんだ
WILL: He's contacted you.
ウィル:彼はあなたに接触してる
HANNIBAL: How do you imagine he's contacted me? Personal ads? Writing notes of admiration on toilet paper?
ハンニバル:どうやって彼が私に接触したと想像する?新聞の個人広告?トイレットペーパーに熱烈なファンレターを書く?
WILL: Alana thinks he's trying to stop.
ウィル:アラーナは彼が止まろうとしてると考えてる
HANNIBAL: To begin to understand the Dragon, to hear the cold drips in his darkness, Dr. Bloom would have to see things she could never see. She would have to fly through time.
ハンニバル:ドラゴンを理解しはじめたなら、彼の暗闇に響く冷たい雫の音を聞いているなら、ブルーム博士はかつて決して見ることのなかったものを見なくてはね。彼女は時空を飛び超えなくてはならない

- Will regards Hannibal, connections forming into certainty.
 ト書き:ウィル、ハンニバルを注視する。いくつもの繋がりが1つのものを形作る
WILL: There is a family out there who don't know he's coming. We could save them. Tell me who he is.
ウィル:外の世界には彼が来ることを知らない家族がいる。僕らは家族を救えるはず。彼が誰なのか教えて
HANNIBAL I don't know who he is.
ハンニバル:誰かは知らない
- Will studies Hannibal -- he's telling the truth.
 ト書き:ウィル、ハンニバルを観察する ― 彼は真実を語っている
HANNIBAL: When you close your eyes, Will, is it your family you see?
ハンニバル:ウィル、目を閉じたとき瞼に浮かぶのはきみの家族?
WILL: How is he choosing them?
ウィル:彼はどうやって家族を選んでる?
HANNIBAL: How he's choosing them is not how you'll catch him.
ハンニバル:彼が家族を選ぶ方法はきみたちが彼を捕まえる方法と同じだよ
WILL: How?
ウィル:だからどうやって?
HANNIBAL: Social media, I imagine. Can't be too careful with privacy settings.
ハンニバルソーシャルメディアだろう。プライバシーの設定には注意してもしすぎることはない
WILL: Do you know who they are?
ウィル:あなたは次の標的になる家族を知ってるんですね
HANNIBAL: Yes.
ハンニバル:ああ
WILL: You're willing to let them die.
ウィル:あなたはその家族を喜んで死なせようとしてる
HANNIBAL: They're not my family, Will. And I'm not letting them die. You are.
ハンニバル:ウィル、彼らは私の家族じゃない。それに死なせるのは私じゃない、きみだ

ここで時間は飛んで、ダラハイドによるモリーとウォルター襲撃後。激おこのウィルとハンニバルはガラス壁越しにシンメトリーに対峙します。

WILL: I'm just about worn out with you crazy sons of bitches.
ウィル:僕はもうあんたみたいなサイコ野郎には疲れ果てた
HANNIBAL: The essence of the worst of the human spirit is not found in the crazy sons of bitches. Ugliness is found in the faces of the crowd.
ハンニバル:人の精神において最低最悪の本質はサイコ野郎とやらには表れない。醜悪さは群衆の顔にこそ現れる
WILL: What did you say to him?
ウィル:彼になんて言った?
HANNIBAL: "Save yourself. Kill them all." Then I gave him your home address.
ハンニバル:“自分自身を守れ。皆殺しにしろ”と。そしてきみの住所を教えた
WILL: Always scheming toward hurt.
ウィル:いつだって害するために悪巧みをしてる
HANNIBAL: How is the wife?
ハンニバル:奥さんはどう?
WILL: She has a vigilance for lumps and hard-bought knowledge that time is luck. How's my wife? She's lucky.
ウィル:彼女には警戒心と、「時は幸運」という努力して得た知恵があった。僕の妻がどうかって?幸運にも生きてるよ
HANNIBAL: She survived the Great Red Dragon. Takes a pinch more than luck. You married her for something. When you look at her now, what do you see?
ハンニバル:彼女は偉大なるレッド・ドラゴンから生き延びた。幸運よりも窮地を選んで。きみは“何か”のために彼女と結婚したんだよ。今彼女をみて何が見える?
WILL: You know what I see.
ウィル:僕が何を見たかなんてあなたにはわかってる
HANNIBAL: Before he became the Red Dragon, this shy boy would not have dared any of this.
ハンニバル:彼がレッド・ドラゴンになる前なら、あの照れ屋の犯人はこんなことはできなかった
WILL: Now he thinks he can do anything. Anything. Anything.
ウィル:今は何でもできると思ってますよ。何でも。あらゆることを
HANNIBAL: Fear brushes the walls of your chest, circling inside you like a bat in a house. Get hold of it.
ハンニバル:恐怖がきみの胸壁を塗りつぶし、きみの中を蝙蝠のように飛び回る。その恐怖を捕まえるんだ
WILL: The Dragon's gotten hold of his.
ウィル:彼はドラゴンに捕まってしまった
HANNIBAL: The Dragon likely thinks you're as much a monster as you think he is.
ハンニバル:ドラゴンはきみをモンスターだと考えてる。きみが彼をモンスターだと思うように
WILL: Is this a competition?
ウィル:これは競争?
HANNIBAL: "Two souls, alas, are dwelling in my breast, and one is striving to forsake its brother." The Great Red Dragon is freedom to him, shedding his skin, the sound of his voice, his own reflection. The building of a new body and the othering of himself, the splitting of his personality, all seem active and deliberate. He craves change.
ハンニバル:“ああ、わたしの胸には二つの魂が住んでいる。その一つが他の一つから離れようとしている”。偉大なるレッド・ドラゴンは彼にとっての自由だ。ドラゴンによって彼の皮膚、彼の声の響き、彼自身の内省は脱ぎ落とされる。新たな体を構築し、彼自身を他者とし、人格は分裂する。それらすべては能動的に計画されている。彼は変化を熱望してるんだ
WILL: He didn't murder those families? He changed them?
ウィル:彼は家族を殺したんじゃなかったのか?彼は家族たちを変えた?
HANNIBAL: He wants to change you, too. Don't you crave change, Will?
ハンニバル:彼はきみも変えたがってる。ウィル、きみは変化を熱望していないか?

スラングのSOBが出るほどお怒りのウィルですが、ハンニバルはずっと次はウィルの家族だぞってヒント出してるよー!

そしてここらへんの会話は字幕の訳がS2なみにミスリードしてしまってるけど、相当重要です。あのね「ドラゴン」と「ダラハイド」と「彼」の訳し分けが曖昧なんだと思うの。まずダラハイドはドラゴンを扱いかねて食われようとしてるので、彼は被害者でウィルは本質(2つの魂のうちの1つ)に従えば助けなくてはならない。そしてハンニバルの考えではウィルはドラゴンに喰われることなく融合できる。そうすれば、殺すことは救済なのだとウィルは理解できるようになる。「愛するものを殺させる」はたぶんここにつながってくるはずで、それがハンニバルの求めているウィルの究極の姿。殺される側には変化のための渇望がある。ドラゴンは家族たちを殺すために殺したのではなく、変化させるために殺した。このあたりのキーワードがたぶんS3ラストに加速してく鍵になってくるんだと思う。

それにしてもゲーテファウストがS3になって目くばせみたいに頻出するの、このドラマが「ウィル・グレアム」という人間で表現したいテーマそのものなのかもしれないな...。ここにきてようやくちょっとだけウィルを理解する光明が見えてきたのですが、ええとファウストには「化学の結婚」という概念があります。ユングのいう結合の神秘とよく似た概念で、魂の内部で相反する2つのもの、対立する2つのものがあるとき、どちらかを殺すのではなく調和させようとする考え方。アウフヘーベンに近い?って言ってしまっていいのかな。S3E7までの博士がウィルの片方の魂、弱者を救済しようとする魂を殺してしまおうとしていたのに対して、S3E8以降の博士はその2つの魂を融合させたいんですね。だから彼は「許せ」と言った(S3E9)。あ、でも待てよハンニバルは融合のための切り札であるレッド・ドラゴンをダラハイドから取り上げ、ウィルに与えようとしてる。そうするとやっぱりハンニバル自身も救済を求めてるんだよね。あっだめだ、これわかりにくいな。長くなりすぎたので次か次の次で詳しめにやります。。ベデリアさんの話してる内容も多分そこにつながってくる。はず。

S3E10: …and the Woman Clothed in Sun あなたはハンニバルを救えなかった

E10はベデリアさんとウィルの対話量がすごい&重要なので、この2人に絞りこんで見ています。珍しくハンニバルとウィルの会話(※事件絡み)を端折ったぞドキドキ。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

まずベデリアさんの講演会にやってきたウィル。ダンテの地獄と整備された都市計画のテーマはちょっと面白そう。講演が終わって皆が退出した後、ウィルとベデリアさんの直接対決①です。ファイッ

WILL: Poor Dr. Du Maurier, swallowed whole. Suffering inside Hannibal Lecter's bowels for what must have felt like an eternity. You didn't lose yourself, Bedelia, you just crawled so far up his ass you couldn't be bothered.
ウィル:全身を飲み込まれたかわいそうなデュ・モーリア博士。ハンニバル・レクターはらわたの中で、永遠のように感じる感覚に苦しめられて。べデリア、あなたは自失してなんかなかった。ただ自分が煩わされないように彼の肛門まで蠕動に従って這い出ただけだ
BEDELIA: Hello, Will.
ベデリア:こんにちは、ウィル
WILL: You hitched your star to a man commonly known as a monster. You're the Bride of Frankenstein.
ウィル:あなたは怪物として知られる人間に自分の運星を繋げた。フランケンシュタインの花嫁だ
BEDELIA: We've both been his bride.
ベデリア:私たちは2人とも彼の花嫁だった
WILL: How did you manage to walk away unscarred? I'm covered with scars.
ウィル:どうやって無傷で逃れられた?僕は傷だらけだ
BEDELIA: I wasn't myself. You were. Even when you weren't, you were.
ベデリア:私は自失してたわ。あなたは自分のままだった。自失してるときでさえ、あなたのままだった
WILL: I wasn't wearing adequate armor.
ウィル:僕は相応の鎧を着てなかったからね
BEDELIA: No. You were naked. Have you been to see him?
ベデリア:違うわ。あなたは裸だったの。彼に会いに行った?
WILL: Yes.
ウィル:ああ
BEDELIA: Haven't learned anything, have you? Or did you just miss him that much?
ベデリア:何も学ばなかったのね。それとも、それほどまでに彼が恋しかった?
- Will considers, decides the question is rhetorical.
 ト書き:ウィル、考えてその質問はレトリックだと判断する
WILL: Have you been to see him?
ウィル:彼に会いに行った?
BEDELIA: I've seen enough of him. I was with him behind the veil. You were always on the other side.
ベデリア:もう彼とは十分に会ったから。私は彼と一緒にベールの向こう側にいたの。あなたはいつもその反対側にいた
- The simplicity of that strikes Will. Bedelia gathers up her notes and her briefcase next to the podium.
 ト書き:その言葉の明快さにウィルは心動かされる。ベデリア、ノートとブリーフケースを集める
WILL: Something we should talk about.
ウィル:僕たちには話し合うべきことがある
BEDELIA: You'll have to make an appointment.
ベデリア:それなら予約を取らないと

この子は自分のことが本当にわかってなかったんだね...!思わずベデリアさんに同調して「違うわ!!!」と魂からシャウトしてしまったぜ。鎧なんか1片も着てないからハンニバルがあそこまで執着したんだし自失してる時でさえウィルのままだから恋に狂ったんだしそもそも「彼が恋しかった?」はレトリックじゃねえよまんまド直球だよ!もういい加減気づいたげてよおおおおお!!...すみません取り乱しました。
ここでいう「予約」はセラピーの予約のこと。次からベデリアさんによるウィルのセラピー=直接対決②が始まります。ファイッファイッ

WILL: (V.O.) Have you had any contact with him?
ウィル(声のみ):彼と連絡をとったことは?
BEDELIA: He sends greeting cards on Christian holidays and my birthday. He always includes a recipe.
ベデリア:クリスマスと私の誕生日にカードを送ってくるわ。いつもレシピが入ってる
- Will is sitting opposite Bedelia in the patient's chair, which previously had been occupied only by Hannibal.
 ト書き:ウィルはベデリアの対面、かつてはハンニバルだけが占有していた患者用の椅子に座っている
WILL: If he does end up eating you, Bedelia, you'd have it coming.
ウィル:ベデリア、もし彼があなたを結局食べてしまってもそれは当然の報いだ
BEDELIA: I can't blame him for doing what evolution has equipped him to do.
ベデリア:そうなるように彼に備わった進化なら、彼がすることを私は責められない
WILL: If we just do whatever evolution equipped us to do, then murder and cannibalism are morally acceptable.
ウィル:僕らに備わった進化を理由に何をしてもいいのなら、殺人もカニバリズムも倫理的に許される
BEDELIA: They are acceptable. To murderers and cannibals. And you.
ベデリア:そうね、許される。殺人者や食人種、そしてあなたは許すわね
WILL: And you. You lied, Bedelia. You do that a lot. Why do you do that a lot?
ウィル:あなたもね。ベデリア、あなたは嘘をついてた。それもたくさんの嘘をついてる。なぜそんなことをする?
BEDELIA: I obfuscate. Hannibal was never not my patient. Covert treatment suffers secrecy and disapproval.
ベデリア:私は不鮮明にしてるの。ハンニバルはずっと私の患者だった。彼に隠れて行った治療だから、秘密の厳守も非難もやむをえない
WILL: Covert because Hannibal was an uncooperative patient?
ウィル:彼に気づかれないように治療したのはハンニバルが非協力的な患者だったから?
BEDELIA: Covert because I was a cooperative psychiatrist. "Do no harm."
ベデリア:私が協力的な精神科医だったからよ。「まず何よりも害を与えてはならない」 *1
WILL: And did you?
ウィル:でもあなたは害となる治療をした
BEDELIA: I did. Technically.
ベデリア:ええ。厳密にはそう
WILL: You dared to care.
ウィル:あえて治療したんだ
BEDELIA: Not the first time I've lost professional objectivity in a matter where Hannibal is concerned.
ベデリア:ハンニバルがかかわる問題で、私が専門的な客観性を失ったのはこれが初めてじゃない

このシーンの字幕訳はところどころ意味が足りてないというか、ミスリードを誘ってしまってると思う...。"Hannibal was never not my patient."って二重否定だから強い肯定になるのでは?「ハンニバルは私の患者じゃない、手に負えなかった」と言い続けてきたベデリアさんがここではじめて「実は彼はずっと私の患者だった、彼にすら気づかれないように、怪物としてのさらなる進化のための治療を続けてきた。だから非難されても仕方ない」って告白してるのでは?だとしたら私、ここまでベデリアさんの心理を盛大に読み間違ってきたことになる...んですけど...。

これ以降はベデリアさんが過去に殺してしまった患者ニール・フランクのセラピーとウィルのセラピーが入れ替わりながら進むのですが、例によってウィルのところだけ抜粋。もう全然ファイトしてないし私が迷子;;

WILL: How is one patient worthy of compassion and not another?
ウィル:同情に値する患者と値しない患者がいるのはどうして?
BEDELIA: I'm under no illusions how morally consistent my compassion has been. How is one murderer worthy of compassion and not another?
ベデリア:私の同情心は道徳的に一貫してる。一点の曇りもないわ。同情に値する殺人犯と値しない殺人犯がいるのはどうして?
WILL: We're morally schizophrenic when it comes to Hannibal. And we both seem to keep getting away with it.
ウィル:ハンニバルについて言うなら、僕たちは道徳的に分裂してる。しかもそのことを誤魔化してやりすごそうとしてるみたい
BEDELIA: One of us is more scarred than the other. I was granted immunity from prosecution by the U.S. Attorney. Not a good way to learn a lesson.
ベデリア:あなたと私、どちらかにより多くの傷がついてる。私は連邦地検から免責を受けた。人生の教訓を得るのにいい方法じゃなかったわ
WILL: All that time you were with Hannibal behind the veil, you'd already killed one patient, ever occur to you to kill another?
ウィル:ハンニバルと一緒にベールの向こう側にいたとき、あなたは既に1人の患者を殺した後だった。もう1人の患者を殺そうと思いつかなかった?
BEDELIA: My relationship with Hannibal isn't as passionate as yours. You are here visiting an old flame. Is your wife aware how intimately you and Hannibal know each other?
ベデリア:私とハンニバルの関係はあなたたちの関係ほど情熱的じゃないの。あなたは古い恋人を訪ねてここへ来た。奥さんはハンニバルとあなたがどれほど親密に理解し合ってるかご存知かしら?
WILL: She's aware enough.
ウィル:よく知ってるよ
BEDELIA: You couldn't save Hannibal. Do you think you can save this new one?
ベデリア:あなたはハンニバルを救えなかった。今回の新しい犯人を救えると思う?
- Will is struck by the question, but doesn't answer.
 ト書き:ウィル、その質問に愕然とするが答えない
BEDELIA: Your experience of Hannibal's attention is so profoundly harmful, yet so irresistible, it undermines your ability to think rationally.
ベデリア:ハンニバルに関心を持たれたあなたの経験はきわめて危険で、でもとても魅力的。その経験はあなたの理性的な思考を損なうものよ

えっとここでベデリアさんが言ってることは要約すると「ウィルにとってハンニバルは同情に値する殺人犯で、ウィルはハンニバルを救えなかった」。ウィルは無意識にハンニバルを救おうとしていた...のか?というかウィルには生来そういう性質が備わっている、ということでしょうね。2人の性質の違いは次の会話で浮き彫りになる。

BEDELIA: You're walking down the street and you see a wounded bird in the grass. What's your first thought?
ベデリア:道を歩いていて、草むらに傷ついた小鳥を見つけたとする。まず何を最初に考える?
WILL: It's vulnerable, I want to help it.
ウィル:弱ってる、助けたい
BEDELIA: My first thought is also that it's vulnerable. Yet I want to crush it. A primal rejection of weakness which is every bit as natural as the nurturing instinct. Of course, I wouldn't crush it, but my first thought would be to do just that.
ベデリア:私もまず弱ってる、と思う。でも私は踏みつぶしたい。弱さへの根源的な拒絶は、育む本能と同じように自然よ。もちろん実際に踏みつぶしはしないけど、私は最初にそう考えるの

BEDELIA: One thing Hannibal taught me is the alchemy of lies and truths. It's how he convinced you you're a killer.
ベデリア:ハンニバルが私に教えてくれたことの1つは嘘と真実の錬金術。あなたに自分が殺人者だと確信させた方法よ
WILL: You're not convinced?
ウィル:あなたも僕が殺人者だと思わされた?
BEDELIA: You're not a killer. You're capable of righteous violence because you are compassionate.
ベデリア:あなたは殺人者じゃない。あなたは情け深いから、正義のための暴力を行使できる
WILL: How are you capable?
ウィル:あなたはどうやって暴力を行使する?
BEDELIA: Extreme acts of cruelty require a high degree of empathy. The next time your instinct is to help someone, you should really consider crushing them instead. You might save yourself some trouble.
ベデリア:極端な残虐行為には高度な共感が求められる。あなたの本能が次に誰かを助けようとしたとき、代わりにその誰かを踏みつぶすことを考えるべきよ

ちょっと待ってベデリアさんは何を言っている?ウィルをどう進化させようとしてる?その進化はだれのために必要?そもそも彼女はハンニバルをひそかに治療してどうしたかった?フィレンツェの彼女はなぜ殺せるはずの彼を殺さなかった?
これまで彼女を賢い被害者寄りのメディウムだと思ってきたけど、これはもう全く違う気がする。でもわからん。わからなすぎておなかいたくなってきた...。今回長すぎるのでちょっと保留して整理します;;


あとここまでダラハイド側の話を無視しきっていてさすがに心苦しくなってきましたが、S3E10のスクリプトの最後にあるハンニバルとダラハイドの対話、映像ではS3E11に入ってるんですよね...。次回の冒頭に繋がってくるのでそっちでやろうね。

あ、そういえばハンニバルがチルトンのオフィスに電話してウィルの住所聞き出すシーンも省きましたけど、このシーン何回見てもめっちゃ怖いな!?ハンニバルが「GRAHAM. Will Graham.」って電話越しに言った後、封筒の糊を舐めねぶるハンニバルの舌にカットが切り替わるのも「ヒッ」ってなります。送り先はベデリアさんなのになんだこの秀逸な演出は。ちなみに糊を舐める動作はスクリプトに指示されてないんですよ驚愕です。ここ数日鳥肌立ちまくってる。映画版にも同じシーンあるけどドラマのほうが群抜いて怖い。こっちのハンニバルさんストーカーと化してるからね...。

*1:ラテン語ではPrimum Non Nocere、医師としての心得であるヒポクラテスの誓いの1つとされてたけど最近の調査では違うみたいですね。ヒポクラテスが言ってたのは患者に利益となる治療を選択し,害となる治療を決して選択しないこと、みたいな感じ。

S3E9: …and the Woman Clothed with the Sun それが愛の美しい定義だ

S3後半。このへんほとんど初見時の記憶がなくて、毎日新鮮に驚きながら見てます。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

殺人現場、ハンニバルと月の夜に訪れた庭を1人で探索するウィル、フレディと鉢合わせ。

WILL: You came into my hospital room while I was asleep. You flipped back the sheets and shot a picture of my temporary colostomy bag.
ウィル:君は僕が寝てる病室に侵入して、シーツを捲って一時的ストーマの袋を写真に撮っただろ
FREDDIE: Covered your junk with a black box. A big black box. You're welcome.
フレディ:あなたのガラクタは黒塗りにしてね。大きい黒塗りだったでしょ、お礼はいいわよ
WILL: You called us "murder husbands."
ウィル:しかも君は僕たちを“マーダー・ハズバンズ”と名づけた
FREDDIE: You did run off to Europe together. How does the Tooth Fairy compare to Hannibal Lecter? Haven't seen anything like this since the Massacre at Muskrat Farm. Funny thing about that massacre. Not only did Dr. Bloom survive, she got rich. Lecter's living in the lap under her care. What kind of arrangement you suppose they have?
フレディ:あなたたち、一緒にヨーロッパに逃げたじゃない。ハンニバル・レクターに比べて“歯の妖精”はどう?マスクラットファームの大虐殺からこっち、こんな事件は見たことがないわ。あの大虐殺の愉快なことと言ったら。ブルーム博士は生き残ったばかりか富豪になった。レクターは彼女の管理下にある。あの二人の間にはどんな協定があるの?
WILL: A complicated one.
ウィル:複雑な協定だろうね
FREDDIE: Couldn't be more complicated than your relationship with Hannibal. You paid him a visit? Before you lie, know that I know that you did.
フレディ:ハンニバルとあなたの関係性ほど複雑じゃないはずよ。彼に面会したでしょう?嘘はいらない、私が知ってるのを知っておいて
WILL: Good-bye, Freddie.
ウィル:さよなら、フレディ

字幕は「殺人カップル」だけど、“murder husbands”のしっくりくる訳って何だろ。

次、ウィルとモリーの電話は申し訳ないけど飛ばして、ハンニバルに面会に来たジャック。

HANNIBAL: As I live and breathe. I thought I'd seen the last of you, Jack.
ハンニバル:これは驚いた。もう君に会うことはないと思ってたよ、ジャック
JACK: Dr. Lecter.
ジャック:レクター博士
HANNIBAL: You're dressing younger. Have you taken up some sport you enjoy with a new partner? Tennis, maybe?
ハンニバル:服装が若作りだね。新しいパートナーとスポーツで仲良くなった?テニスかな
JACK: You've taken up your sport with an old partner.
ジャック:あなたも古いパートナーとスポーツで仲良くなってる
HANNIBAL: I wrote Will a note warning him you'd come calling.
ハンニバル:ウィルには君が訪ねてくることを手紙で警告したよ
JACK: I read your note before my office forwarded it to Will.
ジャック:職員がウィルに転送する前に読んだよ
HANNIBAL: To whet his appetite or yours? You've placed him back in the pot and you're letting him cook.
ハンニバル:彼の食欲を刺激するために?君は彼を鍋の中に戻し、料理させてるんだ
JACK: We're all in this stew together.
ジャック:われわれは皆このシチューの中さ
HANNIBAL: It would be more honest if you ate his brain right out of his skull.
ハンニバル:君が彼の頭蓋骨から脳を取り出してすぐに食べていれば、今頃もっと正直だろうに
JACK: And you're nothing if not honest.
ジャック:あなたはまったくもって正直だ
HANNIBAL: I try to be. This shy boy has already seen Will. He already knows his name. Are you chumming the waters, Jack?
ハンニバルそうありたいね。この照れ屋の犯人はすでにウィルを知ってる。名前も。水面に撒き餌をしてるな、ジャック?
JACK: It takes one to catch one.
ジャック:蛇の道は蛇だ
HANNIBAL: It takes two to catch one.
ハンニバル:1匹の蛇を捕まえるのに2匹必要だよ
JACK: Will has never been as effective as he is with you inside his head.
ジャック:頭の中にあなたがいるときほど、ウィルが冴え渡ることはないんだ
HANNIBAL: Oh, I agree. But don't think you can persuade me to play along with appeals to my intellectual vanity.
ハンニバル:ああ、そうだとも。だが私に調子を合わせて知的虚栄心に訴えても私を説得できるとは思わないことだ
JACK: I don't think I'll persuade you. You'll either play or you won't.
ジャック:あなたを説得しようとは思ってない。あなたが乗るか、乗らないかだ
HANNIBAL: Bella used to say your face was all scars, if you knew how to look. There's always room for a few more. How much room does Will have, Jack?
ハンニバル:もし見方がわかるなら、君の顔はすべて傷だとベラはよく言ったものだ。君の顔にはいつも傷をつける余地がある。ジャック、ウィルにはどれくらい傷がつけられる?

あれ、ここよく読むと意味深だね…?ジャックはどこまでわかってる?少なくともここでハンニバルとジャックは共犯で、ウィルは泳がされてる。でもハンニバルとジャックの最終的な意図、目指すものは全然違って、ハンニバルはジャックの先を行く。これ見てるとジャックは懲りないというか、やっぱりちょっと愚かなんじゃないのと思わなくもないなあ。まあ普通に油断してるんでしょうけど。

次、ハンニバルアビゲイルの回想シーン1。順番的にはアラーナとハンニバルの会話の直後です。すごいバラバラの抜粋だけど、ハンニバルの家族観がウィルに対する愛の形そのままだったので驚いてる。

HANNIBAL: We have a basic affinity for our family. We can detect each other from smell alone.
ハンニバル:私たちは自分の家族に結びついている。私たちは匂いだけでお互いを見つけることができる
HANNIBAL: Every family loves differently. Every love is unique.
ハンニバル:どの家族もそれぞれ異なった愛し方をする。どの愛も唯一だ
ABIGAIL: He was as good to me as he knew how to be. Hunting with him was the best time I ever had.
アビゲイル:父は彼なりのやり方で私に良くしてくれたわ。彼との狩りは今までで最高の時間だった
HANNIBAL: Yes. A fine definition of love. You have to allow yourself to love him the way he loved you.
ハンニバル:そう。それが愛の美しい定義だ。彼が君を愛したやり方で、君も彼を愛することを自分に許さなくては

下線部!だいじ!ここ字幕でけっこう端折られてて初見時気づいてなかったけど、S3E13ラストのことを予言してたんですね...?つまりハンニバルがウィルに求めることの究極を。うまく言えないけどハンニバルアビゲイルを習作というか、ウィルのための練習台にしてるように思える。つまりハンニバルにとって最も美しい愛の定義は、“彼との狩りは今までで最高の時間だった(Hunting with him was the best time I ever had.)”。そしてウィルに対して求めるのは、ハンニバルがウィルを愛するのと同じやり方でハンニバルを愛し返してしまう自分を許すこと。S3E7もそうだけど、ハンニバルはいつもこういう表現をする。本来のウィル自身と、その本性を押さえつけようとする倫理に縛られたウィル。ウィルは常に2つに引き裂かれていて、ハンニバルはその融合を願い続けてる。振られる前は倫理側のウィルを全否定してたけど、今は「許せ」って言ってて、えっこれ凄いことでは。

...と驚きつつS2E13のラストシーン、ハンニバルアビゲイルの別アングルの回想シーン2。ハンニバルがウィルからの電話を受けたところから。

HANNIBAL Hello?
ハンニバル:もしもし
WILL(V.O.): They know...
ウィル(声のみ):バレてる
- Hannibal hangs up the phone and CAMERA PULLS BACK to reveal Abigail Hobbs is on the other side of the island.
 ト書き:ハンニバル、電話を切ってカメラを引くとアビゲイルホッブズがアイランドキッチンの向こう側にいるのが明らかに
HANNIBAL: They're coming.
ハンニバル:彼らが来るよ
- Hannibal doesn't move, just considers.
 ト書き:ハンニバルは動かず、ただ考えている
ABIGAIL: Are we going?
アビゲイル:じゃあ出発するの?
HANNIBAL: We're waiting for Will. It's important that he sees you. I want you two to be together.
ハンニバル:私たちはウィルを待ってる。彼が君に会うのが重要なんだ。君たち2人には一緒にいてほしい
ABIGAIL: They'll catch us if we stay.
アビゲイル:ここにいたら捕まってしまう
- He places reassuring hands on her shoulders.
 ト書き:彼は落ち着かせるように彼女の肩に手を置く
HANNIBAL: I'm on my honor to look after you, Abigail. You have to look after me, too. We have to protect each other in these new lives we create. I want you to go upstairs and wait.
ハンニバルアビゲイル、君の面倒は必ず見ると誓う。君も私の面倒を見なくては。私が創造する新たな人生では、私たちは互いに守り合うんだ。2階に上がって待っていなさい
ABIGAIL: For what?
アビゲイル:何を?
HANNIBAL: Hunting with your father was the best time you've ever had. But now you're going to hunt with me.
ハンニバル父親との狩りが君にとって最高の時間だった。でも今から君は私と狩りをする

この後ダラハイドからハンニバルに電話がかかってきてS3E9は終了ですが、ト書きには“ハンニバル、新しい患者を受け入れる(Hannibal taking in his new patient...)”とあります。ダラハイドはハンニバルの「危険な患者」の生け簀に入った。

S3E9: …and the Woman Clothed with the Sun 彼に落ち度は何もないのに

2人で謎解きしてるシーンが楽しすぎて逆につらくなってきたので、グレアム特別捜査官と獄中のレクター博士が1シーズンひたすら謎を解き続ける1話完結型ミステリをスピンオフでやってくれないか...。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

ウィルの帰りを獄中で待ち構えていたハンニバルから。

HANNIBAL: This is a very shy boy, Will. I'd love to meet him.
ハンニバル:この犯人はとても恥ずかしがり屋だよ、ウィル。ぜひ会ってみたいものだ
INT. HANNIBAL LECTER'S OFFICE - DAY
- Hannibal is dressed in a plaid three-piece suit, standing above his desk, across from Will Graham, as though we have returned to Season One. The glass wall between them gone.
 ト書き:ハンニバル・レクターのオフィス-昼
ハンニバル、まるでSeason1に戻ったかのように、ウィル・グレアム越しのデスクの前にスリーピースのスーツを着て立っている。彼らの間のガラス壁は消える
WILL: I'm sure you would.
ウィル:そうでしょうね
HANNIBAL: Have you considered the possibility that he's disfigured? Or that he may believe he's disfigured?
ハンニバル:彼が醜い男だという可能性は考えた?あるいは自分が醜いと思い込んでる男かもしれない
WILL: That's interesting.
ウィル:興味深い
HANNIBAL: That's not interesting. You thought of that before.
ハンニバル:興味深くはないだろう。きみはもう考えついてたはずだ
WILL: (nods) He smashed all the mirrors in the houses, not just enough to get the pieces he wanted. The shards are set so he can see himself. In their eyes. Mrs. Jacobi and Mrs. Leeds. And their families.
ウィル:(頷いて)彼は家中の鏡をすべて叩き割っていた。鏡のかけらを使うためじゃなく。自分を見るために破片はセットされたんだ、ジャコビ夫人とリーズ夫人の両目に
HANNIBAL: Could you see yourself in their eyes, Will? Killing them all?
ハンニバル:ウィル、きみは彼女たちの両目に自分の姿を見た?家族を皆殺しにする自分を?

(中略)

HANNIBAL: The first small bond to the killer itches and stings like a leech.
ハンニバル:殺人犯と初めて繋がるとき、蛭に血を吸われるように痒みと刺激を感じる
- Hannibal and Will glance at the broken mirrors of the bedroom -- Will looking at himself in the fractured shards.
 ト書き:ハンニバルとウィル、寝室の割れた鏡を見ている―ウィルは割れた破片に映る自分を見ている
HANNIBAL: Like you, Will, he needs a family to escape what's inside him. You know a fair amount about how these families died. How they lived is how he chooses them.
ハンニバル:彼は内面の自己から自由になるために家族を必要としてる。ウィル、きみのようにね。きみは2つの家族がどうやって死んでいったかはわかっている。どうやって生活していたか、それが彼らが選ばれた理由だ
WILL: How is he choosing them?
ウィル:彼はどうやって選んだんです?
HANNIBAL: How did you choose yours? Readymade wife and child to serve your needs. A stepson or daughter -- a stepson absolves you of any biological blame. You know better than to breed. Can't pass on those terrible traits you fear the most.
ハンニバル:きみはどうやって家族を選んだ?きみのニーズに応えうるお誂え向きの妻と子。義理の息子か娘―義理の息子ならきみは生物学的な責任を免れる。実子を設けるより気楽だと理解してるね。きみが恐れている特性は遺伝しないから

ウィルの痛いところをザクザク突いてくるハンニバル、絶好調ですね!ありとあらゆる話題を「ウィル、きみは...」に強引に持っていくハンニバルお家芸が炸裂していてとても嬉しい。あとスクリプトにはないけど、映像ではウィルが割れた鏡のかけらにウェンディゴが映り込んでいました。うーん?

次、「庭の情報がない、どんな庭だった?」とごねたハンニバル、ウィルとともに月光に照らされた庭へ。ウィルを眺めながらお話ししてるおっさん楽しそうだなあ、よかったねえ。

WILL: Big, fenced, with trees. Why?
ウィル:大きい庭だ、木々が取り囲んでる。なぜ?
HANNIBAL: If this pilgrim feels a special relationship with the moon, he might like to go outside and look at it before he tidies himself up. If one were nude, say, it would be better to have outdoor privacy for that sort of thing. One must show some consideration for the neighbors, hmmmm?
ハンニバル:この巡礼者が月に特別な感情を抱いているなら、彼は逃げ去る前に外へ出て月を見たがるかもしれない。もし彼が裸なら、そういった行為のために屋外でもプライバシーを保てる場所がいいはずだ。彼は隣人のためにも配慮する必要があった、...そうかな?
- Hannibal turns his gaze from Will to the moon.
 ト書き:ハンニバル、眼差しをウィルから月へ向ける
HANNIBAL: Have you ever seen blood in the moonlight, Will?
ハンニバル:ウィル、月光の下で血を見たことはある?
- Will raises a hand so that it's silhouetted against the moon.
 ト書き:ウィル、シルエットになるよう手を月に掲げる
HANNIBAL: It appears quite black.
ハンニバル:ほとんど真っ黒に見えるんだよ
- When Will lowers his hand again... IT GLISTENS WITH BLACK BLOOD WIDEN to find Will naked. Mouth and torso streaked in blood, facing the full moon -- the same pose Francis Dolarhyde struck in Ep. #308. CAMERA PULLS BACK to reveal Will alone.
 ト書き:ウィルが手を下げると...全身が黒い血で輝き、彼が裸であることがわかる。満月と向き合う口と胴体は縞状に血が流れ―Ep#0308のフランシス・ダラハイドと同じ姿勢で、カメラを引くとウィルが1人であることが明らかに

E13への伏線になるのでここのト書きは残しておきますね。

次、ウィルが帰った後のハンニバルとアラーナの会話。

HANNIBAL: Have you come to wag your finger?
ハンニバル:指を振り立てて叱りに来た?
ALANA: I love a good finger-wagging.
アラーナ:指を振って説教するのは大好きよ
HANNIBAL: Yes, you do. How is Margot?
ハンニバル:君はそうだろうね。マーゴは元気かな?
- Alana allows the remark to glance off her without a flinch, glancing at the picture of her as Botticelli's Fortitude.
 ト書き:アラーナ、話をそらすための発言に怯むことなく、ボッティチェリの“Fortitude”として描かれた彼女の肖像に視線をやるだけの余裕がある
ALANA: Your cogs are turning, Hannibal. I can hear them clicking.
アラーナ:ハンニバル、あなたの頭の中では歯車が回ってる。私には歯車が刻む音が聞こえる
HANNIBAL: Click, click, click, boom.
ハンニバル:チッチッチッチ、ドカーン
ALANA: I don't know what you're planning with Will Graham. But you're planning something. Why wouldn't you be? You've already cracked the lid, can't resist peeling it back.
アラーナ:あなたがウィル・グレアムと何を企んでるかは知らない。でも何か企んでるのね、そうに決まってる。蓋を割ったのに、それを剥がす誘惑にあなたが勝てるわけがないもの
HANNIBAL: Will came to me.
ハンニバル:ウィルから会いに来たんだ
ALANA: Yes, he did.
アラーナ:そうね
HANNIBAL: I advised him against it.
ハンニバル:私は会いに来るなとアドバイスした
ALANA: I'm sure.
アラーナ:でしょうね
HANNIBAL: Are you suggesting I don't have Will's best interests in mind?
ハンニバル:私がウィルの最善の利益を念頭に置いてないと言いたい?
ALANA: I'm stating it as fact.
アラーナ:私は事実として話してるの
HANNIBAL: You've got Will dressed up in moral dignity pants, nothing's his fault.
ハンニバル:君はウィルに道徳的なおむつを履かせたんだ、彼に落ち度は何もないのに
ALANA: I've been courteous and you've been receptive to courtesy. But these niceties are conditional. And the conditions are nonnegotiable.
アラーナ:私は礼儀を重んじてきたし、あなたはその礼儀を甘受してきた。でも細かく言うと条件があるの。そしてその条件に交渉の余地はない
HANNIBAL: I must behave myself.
ハンニバル:私は行儀よくするしかないね
ALANA: I know what you're afraid of. It's not pain or solitude. It's indignity. You're like a cat that way. I'll take your books, I'll take your drawings, I'll take your toilet. You'll have nothing but indignity and the company of the dead.
アラーナ:あなたが何を恐れるか知ってる。痛みや孤独じゃない。屈辱よ。その点であなたは猫に似てるわ。あなたの本を没収しましょう、あなたの描いた絵も、あなたの便器も。あなたには屈辱と、死者との交流以外なにも残らない
- ON HANNIBAL watching Alana walk away. As he turns back to his cell...
 ト書き:アラーナが立ち去るのを見るハンニバル。彼は独房へ戻っていく...

ウィルに対するハンニバルの執着の深さはよく理解してるつもりですが、“...nothing's his fault.”でちょっと鳥肌が立ってしまったぜ...。これ原作のレクター博士が初対面のクラリスを行動主義的だと批判するセリフ、”You've got everybody in moral dignity pants - nothing is ever anybody's fault(君はあらゆる人間に"道徳的なおむつ"をはかせている―誰かのあやまちの結果である事柄などこの世にはないのに).”の改変なんですが(前後の流れはS2E10で出てきました↓)、everybody/anybodyをウィルに置き換えて話すともうまったく意味変わってくるやん...?ウィルにあんな裏切られ方、振られ方をしてなお「彼に落ち度は何もない」んだ。これはもう盲目、妄執としか言えない。こわい。ハンニバルの愛の質とベクトルは3年間で明らかに変わってしまっている。

S3E9、2回で終わりませんでした...。次で終わる!たぶん!

S3E9: …and the Woman Clothed with the Sun ウィル、きみは家族だ

S3E9以降はハンニバルとウィルが駆け引きしながらもよく話します。ただただ嬉しい。嬉しすぎて会話全部訳したくなるけどまったく進まないので自制。
青字スクリプトにしかないセリフ、赤字は映像にしかないセリフです

S3E8のラストでウィルとハンニバルが対峙したところから。デュマのくだりはカットされたみたいですね(こっちの寝転がってる演出は映画版のレクター博士っぽい)。

- HANNIBAL LECTER. He lies on his cot, asleep, his head propped on a pillow against the wall. Alexandre Dumas's Grand Dictionnaire de Cuisine is open on his chest. Eyes still closed, he takes a long slow breath through his nose, smelling the current of air that the CAMERA traveled. He opens his eyes.
 ト書き:ハンニバル・レクター。壁に凭せた枕に頭を乗せ、寝床に横たわって眠っている。アレクサンドル・デュマの“Grand Dictionnaire de Cuisine(大料理事典)”を胸に開いている。彼の目はまだ閉じられているが、長くゆっくりとしたブレスで吸気が鼻を通っていくと、カメラが移動した空気の流れを嗅ぐ。彼は目を開く
HANNIBAL: That's the same atrocious aftershave you wore in court.
ハンニバル:法廷できみがつけていたのと同じ、趣味の悪いアフターシェーブローションだ
- Hannibal rises from the bed and approaches the wall as CAMERA reveals he is now standing face to face with WILL in profile; the thin line of glass between them makes it look as if they are disparate reflections in a mirror.
 ト書き:ハンニバル、ベッドから立ち上がって壁に近づく。カメラは彼とウィルが今や対峙していることを明らかに。2人の間にあるガラスの細いラインは、2人を鏡の中の異なる反射像のように見せる
WILL: Hello, Dr. Lecter.
ウィル:ハロー、レクター博士
HANNIBAL: Hello, Will. Did you get my note?
ハンニバル:ハロー、ウィル。私の手紙は届いた?
WILL: I got it. Thank you.
ウィル:ええ。どうも
HANNIBAL: Did you read it before you destroyed it? Or did you simply toss it into the nearest fire?
ハンニバル:破る前に読んだかな?それとも読まずに手近な火にくべてしまった?
WILL: I read it. And then I burned it.
ウィル:読みましたよ。それから燃やした
HANNIBAL: And you came anyway. I'm glad you came. My other callers are all professional. Banal psychiatrists and grasping second-raters. Pencil-lickers trying to protect their tenure with pieces in the journals.
ハンニバル:それなのにきみはここにやってきた。きみが来てくれてうれしいよ。私を訪れる者はみんな専門家だ。陳腐な精神科医や強欲な二流の人間たち。雑誌に論文を発表し、身分を得たい研究者たち
WILL: I want you to help me, Dr. Lecter.
ウィル:あなたに助けてほしい、レクター博士
HANNIBAL: Yes, I thought so. Are we no longer on a first-name basis?
ハンニバル:ああ、そうだろうね。われわれはもう名前で呼び合う仲ではないのかな?
WILL: I'm more comfortable the less personal we are.
ウィル:僕たちの関係性がパーソナルでないほど、僕は安心できるんです
- Hannibal regards Will. His nostrils flare as he takes in the scents coming through the holes in the glass.
 ト書き:ハンニバル、ウィルをじっと見る。彼の鼻腔はガラスの通気口を通ってくる香りを取り込むために膨らむ
HANNIBAL: Your hands are rough. I smell dogs and pine and oil beneath that shaving lotion. It's something a child would select, isn't it? There a child in your life, Will? I gave you a chance if you recall.
ハンニバルきみの手は荒れてる。シェービングローションの下から犬と松の木、油の香りがするね。子どもが選びそうなローションだ。きみの生活には子どもがいるね、ウィル。機会なら私が与えた、覚えてるだろう
WILL: I'm here about Chicago and Buffalo. You've read about it, I'm sure.
ウィル:シカゴとバッファローの件でここに来たんだ。もう読んだでしょう
HANNIBAL: I've read the papers. I can't clip them. They won't let me have scissors, of course. You want to know how he's choosing them.
ハンニバル:新聞は読んだよ。だが切り抜けない。彼らは私にハサミを持たせないからね。きみは彼がどうやって被害者を選んでるかを知りたいんだな
WILL: Thought you would have some ideas.
ウィル:あなたなら考えがあるかと思って
HANNIBAL: You just came here to look at me. Came to get the old scent again. Why don't you just smell yourself?
ハンニバル:きみはただ私を見るためにここへ来た。懐かしい香りをもう一度嗅ぐために。自分を嗅いでみたらどうだ?
WILL: I expected more of you, doctor. That routine is old hat.
ウィル:博士、あなたに期待しすぎてた。その手口はもう時代遅れだよ
HANNIBAL: Whereas you are a new man. Are you a good father, Will?
ハンニバル:一方のきみは新しく生まれ変わった。ウィル、きみはいい父親
- Before Will can reply, Hannibal continues:
 ト書き:ウィルが返事をする前にハンニバルは続ける:
HANNIBAL: Let me have the file. An hour, and we can discuss it like old times.
ハンニバル:そのファイルを見せて。1時間だ、それから昔のように議論しよう
- Will pushes the file through the document tray, into the cell. Hannibal comes close to collect it.
 ト書き:ウィル、ファイルを文書トレイから独房に差し入れる。ハンニバル、回収するために近づく
WILL: Thank you.
ウィル:ありがとう
HANNIBAL: Family values may have declined over the last century, but we still help our families when we can. You're family, Will.
ハンニバル:家族の価値は過去1世紀にわたって低下している。だがまだわれわれはできるだけ家族を助けようとする。ウィル、きみは家族だ
- ON WILL. A moment of sudden emotion for Hannibal he cannot name washing over him. He swallows it down and walks away.
 ト書き:ウィル視点。ハンニバルに対する名づけようのない突然の感情が彼の心をよぎる。彼はそれを飲み下して立ち去る

ハンニバルは「きみは家族だ」で攻めてきました。ウィルも心動かされてる場合じゃないのに早速グラグラしててこの子はほんとにもう!でも2人が事件について小難しい顔で謎解きしてるのが実はS1以来で、しかもどちらのお顔にも傷がないので、なんというかミステリ!元鞘!という謎の高揚感があります。あと字幕の「子供なら私が1人与えたろ」って、すごい勇気あるいい訳だ...。

アビゲイルの回想は飛ばしますが、このシーンもテーマは家族。しかも官能を下敷きにした家族。S3後半は家族なんですね。そしてハンニバルの独房を出て1時間つぶさないといけないウィル、病院内のアラーナの部屋を訪れます。

- ALANA and Will take seats in the "living area" of her office.
 ト書き:アラーナとウィル、彼女のオフィスの生活エリアに座っている
ALANA: It's good to see you looking so well, Will. But I can't help wishing you weren't here.
アラーナ:ウィル、元気そうなあなたに会えて嬉しい。でも正直ここには来てほしくなかったわ
WILL: Wishing and hoping.
ウィル:希望と期待?
ALANA: How did it feel to see him again?
アラーナ:彼に再会してどう感じた?
WILL: Like Hannibal was looking through to the back of my skull. Felt like a fly flitting around in there.
ウィル:ハンニバルは僕の頭蓋骨の奥まで見透かしているようだった。頭蓋骨の奥でハエが飛び回ってるように感じた
- Alana understands all too well.
 ト書き:アラーナは十分すぎるほど理解している
WILL: I had the absurd feeling that he walked out with me. Had to stop outside the doors and look around, make sure I was alone.
ウィル:彼が外に出てきて一緒に歩いてる、そんな馬鹿げた感覚がした。ドアの外で立ち止まって周囲を見回し、自分が本当に1人かどうか確認せずにいられなかった
ALANA: I know that feeling. At least Jack Crawford's pleased.
アラーナ:その感覚はわかる。でも少なくともジャック・クロフォードは喜んでるわね
WILL: He showed me pictures of the families. I looked at Molly and Walter and couldn't say no.
ウィル:彼は被害にあった家族の写真を見せてきた。モリーとウォルターを見てるととてもノーとは言えなかったんだ
ALANA: And Jack was counting on it.
アラーナ:そしてジャックはそれを当てにしてた
(中略)
WILL: Then what are you doing here?
ウィル:それで君はここで何をしてる?
ALANA: There are only five doors between Hannibal and the outside. And I have the keys to every one of them. Hannibal has never been great with boundaries. "He who sups with the Devil needs a long spoon."
アラーナ:ハンニバルと外部をつなぐドアは5つしかない。そしてその鍵は全部私が持ってるの。ハンニバルは境界線を引くことが得意じゃない。“悪魔と食事するものは長いスプーンを使え”よ
WILL: I am not letting him in, Alana. Don't worry about me.
ウィル:アラーナ、僕は彼を中に入れるつもりはない。僕のことは心配しないで
ALANA: I'm not just worried about you. Last time, it didn't end with you.
アラーナ:単にあなたを心配してるだけじゃない。あのときだってあなただけで終わらなかったでしょう

ほんまそれな!ウィルが抵抗すると周囲のほぼ全員が甚大な被害を被るので、いっそ抗わないほうが総合的被害は少ないのでは。S2後半あたりから特に...。アラーナが出会い頭に「来てほしくなかった」とわざわざカウンターかますのは、トリガーであるウィルが来たことでハンニバルの時間が動き出してしまったからですね。